1-2章 先
~街の市場・シルヴィ視点~
今はご主人様のいいつけで主に食材の買い出しに来ています。
ご主人様はというと別に用事があると言う事で別行動です。
私としても今はちょっとご主人様にどのようにして顔を合わせていいかわかりませんでしたので
丁度良かったとも言えます。
ご主人様の改造であんなにはしたなく感じてしまうとは
今でも思い出しただけでも顔から火を噴いてしまいそうになります。
エイボン・ドールは私と一身一体
エイボン・ドールに何かされたら、私の方にもなにかしら影響が出るのですが…
それがあのような刺激で、しかもそれが改造で感じるって…
本当に
本当に恥ずかしくて顔から火が出そうです。
だから、ご主人様と別行動できたのは心を落ち着けるという意味でもとてもよかったです。
…そういえば私、ご主人様の事何も知りません。
私を買った時
そして、あの神様にこの世界に呼ばれたと言われたご主人様
奴隷の私だけども
ご主人様のこと、帰ったら聞いてみようかな
お使いを淡々とこなしていく私ですが
市場の人の視線が二重の意味でとても痛いです。
私は奴隷の証明である首の枷をしています。
それでありながらも綺麗な洋服を着ています。
だけれでも他の奴隷の人たちはぼろぼろの洋服を着せられて労働していたり
女性の奴隷の人だとわざと服を着せないで裸にさせられている人もいます。
そう言う人たちから見ると私は異質であり
羨望の対象であり、私怨の対象でもあるのです。
それともう一つ、私が鬼子だということです。
この国の古くからの言い伝えで
鬼子はこの世に害をもたらす因子
その証が私の白い髪と赤い瞳
証を持った子は殺してしまえ…
というのがこの国には浸透している。
だからこそ、私が生きている事に疑問を持っている人たちがこの街に入る。
ヒソヒソ声で街の人たちが会話している。
「なんで鬼子が生きているのかしら?」
「いやねぇ…誰か殺してくれないかしら?」
という声が聞こえてくる。
私が奴隷である限りは
私に手を出せるのはご主人様か
ご主人様に許可をもらった人だけ
街中で突然刺されたり、殺されたりと言う事はないから
安心といえば安心だけれども
居心地の悪い私は逃げるように市場を出ました。
~王立鎧技学園・カグヤ視点~
俺は用事を終えて市場を歩いていた。
俺が行っていたのは「王立鎧技学園」
入試の事を聞きに行っていたのだ。
学園の人からは入試を一週間後に迫るこの時
「今頃…?」という顔されたが知ったことではない。
知らないものは知らないのだ。
学園から聞いてことによると
戦技科の入学条件は
18歳以下での女子のみ
技巧科の入学条件はなし
この規定をクリアしていて、入学当日に学園から提示される課題をこなし
それを判断基準に合否を決める、ということだった。
そしてその試験も座学ではなく
戦技科は素質検査
技巧科は技力検査を行うらしい。
そして戦技科も技巧科も同じく
入学試験上位3名は特待生として
学費無料、教材費無料、実習費無料、特待生寮の入寮が許されて朝昼夜のご飯つき
まさにいたせりつくせりだ。
出来れば特待生として入学したいところだ。
奴隷の入学方法についても聞いてきたのだが
奴隷も変わらず入学試験を受けれて、合格すれば入学できるとのことだった。
だが、と一つだけ注意された。
「この学園では位が絶対、そこだけは気を付けてね」
戦技科、技巧科に入学したら10の位に実力によって振り分けられる。
戦技科は戦乙女、技巧科は第一級技巧師が一番上の称号らしい。
そして称号が高いほど高い権力を持つ、ということらしい。
もし奴隷が自分よりも高い称号を取ったら…ということである。
少し練習しておいた方がいいなと思いながら帰路に着いた。
~自宅兼工房~
家に着いたのは既に日が暮れた頃だった。
家に戻るとシルヴィが椅子に座って待っていた。
すると
聞きたいことがあります
とシルヴィが切り出してきた。
俺が何?と言ったら
シルヴィは
貴方の事が知りたいです
と言ってきた。
そういえばシルヴィがあってから今ここまで何一つ
俺の事をシルヴィに話をしていなかった。
俺はシルヴィの正面に座って
まず自分の名前からシルヴィに話し始めた
名前はカグヤ
本来はもっと別な名前だが、この世界ではカグヤで行こうと考えている。
年齢は19歳で、生まれはこの世界ではない。
シルヴィも薄々は感じていたらしく、詳しく、と言ってきた。
詳しく、と言ってもなぁ、と俺は苦笑した。
多分俺がいた世界の事を詳しくいっても
この世界に生まれたシルヴィにはよく分からないだろう。
だから掻い摘んで
平和で、それでつまらない世界だったよ。
とシルヴィに言ったらシルヴィは笑顔で
それはとても綺麗な世界なのでしょうね
俺はまた苦笑してしまう
シルヴィが思っているほど綺麗な世界じゃないよ
俺は話を続ける
この世界に来る前は何をしていたのか、どんな生活をしていたのかなど
一通り話して
次はシルヴィの番だよ、という
少しだけシルヴィの表情が曇る
話せる範囲でいいよと言うと
少しだけ口を開いてくれた
話してくれたのは自分が鬼子だということと
鬼子がどういうものなのかということ
その後はシルヴィは口を閉ざしてしまった。
ふーむ、世界を害する因子ねぇ…
迷信過ぎて笑えねぇなぁ…と思う俺
何の確証もない迷信なんぞ信じるに値しない、と考える俺
そんなの関係ない、シルヴィはシルヴィだろ
俺がそういうと
シルヴィは顔をぱぁっと明るくして
ありがとうございますと
飛び切り可愛い笑顔で言うのだった。