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Extended Universe   作者: ぽこ
最初の街 - ファスティアン -
9/27

休憩と冒険者たち

投稿開始から一週間が経ちましたので、次回からは週二投稿で頑張ります。

目に留まったのはイチゴたっぷりのパフェと桃のタルト。ウキウキでお店に入れば、木の温もりが感じられる内装で、ゆったりできるいい雰囲気だった。どこに座っても良いとのことだったので、カウンター席に座って注文する。


「イチゴパフェ一つお願いします。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」


可愛らしい女性が、ピンク色のひらひらエプロンを着て笑顔で接客してくれる姿にほっこりと和む心地がした。


さて、待っている間にアイテムとステータスの確認をしようと、ステータス画面を開けば、気づかないうちにスキルが増えていたらしい。

「サーチ」の説明欄を見れば中々に使い勝手のよさそうなスキルである。他にも「ストーンシールド」が増えていたがこれはよくある防御技なのでありがたい。


【サーチ】:近くの敵やアイテムの名前や詳細を確認することができる。


調合素材に必要な素材が効率的に採取しやすくなるんじゃないか?とまたテンションが上がった。なんともいい出だしである。

現状、モンスター討伐も特に問題なくソロでやっていけているし、何よりも新しいゲームは楽しい。


さて、次はスキル振りを、と考えて余っているスキルポイントを確認すれば、「8」と表示されていた。

レベル1から3までは3ポイントずつ増えていたスキルポイントが急に「8」となっており、首を傾げる。

今までに振り分けたポイントは初期値10ポイントと、Lv.3に上がったときに6ポイントを上げた。つまり初期値以外は3ポイントずつ増えていたスキルポイントが2ポイント多く振り分けられている。

Lv.5から5ポイント振り分けられるのか、もしくは何かのきっかけでボーナスポイントが入ったのか。どんな理屈で増えたのかは今後観察していけば見えてくるだとうと思い、いつも通りNIT、AGI、LUKへと多めに振り分けた。


==

Lv.5

HP:139   MP:148  SP:0

STR:16   ATK:14  VIT:18 DEF:22

INT:44(+7) RES:35  DEX:30(+1)

AGI:27(+7) LUK:16(+9)

==


「ドロップアイテムはー…、」


先ほど素材買取所で確認したが、特に珍しそうなものは見当たらない。

しいて言えば、バウルの爪だろうか?

調合だけでなく武器の素材にも適しているらしい。

買取所でもこれが一番高価だったので、数個手元に残すことにしたのだ。


「おまたせいたしましたー。”ごほうびいちごパフェ”でございます。こちらのパフェは、下の層にもイチゴソース、イチゴジェラート、イチゴピューレなどを使い、どこを食べてもイチゴ尽くしな一品です!どうぞご堪能ください。」


出てきたパフェは、たっぷりのいちごがパフェグラスからこぼれ落ちそうなほど乗っていて、その下にもいちご尽くしのソースやジェラート、ピューレが使われているとはまさにご褒美!!

さて、どこから食べようかな、とウキウキで考えていると、後ろから声がかかる。


「そこの魔法使いのお姉さんー!」


「…」


「カウンターで大きなパフェを食べようとしている、そこのお姉さんー。」


自分の他にもいたのか、と当たりを見回してもカウンターには自分だけ。目の前のご褒美パフェを今から堪能しようというところだったのに、と少しだけ機嫌が悪くなる。しかし、今もまだこちらへと話しかけている女性の声に、むっすりとした表情を向けた。


そこにいたのは、どこかで見かけたような三人組である。気のせいだったろうか?と記憶を探す。


「お姉さん、さっきソロでバウルの群れ倒してたでしょ。強いね。」


にこにこと短髪でボーイッシュな女の子が話しかけてくる。彼女の装備は、中近距離といったところだろうか。近くに槍を置いている所を見るに、槍使いらしい。近くにいるのは筋肉質の大柄な男性。こちらは近距離か、盾職だろうか。最後の一人は小柄な男の子。おそらく魔法職だろう。似た装備を付けている。


