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2-6.即席コンビ結成

二人が目的地に到着した時、何か事件が起きたのは一目瞭然だった。

思わず見上げるほどに大きなコンクリートの建物が複数建てられ、それぞれ連絡通路で繋げられている。駐車場に面した建物の一階に、コンクリートの代わりに一面ガラス張りの一画があった。だがそれは無残に破壊され、ガラスの破片と金属の塊が無惨に破壊されてに散乱している。


広く見晴らしのいい駐車場には、車がまばらに止められていた。その一台に、ミカヅチの目が釘付けになった。破壊された扉の近くに、綾の乗っている車が置かれていた。


「えーっと、どこにいるのか知らないけど警備員の皆さん! なんか今は緊急事態みたいだから、お手伝いしますよっと!」


 クロウが言い訳しながら、二人は開いた穴を通って室内に入った。中はさらに酷かった。壁や床一面に穴とヒビの跡、ここで戦争でもあったかのようだ。加えて、これ程の破壊が起きているのに、警備の人間や野次馬がいないのが酷く不気味だった。


「何があったんだ、一体……」

「ミカヅチ、綾さんに連絡取った?」

「駄目だ。携帯が繋がらない。あっちの方から力を感じるけど……」


 ミカヅチが指差した先、通路の陰から、滑らかなモーター音と金属が床とぶつかる音を鳴らしながら、機械の人形が姿を現した。


「げ、何あれ」

「昔似たのを見た事があるぞ。確かロブスターって呼ばれてるロボットだ。ジャスティス・アイが戦ってるのを見た覚えがある」

「ははーん、なるほど。てことはあいつらがここを襲撃したって事だね! だったら話は簡単じゃん! あいつら悪党! ボク達ヒーロー!」


 クロウの瞳が仮面の奥で輝いた。戦意満々、交差して構えた両手が淡い燐光を放ちだす。ミカヅチは慌てて手でクロウを制した。


「待てよ、ここで使ってる警備ロボットかもしれないだろ」

「警備のロボットが手にあんなおっかない武器つけてるわけないだろ!」


 二人が言い争っている姿に反応したか、ロブスターが二人の方へ体を向けた。クロウの言うところのおっかい武器――両腕につけられた機関砲の照準を二人に合わせる。


「やばっ!」

 ミカヅチが慌てて棍を盾に変えて、両手で構える。一瞬遅れて、ロブスターの銃口が火を吹いた。盾にぶつかる無数の銃弾の衝撃で、手がしびれる。


「ほら、警備ロボットなら警告くらいするって!」

「そんな事言ってないで、いいから反撃してくれよ!」

「オッケー!」


 ミカヅチの背後で、クロウがまた大きく手を伸ばして構えた。聞いた事もない異国の言葉を呟くにつれて、全身が光を放ち輝き始める。


「Beware My Order!」


 テレビでも聞いた事のある気合のこもった呪文を唱えると、クロウを包んでいた光が二つに分かれ、建物の壁へと吸い込まれていった。

次の瞬間、ロブスターの近くの壁が盛り上がったかと思うと、巨大な手へと変わり、ロブスターの腕を掴んだ。想定していなかった攻撃に反応し、ロブスターは銃撃を止めて状況を打開しようと暴れだす。

しかし壁から生えた手はどんどん増え、ロブスターの手、足、頭をそれぞれ掴んで乱暴に振り回し、ロブスターの体を破壊していく。

数秒と持たず、ロブスターは名前の面影を残さない鉄屑へと姿を変えていた。


「どうよ!」

「うわ、えげつないなぁ……」


 ミカヅチは思わず嘆息した。どうも調子の狂うテンションの持ち主だが、レディ・クロウの実力は本物だ。

ともあれ、ここで何かが起こっているのは間違いないようだった。ならばこちらも見ているだけではいられない。


「とりあえず、アイに連絡しよう。そうしたら応援が来るまで、ティターニアを俺達で探すんだ。連絡が取れないし、危険な状況なのかも」

「オッケー。そうこなくっちゃ」


 ティターニアの出す巨神(タイタン)の気配を追って、二人は建物の奥へと向かって走り出した。

階段を上がった先の分かれ道を左に曲がり、大学の講堂が丸々入るほどに広い作業室へと入る。等間隔に並べられたPC机がパーティションで区切られている。ティターニアの気配は中央の通路を突っ切り、連絡通路を渡った先にある別の建物だ。休日の為か、働く者は誰もいない。代わりに向かおうとした先から、ロブスターが群れをなして現れた。


