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私とオフィーリアの半生を題材とした劇は王都で大きな話題となった。
実在する皇太子妃候補のエレノアとその家族の不祥事ともあって、瞬く間に貴族中に広まり、劇が公演されてからの貴族のお茶会では必ずと言っていいほど、エレノアとオフィーリアのことが話題として上がった。
それとともに、オールフォーワン侯爵家の醜聞まで明らかになっていく。
エレノアに対するオールフォーワン侯爵家の行いはオールフォーワン家の使用人たちの口から語られ、おびれがついて世間に広まっていく。
肉体的な虐待はなかったが、エレノアは両親に精神的な虐待を受けたとしてオールフォーワン侯爵夫妻は世間から大バッシングされた。
さらに、オールフォーワン侯爵のギャンブル好きと借金の噂が世間を騒がせると、オールフォーワン侯爵夫人には同情が寄せられ、オールフォーワン侯爵には更なるバッシングの嵐が吹き荒れた。
ここまで騒ぎが大きくなってしまうと、王家としてもオールフォーワン侯爵家をこのままにしておくこともできず、オールフォーワン侯爵家の当主はその座を引きずり降ろされた。
そして、オールフォーワン侯爵家の当主は詐欺罪と横領の罪で牢に入れられることになった。
必ず返すからとあちらこちらから借金をしていたのが悪質だと判断され、詐欺罪となったようだ。特に共同出資で事業を起こす約束をしていたリーチランド侯爵家からは莫大な資金援助を受けており、オールフォーワン侯爵が何年たっても事業の話し合いすらしないということで詐欺罪が適用されたのだとか。
横領については、どうやらオールフォーワン侯爵が侯爵位を継ぐ前に王宮勤めをしていた時に、帳簿を水増しして横領をしていたらしい。こちらは、気づかれない金額をということで少額だったらしいが横領は横領だということで罪に問われている。
連行されていくオールフォーワン侯爵をこっそりオフィーリアと見た時、オールフォーワン侯爵は憔悴したような表情をしていた。
「……オールフォーワン侯爵家は取りつぶしになるのかしら。」
侯爵が牢に入れられたとなれば最悪侯爵家は取りつぶしになる。
侯爵家で過ごした日々に思い入れはないが、やはり取りつぶされるとなるとなんとも切ない思いが込み上げてくる。
「ジュドー様が説明に来てくれるらしいですわ。エレノアお姉さま。」
オフィーリアと二人で母親であるアネモネを領地に送り届けた私とオフィーリアは馬車の中にいた。
王都に戻っている最中だ。
「そう。オフィーリアは情報が早いわね。」
「ふふふっ。伊達に遊んでいたわけではなくってよ。エレノアお姉さまのためにと、あちらこちらにお友達を作っておいたんですの。」
オフィーリアはそう言ってにっこり笑った。
わずか13歳にしてこの行動力。本当に13歳なのか不思議に思う。
「……オフィーリア、あなた本当に13歳なのかしら?」
「な・い・し・ょ・ですわ。」
にっこり笑みを浮かべて人差し指を口元にあてるオフィーリア。
どこかその笑みに見覚えがあったような気がした。




