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#1

「授業が終わったので早く帰って準備をしないと」

 

 私はカバンに教科書を入れてせっせと帰りの準備を始める。

 時計を見ると2時を回った所だったので今日も時間通りお店が開けそうだ。

 

「チロルちゃん今日もお店なの~?」

「――はい。お客さんが来る前に準備をしないといけないので私はもう帰りますね」

「そっか~。じゃあ後で遊びに行くね~」

「――あの、出来ればお客さんとして来てほしいのですか」

「解ってるよ~」

「――ではまた後で」

「うん。ばいばい~い」

 

 私は学友と別れてお店へと向かう。

 私の向かう場所は学校から徒歩で15分くらいの場所にある「キャットテイル」という名前の喫茶店だ。

 

「――ただいまです」 

 

 私はクローズと書かれた看板が掛けられている扉を開けて中に入るとそのまま横にある階段を上がって2階に向かう。

 実はこの喫茶店は私の自宅でもあるのだ。

 私はそのまま自分の部屋へと入り制服から私服に着替えてからお気に入りのエプロンを付けて扉を出ると、後ろから誰かに声を掛けられた。

 

「おっ、チロル帰ってたのか」

「――はい。さっき帰ってきたので今からお店を開けます」

「おっと、もうそんな時間だったのか」

「――はい。ちょうど開店時間です」

 

 私はお父さんに挨拶をして階段を降りていく。

 そのまま外に出てクローズの看板をオープンに変えるとまたもや後ろから声を掛けられた。

 ――どうやら今日はよく後ろから声を掛けられる日のようです。

 

「チ~ロル~。へへ~今日のチロル成分補充~っと」

「――ショコラさん。毎回抱きつくのは止めてほしいのですが」

「そんな事いわれてもこれだけはね~。ああ~チロルのぷにぷにの抱き心地がたまらないっ」

 

 ――この人はショコラさん。

 私より2つ年上の高校生でキャットテイルでアルバイトをしてもらっています。

 どうやら今日も学校から直接キャットテイルに来たみたいで制服姿にカバンを手に持っています。

 ちょっとだけ私へのスキンシップが過剰なのが難点なのですが、とっても働き者でお店も凄く助かっちゃってる頼りになるお姉さん。

 

「あの――ショコラさん。お客さんが待っているのですが」

「……えっ?」

 

 私達の前には常連のお姉さんが微笑んで開店を待っていました。

 

「あ……えっと…その……ご、ごめんなさい」

「ふふ。いいのよ別に続けてても」

「――いえ、できれば続けないで欲しいのですが」

 

 慌てふためくショコラさんを手で制する常連さん。

 この光景もいつもの事なのですが、ショコラさんは誤りながらも私を離してくれませんので少し困ってしまいます。

 

「――すぐお店を開けるのでちょっとだけ待っててください」 

「はいっ。待ってます」

 

 常連さんは笑顔で頷いてくれた所でショコラさんは私を開放してくれた。

 

「それじゃあチロルちゃん行こっか」

「はい。キャットテイル開店です」

 

 私はお店の中に戻ってテーブルにちゃんとメニューが置かれているか、テーブルに汚れが無いかを1つ1つ確認して行く。

 

「じゃあ私は着替えてくるから~」

「――はい。よろしくお願いします」

 

 ショコラさんは学生服のまま2階へと登っていった。

 実はこのお店の更衣室は2階にあるんです。

 ――しばらくして常連さんがお店の中へと入ってきた。

 

「いらっしゃいませ」

「もう入っていいのかしら?」

「はい。お好きな席にどうぞ」

「じゃあ、お好きな席に座っちゃいます」

 

 私はカウンターに行ってお水とおしぼりをオボンに乗せて常連さんの元に持っていく。

 

「ご注文は決まりましたか?」

「決まっちゃいました。アップルティーとリンゴのタルトをお願いしちゃいます」

「――かしこまりました、少々お待ちください」

 

 私がカウンターに戻ると、ちょうどショコラさんが着替えを終えて下に降りてきた。

 

「注文は受けたの?」

「はい。アップルティーとリンゴのタルトです」

「オッケー。じゃあ私がタルトを作るね〜」

「了解です。では私はアップルティーを」

  

 私はヤカンにたっぷり水を入れてからコンロに置いて火をつける。

 水が沸騰するのを待っている間に棚からカップを取り出しておく。

 そして最後に茶葉を取り出して下準備は終わり。

 水が沸騰したのを確認してからポットにお湯と茶葉を入れて軽く蒸らしてからカップに注いでいく。

 凄くいい匂いだ。

 実は私の特技は匂いだけで紅茶の出来を判別する事が出来る事なんです。

 これはかなり会心の出来になったので常連さんも喜んでくれそう。

 

「タルト出来たよ~」

 

 厨房からショコラさんの声と一緒に香ばしいリンゴの香りが漂ってくる。

 どうやらショコラさんのタルトも会心の出来みたいです。

 

「こっちも出来たので持ってきてください」

「オッケ~」

 

 私はショコラさんが持ってきたリンゴのタルトとアップルティーをオボンに乗せて常連さんの待っている席まで運ぶ。

 常連さん喜んでくれるといいなぁ。

「――お待たせしました」

「あっ――これは!」

「――えっと、どうかしましたか?」

「なんと! リンゴのタルトとアップルティーでリンゴが被っちゃいました」

「……はっ! 言われてみればリンゴとアップルは一緒です」

「――いや、言われなくても同じでしょ」

 厨房から出てきたショコラさんに突っ込まれてしまいました。

 

「――えっと、どうしましょうか?」

「両方とも美味しそうなので、これはアリです」

 ちょっとどうなるかと思ったけど気に入ってもらえて良かったです。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 私はカウンターへと帰って行く。

 カウンターの前にはショコラさんが待っていました。

「どうだった?」

「はい、喜んでもらえました」

「そっ、よかった」

 私達が話しているとカランと入り口からベルの音が鳴り新しいお客さんが入ってきました。

 

「あっ、次は私がいくね~」

「ではお願いします」

 

 ショコラさんはオボンに水とおしぼりを乗せて注文を受けに向かった。

 今日も沢山のお客さんに幸せを届けられるといいなぁ。

 

 ――ここは小さな街の喫茶店キャットテイル。

 私がオーナーをしている小さなお店です。


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