二人は足を止めた。振り向くと先程通った出入口からも現れ、こちらに巨大なアームに取り付けられた刃物を向けている。

先程クロウが一体を破壊した為か、警戒態勢は万全となっているようだった。


「ちょっとちょっとォ、数が多すぎじゃない?」

「確かにやばそう、だッ!」


 通路を塞いでこちらに迫るロブスターに向かって、ミカヅチは勢いをつけて跳躍した。砲弾のようなドロップキックがロブスターの頭に突き刺さる。ロブスターは回転して吹き飛び、背後にいた数体を巻き込んで倒れた。立ち上がろうとする前に、ミカヅチは近寄りながら銀の棍を巨大な槍斧へと変えて頭上で振り回し、


「せいッ!」


勢い良く叩きつけた。金属の装甲ごと内部機械を粉砕し、真っ二つに叩き割る。金属の屑となったロブスターをまたいで、二機のロブスターがミカヅチに襲い掛かろうとした瞬間、雷光の輪が連なってロブスター達の体を縛り、包んでいく。


「Beware My Order!」


声と同時に輪が収束した。二体とも光に縛られ、暴れてもがくが、動く事はかなわない。そのまま輪が高熱を発し、装甲を数秒とかけずに溶断した。


「楽勝!」

「言ってる場合かよ!このままじゃ囲まれるぞ!」


 言葉の通り、前後の通路からロブスターは続々と姿を現していた。パーティションと机を押しのけて、二人を包囲しようと迫る。ロブスターが足を動かすたび、机の上のパソコンが床に落ちて踏み潰されていく。


「誰が操ってるのか知らないけど、こんなエビロボットが何体来たってボク達には勝てないぞ!」

「よせよ、こんな奴ら相手にしてられるか!」


 通路の前後から、二体のロブスターが襲い掛かった。銃の代わりにつけられた分厚い鉈のような刃物を振り回す。ミカヅチは体を上下左右に動かして、巧みに刃物をかわしていく。右腕の横薙ぎをスウェーでかわし、反対からの袈裟切りに対して踏み込み、ロブスターの背に張り付く。


「こ……のっ!」


 ロブスターの腰を両手で掴み、両足を踏ん張って一気に投げ飛ばす。巨神(タイタン)の加護が生む剛力によって、ロブスターは窓へ向かって放物線を描いて飛び、そのまま窓と周囲のコンクリートを破壊しながら屋外へと落下していった。


「クロウ! 逃げるぞ! 着いて来い!」

「どこに行くんだよ、ってちょ、わぁッ!」


 ロブスターを電撃であしらっていたクロウの腰に背後から腕を回し、ミカヅチは先程ロブスターによって壁に開けられた穴に向かって走り出す。

 クロウの非難の声を気にせず、ミカヅチはそのまま一気に跳んだ。階段を降りるような気安さで二階から地面に着地し、踏ん張る必要もなくそのまま走り出す。

建物の窓から影が出た。侵入者撃退用のドローンだ。バスケットボールよりも一回り大きい程度の金属の球体が漂い、二人に向けて内部に仕込まれた機銃を放つ。ミカヅチの肩に担がれたクロウが両手を広げ、作り出した障壁に弾丸が当たって爆竹のように光り輝いた。


