第26話 自宅
「…お邪魔します」
学校終わりの放課後。
緊張した面持ちで、遥希は颯の自宅にやって来た。
「ど、どうぞ」
誘った側の颯だが、表情は硬い。こちらも緊張が顔に滲み出る。遊びに誘った直後は、特に何も感じなかった。だが、学校の授業が始まり、時間が経過し、自身があまりに軽率な行動をしたのではないかと、思うようになった。
そして、遊びに誘ったということは、遊ぶ場所を確保しなければならない。特に計画も立てずに、颯は遥希を遊びに誘った。
授業の間、颯は遊ぶ場所に頭を悩ませた。遊園地や映画の選択肢がまず浮かんだ。だが、不幸にも以前、遥希達とファミレスで外食した出費の結果、所持金が底を尽きていた。
遊びのために、そこまで親密関係ではない遥希にお金を借りるわけにもいかない。したがって、お金を用いた遊びは不可能だ。
そうなれば、遊ぶ選択肢は限られる。狭きものになる。公園や学校で遊ぶ場所として選択しても、することがない。お金を持っていなければ、遊びには苦労するものだ。
そこで、最終的に、颯が遊び場所として選択したのが自宅だった。
異性を自身の自宅に呼ぶのは、難易度としては高い。それは颯も理解していた。だが、選択肢の中から考え、絞った結果、自宅が1番最適な場所だと判断した。だから、遊び場所を自宅に選定した。
遥希を玄関からリビングに通す。
リビングには、テレビ、ソファ、ガラス製のテーブル、ソファと同じ素材で作られたイス、などが存在する。
「ソファに座って楽にしてていいからね」
リビングに設置されたソファを指差し、颯は遥希に座るように促す。
「ああ。そうさせてもらう」
1回頭を縦に振ってから、上品に中身が見えないように、スカートの下に手を添え、遥希はソファに腰を下ろす。
そんな遥希の姿を確認し、颯は冷蔵庫に手を掛ける。
冷蔵室でキンキンに冷えたお茶を取り出し、ボトルを介して、自身と遥希の分をプラスチックのコップに注ぐ。
最後に冷凍室から取り出した氷を、それぞれのコップに投入し、お茶の完成である。
「お待たせ! 結構外が暑かったから、喉渇いてると思って。はいお茶! 」
遥希の付近まで足を運び、颯はソファの前のガラステーブルに2つのコップを置いた。1つが颯の分、もう1つが遥希の分である。
「ありがとう。美味しくいただくよ」
嬉しそうに薄く微笑み、コップを手に取り、遥希はお茶に口を付ける。
「うん! 美味しい!! 」
満足そうに呟き、遥希はテーブルの上にコップを戻す。
「よかった。味がお口に合って安心したよ」
安堵し、颯はガラステーブルの近所にあるイスに、もたれ掛かるように座る。流石に、遥希の隣に座る勇気は無かった。
「「…」」
しばらく無言の時間が続く。両者共に目を合わせず、時折り、お茶を口に流す。
何か話さなければと、焦る颯。最近、この問題に直面するばかりだ。だが、未だに自身で解決できた、ためしはない。
颯の自宅であることも起因し、以前のように、遥希からの積極的な話題の提示も見込めない。
とにかく周囲を見渡す。一応、ここは颯のホームである。そのため、何かしら会話が円滑に進む材料はあるはずだ。
右往左往に目を動かし、リビングにある様々な物体に視野に収める。
(あ! あれは使えるかも)
颯が発見したのは、テレビにコードが繋がった、日本で有名なテレビゲームだった。これを使わない手は無かった。
「八雲さん。今から一緒にゲームしない? 」




