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両親に溺愛されて育った妹の顛末  作者: 葉柚
番外編

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厳しく育てられたお姉様の顛末4





「ねぇ、お父さま。新作のククルシチュワートのアクセサリーが発売されましたの。私、とっても欲しいんですの。買っていただけませんか?」


 ククルシチュワートのアクセサリーはどれも高級だ。けれど、王家ご用達の店として名高いククルシチュワートのアクセサリーは貴族令嬢の間でも評判が高い。

 私もククルシチュワートのアクセサリーがどうしても欲しい。だって、ククルシチュワートのアクセサリーはドレスよりも高価なんだもの。下手をしたら郊外に一軒家を建てられるって話。

 そんなに高価なものをお父さまが私に買ってくださるのなら、私はお父さまに愛されているという証拠でしょう?

 

「ククルシチュワートのアクセサリーか……。」


 お父さまは読んでいた新聞から視線を私の方に動かした。

 新聞にはなにやらわけのわからない数字ばかりが並んでいる。普通の経済新聞とは違うようだ。

 オッズという言葉が書かれているが、いったいなんのことだろうか。

 

「ええ。お父さま。お願い。」


「わかった。買ってあげるから、少し待っていなさい。」


「まあ、ありがとうございます。私、とっても嬉しいわ。」


 お父さまは私の笑顔を確認すると、またすぐに視線を新聞に戻してしまった。その新聞、そんなにお父さまが気になる話題でも乗っているのかしら。

 お父さまは私に甘いけれど、お父さまの一番は私じゃないことを知っている。

 だって、私のことが一番だったら、どんなアクセサリーが欲しいのか聞いてくれるでしょう?

 新作のククルシチュワートのアクセサリーは一つだけではない。

 ブレスレットに首飾り、指輪、ティアラ、ピアス、イヤリング……種類が沢山あるのだ。その全部を買ってくれるというのかしら。

 一つ購入するだけでも郊外に家が建つともいわれているというのに。

 まあ、侯爵家ですものね。

 そのくらいの資金的な余裕はあるのでしょう。

 お金のことについては、私が気にする必要はない。お父さまとお母さま、それに優秀な執事がいるもの。私が気にかけなくったって、きっと彼らがお金をかけすぎだって警告してくれるわ。

 だから、私は欲しい物をいっぱいおねだりすればいいの。

 そう、私は好きなものを好きなだけおねだりすればいいのよ。

 




☆☆☆☆☆





「……お父さま、ククルシチュワートのアクセサリーを買ってくださったのはとっても嬉しいわ。でも、どうしてイヤリングなのかしら?」


 私の手の中にはお父さまに買ってもらったククルシチュワートのイヤリングが乗っている。淡いブルーをベースとした華奢なそのイヤリングを見て、私は苦笑を漏らした。

 とても可愛らしいイヤリングだ。けれど、私はブルーよりもピンクの方が好き。いつも購入するものはピンクをベースとしたものばかり。それなのに、お父さまは私にあえて淡いブルーのイヤリングを選んだ。

 お父さまは私の好みなど気にはしていないのだろう。

 私はピアスホールを開けてあるのに、どうしてお父さまはよりにもよってイヤリングを買ってくださったのかしら。

 それに、私、イヤリングよりも首飾りの方がよかったのに。

 お父さまは本当は私に関心がないのかもしれない。


「ん……あ、ああ。イヤリングの方がオフィーリアには似合うと思ってね。」


「……私、ピアスホール開けてあるんだけど。」


「ははっ。まあ、いいじゃないか。ククルシチュワートのアクセサリーには変わりないだろう。」


「そうだけど……。ねえ、ピアスの方も買って欲しいわ。」


「……む。そうだな。手配しておくよ。」


「まあ、ありがとうございます。お父さま。オフィーリアとっても嬉しいわ。」


 こんなやり取りもなんだか、むなしいだけ。

 お父さまは私に優しいフリをしている。

 お父さまは私を娘として愛しているフリをする。

 本当はそんなこと微塵も思っていないだろうに。

 ああ、本当に虫唾が走る。

 だから、私はいつもお父さまにいろいろな物を強請る。

 そうして、お父さまを困らせようとしている。

 だって、お父さまは私をまったく見ていないのだもの。

 お父さまの関心も、エレノアお姉さまにあるのは見て取れる。

 お父さまはエレノアお姉さまの教育にばかり熱心だもの。

 きっと、お父さまもお母さまと同じでエレノアお姉さまに希望を見出しているのだわ。

 私ではなく、エレノアお姉さまに。

 

「……どうして、私はエレノアお姉さまではないのかしら。」


 エレノアお姉さまは、本当の意味でお父さまとお母さまに必要とされている。けれど、私はお父さまとお母さまの愛玩具にすぎない。

 それがどうしようもなく惨めで仕方がない。

 だから、その思いを吹き飛ばすために私は今日もお父さまに高価な品々を強請り、お母さまに無理なお願いをする。

 私からあなたたちへのせめてもの意趣返し。

 

 私の味方はやっぱりエレノアお姉さましかいないの。

 侍女たちも、私が侯爵家の令嬢だからってもてはやしているだけ。

 友達も私が侯爵家の令嬢だから仲良くしてくれているだけ。

 本当の私はエレノアお姉さまの傍にしかないの。

 エレノアお姉さま、どうかこんな私を助けてください。

 お願いよ。エレノアお姉さま。どうかわたしをたすけて……。

 どうしたらエレノアお姉さまは私を見てくださるの。どうしたら、私に手を差し伸べてくださるの。



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