「なんでただの工場にこんなロボットがいるんだ」

「ちょっと下調べするだけのつもりだったのに、大当たりを引いちゃったみたい。ボクの予想が的中したって事だね。きっと工場を隠れ蓑にした悪党の秘密基地とかだよ!」


先程まで凜の言っていた事は与太話だと思っていたが、ここまで襲われるなら話は別だ。後先を考えている暇はない、と気持ちを切り替えるしかなかった。


「こうなったらみんなまとめて叩き落すよ!」

「リーダー、安全策を具申していいか? まずティターニアを探すべきだし、こんな奴らに時間をかけていられない」

「どうすんのさ?」

「こうするんだ」


 ミカヅチの体が揺らめいたと思うと、次の瞬間、ミカヅチは八つの影に分裂した。クロウを担ぐミカヅチが八方に向かって走り出し、突然の事にドローンも対象の判断に混乱して留まり、思い思いの敵を狙って分散した。


「やつらが幻を相手にしてる間に、ティターニアのところに行く」

「さっきボクの偽者を作ったのと同じ力か! やるじゃんサブリーダー! でもさ」

「なんだよ?」

「とりあえず、降ろしてくれない? 自分で走るから」



 放心状態で喘ぐティターニアを見下ろして、文野は汗に濡れた体を照明に照らし、ぞっとするような笑顔を見せた。

文野の愛撫は執拗だった。憧れを肉欲に転化させられた文野の衝動と、文野が出す体液に幻覚剤と興奮剤の効果を持たせた肉体改造の組み合わせにより、ティターニアの意識は奪われようとしていた。


「ああ……はぁ……」

「ねえ、ティターニア?もう我慢できないでしょう? 欲しいでしょう?」

「あぅ……いや……」

「私のは・じ・め・て。あなたがもらってくれませんか?」


 ティターニアは答えられずに、ただ喉の奥で泣くような声を出すだけだった。答えようと声をあげれば、代わりに懇願しかねなかった。心臓の鼓動でも体が反応し、肉の切なさに心が折れそうだった。


こんなくだらない事でここまで追い詰められるなど、10年前ならば想像もしなかった。果たして自分が弱くなったということなのか。

歯を食いしばる。文野の愛撫は終わらず、むしろ過激になってきている。自分の居場所を突き止め、応援が駆けつけるまでにどれだけ時間がかかる事か。今すぐここから逆転の手段を思いつかなければ、文野の毒牙にかかる事だろう。


「ね?いいでしょ? んっ……」

 再度文野の唇がティターニアの唇を奪った。唇を吸って顔にこびりついた汗を、楽しそうに舐め取る。舌を出してはにかむ姿が、ティターニアの瞳に二重の影となって写る。


(違う、私が欲しいのはこんなのじゃない……)


 もっと暖かでがっしりとした腕と、強引ながらも暖かく、優しい唇の感触。拙くとも落ち着く、自身にとっての幸福な生活の象徴。そう、欲しいのは彼女のものじゃない。

会いたかった。助けに来てほしかった。あの子の力が欲しいだけじゃない、あの子がいれば、あの子が信じていてくれれば何だってできる気がする。


(大ちゃん……)


 頭によぎった姿に、ティターニア動悸が速くなった。

あれほど大に戦うなと言ってきたというのに、自身が危険になれば助力を当てにしてするなど。あまつさえ現状から目を反らす為に利用するとは、偉大なる巨神(タイタン)の娘が聞いて呆れる。

今必要なのは、幸せな夢想で現状を忘れようとする事ではない。


(恥を知りなさい、ティターニア! まだ終わってない!)


