第39話 嫉妬
「あんた、野球部のエースの丸山君の告白を断ったのは、本当なの? 」
昼休み、1階の名前も無い空き教室で、女子3人組のリーダー格の1人が、瑞貴を問い詰める。取り巻きの2人も、威圧的に、瑞貴を睨む。これら女子3人は、丸山と同じクラスメイトだ。
瑞貴が廊下を歩いていると、偶然を装い、待ち伏せていた女子3人に捕まり、この空き教室に案内された。第3者が入ってこないように、空き教室の鍵は施錠してある。
「…野球部のエースの丸山君? あ、あの人か。……うん。…本当だよ」
脳内の記憶を辿り、目の前の女子が口にした、男子を思い出し、瑞貴は何処か諦めた顔で弱々しく答える。もしかしたら、少なからず恐怖心を抱いたかもしれない。
「うん、本当だよ。じゃないよ! 」
怒りが爆発し、荒々しい大きな声を上げ、真ん中に立つリーダー格の女子が、黒板の隣の壁に、瑞貴を押さえ付ける。
瑞貴の背中が、強く壁にぶつかる。
「いたぁい……」
女子達から視線を逸らし、苦痛に耐えるように顔を歪め、瑞貴は消え入りそうな声を漏らす。
「本当に! あんたは、入学してから、多くの男子を魅了して、告白を受ければ、全て振る。ただでさえ、あんたみたいな女子が告白されるだけでも腹が立つのに、付き合わずに、男子の告白を折るかのように、告白を拒否するのは、本当に気に食わない。少し顔が良いからって、人の気持ちとか考えたことある? 」
「本当に」
「男子の気持ちを弄んでる。そうとしか思えない」
リーダー格の女子の捲し立てた言葉に便乗し、取り巻きの2人も、瑞貴に追い打ちを掛ける。もちろん、瑞貴を強く非難する。
「その顔を思う存分にボコボコにしてあげたいけど。流石に暴力を振るって、あなたの憎たらしい顔に、傷が付けば、面倒ごとに巻き込まれる。もっと、あなたが絶望するまで、罵倒して追い詰めてやりたいけど。今日は、この辺で勘弁してあげるわ。時間に感謝するのね」
空き教室の黒板の上に設置された時計は、12時40分を指していた。後5分で、昼休みは終了し、5時間目の授業が始まる。
「さっ、行くわよ」
リーダー格の女子の呼び掛けに応じ、後ろに取り巻く2人を連れて、彼女は空き教室を後にする。
ドアの閉じる音が、静かな空き教室に大きく響く。瑞貴は1人、取り残される形となる。
「はぁ~。……最悪」
壁に寄り添いながら、瑞貴は力無く床に崩れ落ちる。崩れ落ちる際、スカートが上手く役割を果たし、瑞貴のパンツは見えない。」
「モテても、ロクなことない。誰かに分けてあげたい位だよ」
絶望した顔を浮かべ、瑞貴は両手で顔を覆った。しばらくの間、瑞貴は動けなかった。




