第41話 教室にて
「まさか。担任に手伝いを頼まれるとは…」
放課後に突入して、しばらく経過したため、廊下の生徒達の数は極端に減っている。
そんな廊下を、独り言を呟きながら歩き、颯は自身のクラスの教室に向かう。
帰りのホームルーム終了後、普段は自宅に直帰する。しかし、担任から数学の提出物を運ぶのを手伝って欲しいと頼まれた。
1人では、運ぶのは、しんどい量であった。
断ることは出来ず、颯は担任の手伝いをした。
ちなみに、帰りのホームルーム直後に、颯のクラスに姿を現した遥希に、一緒に帰るように誘われた。
明らかに一緒に帰る気満々だった遥希。
しかし、待たせるのは気が引けたので、颯は断った。
天音のためなら、何分でも待つと、遥希は言ったが、言葉に甘えず、今日の19時頃に一緒にスーパーに買い物に行く約束を結び、先に帰宅してもらった。
その際、明らかに、遥希は不満顔だった。
半分に分けて、颯と担任は、提出物を職員室に運んだ。
生徒達の声で騒がしい廊下を、まあまあ重い提出物の塊を持ちながら進む。
颯のクラスの教室と職員室は、同じ階に位置する。そのため、階段を降りる必要は無かった。
職員室に入室し、提出物を担任の机に置き、仕事は終了した。後は、他愛のない話を担任と交わし、職員室を後にした。そして、今に至る。
「いつも通り、自宅に直帰する予定は狂ってるな。早いところ家に帰って、ラノベでも読も」
帰宅してからの予定を呟く。そのまま同じスピードで、廊下を進む。
「うん? 」
あと少しで、自身のクラスに到着する所で、隣の2年5組の教室に、颯は目が行く。
教室のドアは前だけ開いており、中にはゴミ箱の中を漁る瑞貴の姿があった。無表情で黙々と、素手でゴミ箱の奥を掘るように、何かを探す。
「どうしたんだろう? 」
不思議そうに、首を傾げ、颯は2年5組のクラスに入室する。
「やっと見つけた。本当に面倒臭い……」
うんざりした顔で、ゴミ箱の奥に埋まったローファーを、瑞貴は拾い上げる。ローファーには、ゴミが付着し、酷く汚れる。
ゴミ箱の上で、ローファーに付いたゴミを払い、きれいにする。
「ある程度は、きれいになったかな。履きたくないけど、このローファーを履いて、そろそろ帰ろうかな。あ……」
ローファーとゴミ箱から視線を切り、教室の戸に意識を向けたところで、瑞貴は佇む颯を認識する。
「中谷さん…。もしかして……」
瑞貴がゴミ箱でローファーを探していた理由は、容易に推測できる。考えられる原因は1つしか無い。普通の人間なら、嫌でも分かってしまう。
「あはは…。バレちゃったか。……知られたくなかったんだけどな……」
苦笑いを浮かべながら、渇いた笑い声を漏らし、下を向く瑞貴。
2人の間で、重い静寂が訪れる。
瑞貴は俯いた状態をキープする。
一方、颯は、気の利いた言葉を発せず、ただ視線の合わない瑞貴を見つめることしか出来なかった。
「このままだと、時間だけが過ぎるだけだから。一緒に帰りながら、話さない? 」