「…。」


「お姉さん、ソロであそこまで戦えるとか、かっこいいね!しかもソロ向きじゃない魔法職!」


別に魔法職がソロに向かないわけではない、回避のタイミングと回復のタイミングさえ見極められれば、攻撃力は高い職業だから。

チームに入れば、支援や回復に回されがちで攻撃に回りずらいことがnullの思う欠点であった。


「知らないスキルも使ってた…」


意外と低めの声質の彼は、持っていないスキルに興味があるらしい。勿論教えるつもりはないが、引き出せる情報があるならば引き出したいところではある。が、その前にやはりパフェが最優先では?と思考をリセットして、溶ける前にパフェをいただくことにした。


もったいないし。


もぐもぐもぐもぐ…、美味しい。


ひたすらパフェを食べている横で、いつの間にか先ほどの三人がカウンターの隣に並んでいる。


戦闘の感想戦でもしているのかと思いきや、どうやら話のネタは武器の話らしい。あの武器がかっこいいとか、こういう武器が欲しいとか、そういった話を延々としている。ただ、一名を除いて…。


魔法職の彼はこちらに興味があるらしい。強い視線をひしひしと感じる。

彼らは、共通の知り合いなのか、どうやら戦闘より鍛冶に興味があり、その職を有しているようだ。全員が、かは知らないが。寧ろ、これで全員だという保証もないか。


()()さん、回避魔法なんですか?」


低めの声の彼がこちらへ話しかけてくる。その隣に座っている大柄な男性は渋めの声で「()()、じゃねぇか?」とnullの名前談義へと移り変わる。正直どちらでもいいし、面倒だから話しかけないでいただきたい。


()()さん、の方が響きがかわいいんじゃない?」


短髪の女の子が溌剌とした声でそう言うと、うんうん、と隣の彼は頷いた。なんでもいいのだが、何故話かけてくるのだろうか。とはいえ、そういえば()()()()まだプレイヤーに試していなかったな、と思いながら彼らの話に耳を傾ける。


「ナルさん、回避なら、AGI装備必要ですよね。」


ちらりと目を向ければ、輝いた瞳がこちらを向いていた。「あぁ、彼も鍛冶側の人間なんだ」と思うと、これはこれで良い縁なのかもしれないと思い始めてきた。


現状チームを組むつもりはないが、情報共有くらいはいいのかもしれないと思い始める。調合の材料に関する話も聞ける可能性はある。


「まぁ…」


一言返せば、大盛り上がり。その場で自己紹介が始まった。


「私の名前はレーネ!よろしくね、ナルさん!」

「僕は、エト。魔法装備とか道具とか付与とかが好き。」

「俺は、バルトだ。悪いなうちの二人があんたのこと気に入っちまったようだな。」


やれやれといった感情を見せるバルトは二人の手綱を握る苦労人のようだ。レーネはかっこいい武器全般が好きなようで、エトは魔法使い用の武具や付与したアクセサリーが好きらしい。付与するのも、したものを見るのも好きというのだからよっぽどだろう。


「私は、ナルでもヌルでも、なんでもいいよ。」


「じゃあ、ナルで!!」


レーネは、敬称すら省いて話すことに決めたらしい。とても楽しそうな顔で、バルトへかっこいい武器の話を振り始める。自由人だ。


「ナル、僕。君の装備が作りたい。」


「いや、そんなお金ない。」


即答で断れば、残念そうな顔。お互いゲームを始めて一日も経っていないというのに気が早すぎる。まぁ、いつかは頼んでもいいとは思うが、如何せん金欠状態の今は夢のまた夢だろう。金策をしていかねばはなしにならない。


「俺らは店もって、作った防具売って、材料もらって、もっといい武具作って、つー最高の生活を送りたいわけよ。だから、強いプレイヤーとのコネが欲しい。そこんとこ、お前さんは、かなりいい線行ってると思うんだが。実際どうなんだ?」


にやりと笑うバルトは本音を先にぶちまけるタイプらしい。非常にやりやすい。


「ふーん、それじゃ、君たちがまずしなければいけないことは2つだね」


「二つ?」とレーネとバルトの声が重なる。エトは何となく理解しているのか、「ふむ」と考え、それを口に出す。


「レベル上げと、ダンジョン攻略、かな」


「正解」


「なんで?」とレーネは、素直に疑問を投げかける。鍛冶に重きを置くのに、何故前線に出なければいけないのか。と考えるのは当然だ。しかし、特にこのゲームでは序盤こそ頑張らなければならないだろう。