 乱暴に手足を動かして枷を外そうともがく。何でもいい、残った頭の冷静な部分を必死に働かせ、状況を脱する手段を考える。

かつての仲間や敵ならこの状況をどう打開していただろうか、そう考えると、幻覚もそれに応じて映像を生み出した。文野の顔がグレイフェザー、大、フェイタリティ、仲間達や宿敵と、目まぐるしく変わっていき、ティターニアの脳を震わせる。


「ティターニア……そんなにあたしの相手をするのが嫌なんですか?」

 拗ねたように文野が口を尖らせる。それを見て、ヒュプノパスの取り付いた男の腕がすらりと伸びた。


「いい加減にしたまえヨ、文野くン。私が君をティターニアの相手に選んだのハ、最初の実験としての気まぐれにすぎン。そうやって自分の欲を満たす事ばかり考えて行動を起こさないのでハ、君をこれ以上使う気になれんネ」

「あぁ!お、お許しくださいヒュプノパス様! どうかそれだけは! すぐに始めます! すぐに始めますから!」


 文野はティターニアの腰のベルトを解こうと手をかけた。焦ってベルトを外そうと無理矢理動かすせいで、金具がガチャガチャと音を鳴らすだけでベルトはびくともしない。

「あん! もう! もう! 嘘うそ! ねえティターニア、これってどうやって外すんですか? ねえ?」


 目の前の愛する人と結ばれない事を本気で恐れているらしく、文野の焦りは刻一刻と増していく。

大ならこんな乱暴な事はしないのに。激しく求めてきても、お願いすれば分かってくれる。


「だい……ちゃん」


掠れるような呟きは、爆発を思わせる轟音によってかき消された。ちょうどヒュプノパス達の背後の壁が砕け、開いた大穴から外の光が差し込む。

 洗脳された社員達もロブスターも動きを止めた中、ヒュプノパスが振り向いた。ティターニアが砕けた床の中に立っていたのは、濃い赤の軍服を思わせる戦装束に、銀の手甲をつけた少年。


「何者ダ!」

「俺はミカヅチ。巨神(タイタン)の御使い!」

「大ちゃ……!」


 思わず名前を呼びそうになって、必死にこらえた。幻覚の効果で、脳が自分が見たい姿を見せているのではないかと思ってしまう。

 どうやってここを知ったのか分からないが、確かに彼は来たのだ。



ミカヅチにはティターニアが何故ここにいるのか、さっぱり分からなかった。ティターニアが力を使っているのを感じ取り、匂いを辿る警察犬のように追ってきただけだ。そうするうちに敵の抵抗は大きくなり、邪魔するものを蹴散らして、ついに居場所を突き止めた。

広い部屋の半分、ミカヅチが穴を開けた側にパソコンの載った机が並べられている。対して向かい側にはガラス張りの隔離室があり、そのの周りに人が集まっていた。そしてその隔離室の中、中央にある拘束台の上にティターニアが縛り付けられ、その上で裸の女が彼女に何かを行っていた。


ミカヅチの頭に、先程のクロウの言葉が浮かんだ。状況は分からないが、こいつらは悪党だ。そう考えると、後は何も考えなかった。


「ティターニアから離れろ!」


 ティターニアに向かって、ミカヅチは駆け出した。弾丸のように一直線に、机の上を飛び越える。気付いて邪魔をしようと襲い掛かる男達をある者は殴り飛ばし、ある者は股下に腕を伸ばして天井へ投げ飛ばす。

「ええい、邪魔するナ!」


 ヒュプノパスが声を上ずらせながら、背広の胸元に手を潜り込む。拳銃を取り出すより早くに、ミカヅチが前蹴りを打ち込んだ。銃を掴んだ手首ごと胸骨に蹴りを打ち込み、ヒュプノパスが吹き飛ぶ。男の体が床を転がる音と、拳銃が床を跳ねて滑る音が重なった。


ミカヅチの怒りの掌底が男の顎を砕き、中段蹴りが数人まとめて吹き飛ばす。たどり着いたガラス壁に向けて、右の拳を大きく振り被った。握っていた棍が拳を保護するように包む。


「せいッ!」

 打ち込まれた一撃で、ガラス全体に細かくひびが入って破壊され、部屋の壁と同様に大きな穴が開いた。中に入ると、ティターニアに馬乗りになっていた文野が振り向き、鬼の形相を見せた。


