プロローグ
何時かのどこかで生まれた世界。情念が結集することで誕生したものだろうか、あるいは情報が集積することで誕生したものであろうか。少なくとも、物質を基盤とする現実の世界と異なることは確かである。
そして現在、現実とは趣を異とする世界において、1つの物語が産声を上げようとしていた。
巨大な大陸内に建国されたオーガスト王国。元々はある国家の一部であったが、有力な諸侯が分離独立することで出現したという経緯がある。
オーガスト王国の南東に位置するスフィア領。ここは王国に仕える貴族が統治する領地の一部であり、元々は他の領地との違いはさほど見られなかった。
ところが、ある日を境にスフィア領の状況は一変する。それはまさに天変地異にも等しい出来事であった。
深い闇夜の彼方から突然、船がスフィア領の南東部に落ちてきたのである。しかも、ただの船ではない。頭から船尾に至るまでの全てが頑丈な鉄で覆われており、規模は城塞よりも遥かに巨大であった。
巨大な鉄の船の落下は周囲に甚大な影響を与えた。衝突の衝撃で大地が無残に抉られ、同時に巻き起こった爆炎で木々が焼かれた。そしてまた、この地区で生きる多くの生命が失われた。
さらに船の落下が与えた影響はそれだけではない。落下した船の周辺から環境が変貌していったのである。見たこともない植生が発生したかと思えば、それに伴って生物達も不気味な姿形へと変わっていく。
おぞましい怪物へと変貌した生物達。連中は尋常ならざる力を持ち、さらには凶暴な気質を宿すようになった。最早、今までの常識が通用する相手ではないと言っても過言ではない。
当然、スフィア領南東部の人々は変貌した生物達に対し、強烈な恐れを抱くようになり、何時しか連中のことをモンスターと呼称するようになった。
そして、スフィア領で暴れるモンスターの姿を目の当たりにして、南東部の住民達は領主から応援を望んだ。ところが、その答えは彼等の期待を裏切るものであった。
スフィア領主の対応は南東部の境界に強固な壁を築き上げ、他の土地と切り離しを断行したのだ。それ以外の措置としては、治安維持の名目で少数の騎士が派遣されるだけであり、後はほったらかしも同然であった。所謂、蜥蜴の尻尾切りとも言えるだろう。
冷淡な領主の仕打ちを受け、人々は大いに失望した。しかし、だからと言って、全てが終わった訳ではない。いかなる事情があろうとも、人は生きていかなくてはならない。
ここから明かされる物語。それは絶望的な環境におかれてもなお、生き続けることを選び、ついには未来を勝ち得ることに成功した人々の記録である。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。疾風のナイトです。
今回、新作を投稿させていただきました。この小説は今の私が持てる上限で創作した作品になります。このため、作風や文章表現等についても、Web小説用としてではなく、本来のものに仕立ててあります。もしかすると、皆さんの好みに合わないかもしれません。
また、作品に投入するエネルギーや時間についても、これまで投稿した小説よりも多くなっています。このため、更新速度についても今まで以上に遅くなると見込まれます。
それでも皆さんが面白い作品ができるよう、努力していきたいと思います。
最後にプロローグを読んでいただきましてありがとうございました。




