第48話 約束と違う?
「おい。今、丸山って奴は居るか? 」
朝のホームルームが始まる15分前。
颯のクラスメイトであり、強靭な肉体を持った、ガタイの良い男子生徒4人が、例の理系のクラスを訪れる。
男子達の言葉に反応し、静かに席に座る丸山に、教室に身を置く生徒達の視線が、集中する。
同級生からの冷たい視線に敏感に反応し、ビクッと両肩を跳ねさせ、さらに丸山は縮こまる。以前までの傲慢な態度は何処えやら。
「お前が丸山だな。ちょっと面貸してもらおうか」
教室の生徒達の視線から、容易に丸山を見抜き、颯のクラスメイトの男子生徒4人は、彼の席まで足を運ぶ。そして、丸山の席を4人で取り囲む。丸山は蟻地獄に閉じ込められたように見える。
「な、…なんだよ」
言葉では強がっているが、明らかにビビる丸山。その証拠に、自席に座りながら、忙しなく周囲を囲む男子達に、視線を彷徨わせ、落ち着きがない。
「無駄な時間を割く余裕は無い。モタモタしていたら、朝のホームルームが始まる。だから、ちょっと来てもらおうか」
乱暴に丸山の手を掴み、リーダー格の男子生徒が、丸山を教室から連れ出そうと試みる。
「お、おい!? 何するんだ!! 勝手に触るな! 手を離してくれ!!! 」
必死な形相で、声を上げ、抵抗する丸山。
しかし、体格の優れた男子生徒には、手も足も出ず、ズルズルと情けなく、教室の外まで引きずられる。
丸山を引きずる男子生徒を追うように、他の男子生徒3人も、教室を退出する。
その間、クラスメイト達は、誰も丸山を助けようとはしなかった。
丸山に協力した、例の女子3人も、それらに含まれる。ただ、一部始終を傍観していた。
現在、人間の面倒ごとを避ける本能が、遺憾無く発揮される。
そのまま、トイレに連れ込まれる丸山。
さらなる不幸は続き、トイレには誰も居なかった。そのため、男子生徒4人には、最高のシチュエーションだった。余計な目を気にせずに、済むからだ。
「おい、お前だな。中谷さんをいじめた首謀者は」
トイレの奥に追い込むために、丸山を強引に引きずり、真ん中に立つ男子生徒が、低音ボイスで告げる。
丸山を追い詰める、男子生徒4人は、見たからに優れた体格を持つ。
野球部のエースで4番で、大概の同級生よりは、ガッシリした丸山が、明らかに細く見える。
体格に大きな差がある。
「な、なんなんだよ。…なんなんだよ。お前らは…」
恐怖に打ちのめされたように、ガクガク震えながら、トイレの壁に、背中を預ける丸山。
だが、逃げ場はない。逃げるとしたら、背中の後ろに設置された窓を開け、飛び降りるしかない。
だが、現在地は、校舎の2階に位置する。命懸けで、身を投げ出して、飛び降りる勇気が、丸山に有るとは到底思えない。
「俺達か? 俺達は、中谷さんを大切に思い、毎日癒しを頂く、中谷さんのクラスメイトだ。それ以上でも以下でもない」
こくっ。こくっ。
真ん中以外の男子生徒3人は、無言で頷く。息ぴったりだ。
「だからな。大切なクラスメイトの中谷さんを傷つけた、お前が許せないんだ。しかも、告白をフラれた腹いせに、いじめをするとは。…俺達は、はらわたが煮えくり返ってるんだ」
真ん中に立つ男子生徒が、両拳を強く握り締める。
「だから、これからどうなるかは、分かるよな? そこまで、バカじゃないだろ? 」
「は…。ガハッ。グホ。ガッ」




