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第1話 暗闇の世界


「あははっ!」


薄暗い部屋で古い型のテレビを見ながら、長い髪の少女が笑っている。


「最高に面白いって、このことね!はは…」


少女は時計を見た。


「ああ、もうこんな時間」


さっと立ち上がり、大きく伸びをした。その後、真っ暗な部屋へ歩いて行った。




都心に住む少年・伊佐野(いさの) (さい)は、朝早くに家を出て、学校に向かっていた。使いふるしたスポーツバックを自転車の籠に入れ、自分も自転車に乗った。その後数分走ったあと、自転車を公共の駐輪場に停めて、今度は電車に乗った。砦は電車の吊革に手をかけて、窓の外を見た。


(眠…)


時計は朝の5時を指していた。




伊佐野砦───


優しい顔立ちで、男子にしては少し長めの髪をしている中学2年生の少年・砦は、映画同好会に所属していた。

本日は映画同好会の撮影らしく、砦は日曜日なのにも関わらず学校に行っていた。


(はぁ…主演やりたいってやつが遅刻の常連って、やる気でないな。来てるのか?)


砦はひとりぶつぶつと考えながら、駅に降りた。その時、風のような声が砦の耳に届く。


「もっと楽しいことしましょう?」


どこからか聞こえた楽しそうな少女の声に、砦は思わず振り向く。しかし少女どころか、女性さえ駅のホームにはどこにもいない。


(?…まさか)


砦は頭を抱えた。


(歩きながら、目を開けながら寝ていた?!)


砦がため息をついた。気にせず学校に足を向けた。









はずだった。





「…なっ」


砦が瞬きをした瞬間に、朝の光で明るかった世界が、一変して真っ暗になった。砦は考えの整理がつかずに頭を抱えた。


「………?」

「意外に冷静なのね」


どこからかまた少女の声だけがした。砦は周りを見渡す。


「誰?」

「うふふ…さあ。それを知りたいなら、あたしの所に来て」

「…はい?」

「あたしの所よ。『世界の果ての門』。そこにいるから」


楽しそうに話す声とは逆に、砦は悩みすぎて苦しんでいた。


「なんなんだよ…」

「あははっ。とりあえずすぐそこの門にいってよ。あの子が…」


声はかすれて、スッと消えていった。


「お、おい?!」


砦が叫ぶが、返事は無い。


(だからなんなんだよ…)


砦は暗闇の中を歩き出した。


「おおっ?!」


暗闇の中からスッと門が現れた。門の真ん中に、座り込んで俯いている少女がいた。砦はその少女に話しかけた。


「まさか君が…」


少女の反応はない。


「おいおい」


砦が溜め息混じりに呟いた。その時、少女が顔を上げた。肩まである黒い髪がさらさらと後ろに流れ、赤い瞳が砦をとらえる。


「…!人」


少女の声は、さっき聞いたものとそっくりだった。

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