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両親に溺愛されて育った妹の顛末  作者: 葉柚


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「エレノアお姉さま。勉強なんてやめにして今日は私と一緒に観劇に参りましょう。」


 皇太子妃教育のためと経済学の授業を受けていると、オフィーリアが唐突に部屋にやってきた。

 オフィーリア付きの侍女がオフィーリアの後からオフィーリアを止めるように慌ててやってくるのが見える。

 どうやらオフィーリアは侍女を振り切ってここまでやってきたようだ。

 

「オフィーリア。見ての通り私は今、経済学の授業を受けておりますの。」


「ええ。そうね。それも皇太子妃教育なのでしょう?でも、エレノアお姉さまは勉強のしすぎですわ。お母さまの言いなりになんてならなくても良いのではなくって?私はこれ以上の教育はエレノアお姉さまには不要だと思っておりますの。毎日毎日朝から晩まで他のことはせずに皇太子妃教育ばかりで頭がおかしくなりませんか?他の皇太子妃候補だってエレノアお姉さまほど勉強だけに時間を費やしていらっしゃる方はおりませんわ。適度に遊ばないと。」


 オフィーリアはそう言って譲りません。

 確かに先日お会いした、アニス様もソフィーナ様も勉学だけでなく自分のやりたいことを皇太子妃として活かせないかと考えているように見えた。

 二人とも勉学だけをしてきたようではないように見受けられた。

 

「エレノアお姉さまは真面目過ぎるのですわ。一日くらいサボったって大丈夫ですわ。それに、勉強しすぎでエレノアお姉さまは頭がカチコチですの!」


「オフィーリア……。」


 オフィーリアは私の手をとって強引に椅子から立ち上がらせようとします。

 私は自分の中の迷いもあってオフィーリアに手を取られるまま椅子から立ち上がりました。

 

「オフィーリアお嬢様、困ります。私は奥様からエレノアお嬢様の教育を命じられているのですよ。勝手に予定を変更されてしまえば、私が奥様にお叱りを受けてしまいます。」


「大丈夫よ。お母さまには私から言っておくから。お母さまは私には甘いからなんでも言うことを聞いてくださるはずだわ。」


 オフィーリアは先生の静止する言葉を跳ねのけて私を部屋から連れ出そうとする。

 私にはないオフィーリアの強引さが私にはどこか羨ましかった。

 私はオフィーリアに手を引かれて部屋を後にする。

 

「オフィーリア、ちょっと待って。ドレスを外出着に着替えても良いかしら?」


「……エレノアお姉さまの外出着って、先日のお茶会の時のドレスでしょうか?」


「ええ。普段外出しないから、外出用のドレスはあれ一着しか持っていなくって……。仕立てようにも、私には自由になるようなお金は用意されていないから、お母様に話を通すしかないのだけれども、外出用のドレスは一着あれば十分と言われてしまって……。」


 そう言うと、オフィーリアは大きなため息をついた。

 

「はあ……。もう、なんでお母さまったらエレノアお姉さまに意地悪ばかりするんですの。私だって外出用のドレスは何着も用意してもらっているのに、エレノアお姉さまの外出用のドレスが一着しかないなんて……。お母さまはエレノアお姉さまのことをなんだと思っているのかしら。」


「……オフィーリア。お母様にはお母様の考えがあるのです。そのように悪く言ってはなりません。」


「エレノアお姉さまはもっとお父さまとお母さまに自分の思いをぶつけてください。ドレスを一着しか買ってくださらないのに、エレノアお姉さまに自由にできるお金をあげていないのも大問題ですわっ!お父さまとお母さまを怒鳴りつけても良いくらいですわ!!」


「オフィーリア……でも、我が家の経済状況は侯爵家ながらあまり良くないと聞いているわ。だから、あまり浪費するようなことは……。」


 常々お父様から言われている。

 我が侯爵家の経済状況は良くないと。

 領地の経営には問題ないが、なぜだか支出が収入に対して多いのだ。

 お父様の王宮での俸禄もあるというのにも関わらず。


「外出用のドレスを作るのは浪費とは言わないわ。必要経費よ。ドレスが一着しかないのは明らかにおかしいわ。毎回毎回お茶会に同じドレスで訪問していたらそれは恥になると教わらなかったのかしら?あの優秀な先生に。」


「……ドレスのことはなにも言っていなかったわ。お茶会の作法は教えていただいたけれど。」


「お茶会の主催者とドレスの色や形が被ってはいけないとは言われなかったかしら?」


「え、ええ……ドレスについては本当に何も聞かされていないの。」


「……はあ。それで良く教師が務まるわね。……もしかして、あえてお父さまかお母さまがそこには触れないように言っていたのかしら。」


 オフィーリアはなにやら神妙な顔つきでブツブツと呟いている。

 どうやら私の教育には穴があったようだ。


「お父さまもお母さまも何を考えているのかしら。……まあ、いいわ。今から観劇用の外出用のドレスを用意するのは難しいわね。先日のお茶会のドレスで行きましょう。」


 ドレスは既製品ではなく、一人一人に合ったドレスを作るために完全オーダーメイドになる。今から頼んだとして、有名なデザイナーに頼めば1年待ちもザラだ。

 一般的なデザイナーに頼んでもなんだかんだで1か月はかかる。

 

「え、ええ。わかったわ。」


 私はオフィーリアに押し切られるように外出用のドレスに着替えると、オフィーリアと一緒に侯爵家の馬車に乗って観劇に向かうのだった。




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