黒い子猫と男の子と箱と。
※これは実際にはなかったお話です。
それは雨が降る6月のある日の出来事でした。
今年幼稚園に入学したばかりの男の子が、友達との遊び帰りの途中公園の前を通ると、「にゃにゃー」っとどこからともなく猫の鳴き声が聞こえてきました。
「ねこさん?」
男の子は鳴き声がする方向へ向かいました。すると、スベリ台の下の方にずぶ濡れになったダンボールが置いてありました。
そっとダンボールを開けると、中には産まれたばかりの真っ黒な子猫が入っていました。
中には手紙も添えられており、『これを読んだ心優しいあなた。どうか、どうかこの子ことをよろしくお願いします。』と書かれていました。まだ幼い男の子に手紙の文字は読めませんでしたが、産まれたばかりのこの子猫が捨てられている事だけはわかりました。
「ねこさん…………ねこさん、おウチないの?」
「にゃーにゃー」
男の子は優しく子猫に語りかけます。子猫は『にゃーにゃー』と鳴くばかり。そして雨に濡れて寒いのか、ぷるぷると振るえ「くしゅん」と可愛らしいクシャミを。
「わわっ! 大変だ! このままだとねこさんが風邪ひいちゃう!?」
どうすればいいの?っと戸惑う男の子ですが「捨てられてるならウチで飼えばいいや!」と思い、連れ帰ることにしました。
「ねこさん、ボクのおウチに来たい?」
「にゃあ♪」
子猫に言葉は通じませんが、男の子の優しい心が通じたのでしょう、嬉しそうに頷いたように見えました。男の子は子猫を濡れないよう、大事に、大事に、両腕で抱きかかえると、自分が濡れるのも構わず、持っていた傘も差さず、急いで家まで走りました。
「ねこさん! もうすぐおウチに着くからね!」
「にゃぁ~っ♪」
子猫は男の子に甘えるように、すりすりと顔をこすりつけました。10分程して男の子はずぶ濡れになりながらも懸命に走り、やっとの思いで家にたどり着きました。
「はぁはぁ……ママ! ただいまぁ!」
……ですが、母親の返事もなく家の中には誰もいませんでした。
「くしゅん、くしゅん」
一刻も早く子猫を温めないと風邪を引いてしまいます。男の子は子猫を温めることで頭がいっぱいになりました。
「ねこさん待っててね! 今温めてあげるからねっ!!」
「にゃぁ♪」
男の子大事に抱きかかえていた子猫をそっと箱の中に入れました。
ガチャン! ガチャン! ピッピッ! ブーン!
男の子が箱の機械を操作すると、子猫を乗せたお皿が回り始めました。
「にゃーにゃー……にゃにゃ!? …………(パーン!)」
すると箱の中から何かが弾ける音がし、突如として異臭が家中を立ち込めました。
…………チン♪ それは何かの終わりを告げる音でした。
そう、男の子が子猫を入れた『箱』とは…………なんと『電子レンジ』だったのです。
これのどこが怖い話だって?
もしもこの男の子が大人になり、自分の子供を持ったら……。
仕組みも知らず、電子レンジ=温めるモノという固定概念。
またこのお話がアメリカ・カナダ・イギリス・日本などで本当にあった実際のお話であること。つまり実際にあった事件で『ノンフィクション』だったと言う事。
※話の細部は違いますが、幼児をレンジに入れ『チン♪』した事件も実際にあります。
そしてなによりも怖いのは『怖い話』を求めてしまう、みなさんの『心』が1番怖いのではないでしょうか…………。
猫さん>アナタのこと…………絶対に忘れないのにゃ
おしまい。