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学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った  作者: 白金豪


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第10話 別れの言葉

「ちょっと話があるけど。いいかな? 」


 全ての学校のスケジュールが終了した放課後。帰りのホームルームを経て、放課後は騒がしい。クラスメイト達の声で溢れる。笑いや話し声など多様だ。学校の授業から解放され、生徒達の気分は良好だ。


 そんな環境に身を置きながら、笑顔1つ無い真面目な顔で、颯は聖羅の席に足を運ぶ。聖羅の席は窓側の1番後ろだ。


「どうしたの? そんな真剣に」


 帰りの支度最中だった聖羅。作業を一時的に止め、颯に意識を集中する。颯の様子が普段と異なるため、不思議そうに眉をひそめる。


「ちょっと大事な話があるんだ。支度を終えたら、一緒に屋上に行こう。そこで言いたいことを伝えるから」


 颯の右手には板状のスクールバッグが存在する。吊るすように右手に持つ。既に帰りの支度は済ませた状態だ。


「そうなんだ。それは構わないけど。教室では出来ない話? 」


 颯を視界に収め、聖羅は疑問を投げる。顔には、なぜ、と書かれていた。当然の反応だろう。颯が持ち掛ける話の内容を知らなければ、そのような疑問を抱くだろう。


 大事な話の内容を、聖羅は知る由もない。颯と神のみぞ知る事柄である。


「うん。お手数かけて申し訳ないけど。それほど大事な話なんだ」


 颯の表情は変化しない。覚悟決めた顔を形成する。


 颯と聖羅が無言で数秒間ほど見つめ合う。2者間で静寂な空気を醸成する。


 教室の喧騒は下がった。多くのクラスメイト達が教室を後にしていた。そのため、颯と聖羅に着目する生徒は見受けられない。2者間で流れる微妙に張り詰めた空気を知覚するクラスメイトも皆無だ。


「…分かった。…すぐに支度を済ませるから待ってて」


 納得し、薄く笑みを作ると、聖羅は再び帰りの準備に着手する。先ほどよりも俊敏に手を動かす。手早く革の学生カバンに教科書、ノート、筆記用具を投入する。颯を待たせるため、気を使って行動を素早く行ったのだろう。


「はい! 支度終了! さっ、一緒に屋上に向かおっか! 」


 スカートから露になった両太ももを軽く叩き、自席から立ち上がる。屋上を目的地とし、颯に一緒に行動するように促す。


「…うん。行こう…」


 席から起立した聖羅を視認し、颯は踵を返す。方向転換し、教室後方の戸に歩を進める。


 颯に倣い、聖羅も同じ場所を目指し、後を追う。1列に並ぶ形を成す。


 最初に、颯が教室を抜け、聖羅も続いた。


 颯のクラスは2階に居を構える。屋上は4階をさらに登った先にある。


 颯と聖羅は最寄りの階段を利用し、1段1段と階段を上がる。階段と校内用のスリッパが衝突する音が、踊り場や階段辺りのエリアで木霊する。まるで山びこのようだ。


 4階に到着し、校内に1つしか無い屋上行きの階段へ乗る。


 ここまで、颯と聖羅は無言だ。1言も言葉を交わしていない。


 颯が話し掛けるな、オーラを形成する。少なからず、その要因は影響を与える。


 現に、居心地が悪そうに、聖羅はチラチラ視線を彷徨わせる。時折、目の前の颯の背中に視線を移す。注意を引く行為だろう。


 だが、颯は無反応だった。もちろん目線には気付いている。しかし、口を開くことは気が進まない。


 今回は、必要最低限しか言葉を交える予定はない。余計なコミュニケーションは取りたくなかった。


 自身が伝えたい内容を提供する。その目的を達成すれば、聖羅は用なしだ。


 屋上の目の前に到着した。引き戸の扉を開けば屋上だ。


 迷わず、颯は屋上の戸を引いた。明るい光景が開ける。外の太陽の光が、戸の隙間から差し込む。少し眩しいレベルだ。


 目を細めながら、颯は屋上に足を踏み入れる。


 同じく、聖羅も屋上に身を置く。


 屋上の真ん中あたりまで進み、颯は回れ右を行う。


 颯の行動に反応し、聖羅は立ち止まる。自然と颯と聖羅が見つめ合う形になる。聖羅の大きな紺色の瞳が特徴的だ。ぱっちりで、颯の瞳よりは大きい。


 颯は一重、聖羅は二重である。一目で認知可能だ。


「今日は、ここまで足を運んでくれてありがとう。わざわざ屋上まで同伴してもらって」


 静寂な空気を破り、颯が口を開く。今まで静寂は、颯の心の準備時間だ。1言目を吐き出すまで、結構な勇気を振り絞った。当然、緊張も覚えていた。


「どうしたの? そんな畏まって。今日の天音君は変だよ。普段と様子が違う」


 戸窓いながらも、聖羅が颯を心配する。


 無理もない。今の颯は、いつもの颯ではない。聖羅が違和感を覚えるのは当然だろう。常に彼女の前で仏頂面だ。笑顔や微笑み1つ見せない。


「うん。大丈夫だよ。少し緊張してるんだ。だから表情が硬いんだよ。大事なことを伝えるときは、少なからず、みんな緊張するよね? 」


「そうかも…しれないけど…」


 颯の言葉に、聖羅は釈然としない。訝しむように、颯の身体を隅から隅まで観察する。忙しく瞳を上下左右に動かす。


「それでは本題に入るよ」


 聖羅の胸中など無視し、颯は勝手に話を進める。


 聖羅の胸中は容易に推量できる。だが、心が追いつくまで待つつもりはない。そこまで待つほど、颯に余裕も無い。


「う、うん」


 観察を途中で中止し、聖羅はぎこちなく頭を縦に振った。実に歯切れが悪い。


「ふぅ~~」


 大きく息を吐く颯。心を落ち着かせるための深呼吸だ。


「いきなりだけど、俺と別れてくれないかな? もちろん今日からね」

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