運命のお相手は夢でのキスで
夢をみた。
ただのクラスメイトという関係しかない、泉咲和が出てくる夢だ。
俺、佐久間志岐は昔から眠りが浅い体質(?)らしく、毎晩夢を見る
それは怖いモノだったり、一時の幸せを感じるような夢だったりさまざまだ。
だから、怖かった夢も、幸せな夢も、所詮は夢だと最近では思っている。
でも、なんで?
ついさっき見た夢のあるワンシーンがずっと俺の中でまるでまき戻しの聞くビデオのように繰り返し、繰り返し、リピートを繰り返す。
なんと、夢の中で俺と泉がその、つまり…キッ、キスをしていたんだ。
いや、キスをしていただけなんだ。うん、それ以外のなんでもないんだよ。
それなのに、俺はまるで何か物凄いことをしてしまったんじゃないかという考えが頭の中をぐるぐると回っている。
これはもしかして今までずっと彼女を作れず平凡極まりない人生を歩んできた俺への神様からのチャンスの信号なんじゃないのか?
俺はそんな浮かれたことを考えたまま、学校へと足を進めた。
HRの時も、もちろん授業中だって、俺の視線は泉に釘付けだった。
「佐久間くん」
「わぁっ!!」
さっきまで見ていたはずの泉がいつの間にか俺の背後にいた。考え事をしている間に移動したのか?それより、授業はいつの間に終わったんだ?
俺は泉が話しかけてきた事なんかすっかり記憶の彼方に追いやってまた頭を抱えた。
「佐久間くんっ!」
「わっぁ!!」
驚きの言葉の後のリアクションを何時まで経ってもしない俺に少し拗ねたように泉はもう一度俺を呼んだ。
やば、同じ反応しちまった。
俺は自分のやらかした恥ずかしい行動を見て泉がどう出るのか、ゆっくりと泉を見た。
「…え?」
「…ふ、ははははは…佐久間くんって、面白いね」
わらっ…た?
そういえば、俺は泉が笑ったところも声を聞いたのも、今が初めてじゃないか?
「佐久間くんって、考え事多い人?」
目に涙を浮かべて泉は上目使いに俺を見上げる。
あ、やばい…可愛い。
「佐久間くん…また、考え事?」
そこで俺はやっと泉が心配そうに俺を見ていることに気が付いた。
「あ、いや…そんな事はない。…と、思う」
慌てた俺の返答に泉はまた微笑んだ。
「それより、さっきの私の話、聞いてた?」
「…ごめん」
「だとおもったよ。まぁ、いいよ…あのね、私は……佐久間くんが…」
泉の声はだんだんと小さくなっていく。顔も少し赤い。
……風邪か?
おっといけない。また一人でスリップするところだったよ。
「…佐久間くんが……」
泉はさっきからその先を言えずに入る。懸命に続きを言おうとしている泉を見ていると、自然と口が開いた。
「あのさぁ、泉…俺、泉の事好きかもしんない」