「うげっ、なんだこれ」

思わず声が出た。元はかなりの美人なのだろうが、怒りに歪んだ形相と体のギャップが酷い。


 奇声を上げてミカヅチに掴みかかろうとする文野を軽くあしらいながら右腕を伸ばし、ちょうど鎖骨と首筋の間を掴んで軽く捻る。タイタナスの格闘術にある、首筋の神経を刺激しての気絶法の効果は覿面で、文野は一瞬で全身を弛緩させて失神した。


文野を傍らに置くと、ミカヅチはティターニアに駆け寄る。汗と涎と何かの液で酷く汚れて、目の焦点がぼやけ気味だ。何をされたのかは分からないが、酷く消耗していた。


「ティターニア!」

「だいちゃ、み、ミカヅチ……」

 ミカヅチはティターニアの拘束具を外そうと試みたが、全く動かない。


(動くならティターニア一人で脱出してるか)


 一人納得しながら、傍らにあったコンソールパネルに駆け寄り、操作方法を考える。その間にも男達はミカヅチへと襲いかかってくる。


「くそ、邪魔だっての……!」

「Beware, My Order!」


 突如として室内の気温が一気に下がった。息が白くなったかと思うと、空より姿を現した雪の渦が男達の体に張り付き、動きを固め、鈍らせていく。数秒後には雪が氷塊と化して完全に動きを止めた。


「ちょっと、先に突っ走らないでよ! こういう時はリーダーの意見をさァ」

 壁の穴から出てきたクロウが宙を舞い、男達を牽制する。その間にミカヅチのコンソールの操作で、ティターニアの拘束具が軽く音を立てて外れた。

「ティターニア!」


 ティターニアの下に駆け寄る。だいじょうぶ、と声をかけようとしたところで、起き上がったティターニアが周囲に目もくれず、ミカヅチを抱き締めた。


「わ、ちょっと」

「ミカヅチ……大ちゃん、私の……ミカヅチ……」


 ティターニアの荒い息が耳にかかる。背筋がぞくぞくするような感覚に思わず硬直した。

このままこちらも抱き締めていたい気分にかられたが、状況を考えてこらえ、周囲に気を配る。普段のティターニアならばやるはずのない事だが、先程拘束させられていた時に何かされていたのかもしれないと思うしかない。今はそれどころではないのだ。


 落ち着け俺、と頭で声をかけ、大はできるだけ平常心を装って声をかける。

「大丈夫? 怪我はない?」

「あ……ごめんなさい。私は大丈夫。少し、疲れてるだけ」


 自分のしていた事に気がついたのか、ティターニアは頬を赤らめて離れた。拘束台から降りて自分の脚で立ち上がる。


「一体どうやってここが分かったの?」

「感じたんだよ。偉大なる巨神(タイタン)が、ティターニアが戦ってるって教えてくれたんだ。ティターニアが危ないなら、俺はどこにでも行くよ」

「あぁ……」


「ちょっとちょっとォ、ボクもいるんですけど」

 二人の頭上を派手に回転しながら、クロウが二人の近くへと降り立った。ミカヅチだけでも驚きなのに、驚きがさらに追加されてティターニアが目を丸くする。


「クロウ? なんであなたが、この子と一緒にいるの?」

「え? いやァその、ちょっと不思議な縁でお互いの秘密を知ってしまったっていうか……後で説明します! まず目の前のあいつを!」


 クロウが指差す先で、ヒュプノパスが逃走を開始していた。自動扉を開き、外に出ると同時にロブスターの軍団が姿を見せ、室内になだれ込む。


「くそ、どうする? ひとまず逃げる?」

「それは駄目! 奴を逃がすわけにはいかない!」


怒りを露にして、ティターニアは棍を構えた。体が消耗していても、辱めを受けた怒りと仲間の助けで、気力が高まっているのがミカヅチからも見て取れた。


「ティターニア……。分かった、じゃあ偉大なる巨神(タイタン)の名にかけて!」

「外道は正す!」

「主役はボクだ!」


 部屋中に迫る敵の群れに、三人は突撃した。

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