「理由は三つ。一つ目は、レベルに応じてスキルが解放されるから、簡易防具を作るよりも経験値幅が大きく、素材も手に入りやすいこと。

二つ目は、ダンジョンを攻略することで必要な武具が手に入る可能性が高いから。序盤であれば特に。鍛冶をするにしてもそれ用の装備が必要になる。

現状、サブジョブとなる職業の武器は自身で調達しなければいけないこと。初期装備がの質があまり高くないこと。

三つ目が、最前線で戦うことで上位のプレイヤーの覚えがよくなり、情報が回りやすくなることと、前線に出ていない職人より、出ている職人の方が、いい素材を取り扱えることを上位プレイヤーは理解していること。

これらを踏まえて、このゲームの階層ダンジョンを素早くクリアして、上位プレイヤーの拠点となる階層へついていく必要が出てくる。」


言い切れば、二人は納得したように頷き、そしてかなり難しそうな表情を見せる。確かに、先ほどのバルトの夢を実現させるには、中々難易度が高いだろう。だが、それはいち早く叶えるならば、である。


「直ぐでなくてもいいなら、広告塔でも見つけて、宣伝はそこに任せて、とりあえず下位層で新人相手に武具を売る方が難易度は低いかもしれないけど。売る武具も、街によってはNPCのお店の方が良いものが低価格で売っている可能性も高いから、ここも難しくはあるけど。」


妥協案を出せば、レーネとバルドの表情が明るくなるが、逆にエトの表情が険しくなる。どうやら彼は、このパーティーの頭らしい。楽観的な二人を理性的に押しとどめるのが彼の主な役割なのかもしれない。


「それは、難しいでしょう。」


やはり、彼はよくわかっている。


「そうだね。第一階層である、ここには、少なくても大きな街が3つはある。おそらくもう少しあるかな。その中から一つ拠点を絞っても、相当有名にならなければ客足はすぐに途絶えてしまう」


「はい、僕もそう思います。」


エトとnullの話を聞いて、また険しい表情になった二人は、お互い顔を見合わせると、こちらへ問いかける。


「じゃあ、どうすればいいんだよ?」


「だから、最初にナルが言った通り、レベルを上げてダンジョンを攻略するしかないよ。」


エトが困った様にそういえば、レーネもバルトも渋い顔をする。


実力さえあれば、上位プレイヤー達のチームに入れてもらうこともできるだろう。だが、そのコネをどうするか。と、もう一つ。彼らはモンスター討伐よりも鍛冶に重きを置くほどに熱を入れている。そんな彼らが、鍛冶職を一旦置いておいて、戦闘に力を注ぐことができるか、という大きな問題点がある。そして、彼らはすでにその問題に答えを出しているわけだ。


「無理!!無理無理無理無理!!!!」


「だろうね。」


レーネの拒絶に、エトは小さく頷いた。バルトも苦笑しながらその光景を見ている当たり、全員一致の見解のようだ。


「そこで一案。」


まだ食べきれないパフェを突きながら、彼らに提示する。彼らは妙案を求めてnullの話に食いつく。そんな彼らの心境の変化を心の中で小さく笑う。”食いついた”と。


「案って!?」


待ちきれなくなったレーネは。バルトの向こう側から身を乗り出して聞いてくる。それをちらりと確認して、静かに話し始めた。


「まず、さっきも言った通り、広告塔を探すこと。これが成功すれば、鍛冶だけしてこのゲームが楽しめるかも。」


甘い言葉に、レーネとバルトが、ゴクリとつばを飲み込んだ。エトはじっとこちらを伺っている。彼が崩れればこのパーティーは終わりだと彼自身がきちんと理解しているらしい。非常に良いパーティーだ。


「もう一つは、この階層で早めにいい拠点を築くこと。

後々別の拠点に移動することも視野に入れた場所にすること。

立地としては、上位プレイヤーが戻ってきやすい立地を探すこと。

この階層の中で一番プレイヤーが集まるだろう場所に建てること。これが重要。」


「成程、上階層から戻りやすい立地なら、第一階層に店を持っても問題ないわけだ。

そして、おそらくこの階層にはこの街よりも栄えた中央都市があるはず。

そこならば分岐したプレイヤー達も集う。悪くないかも。」


俯きながら考えていたエトが顔を上げたことでレーネとバルトは安心したようで、あからさまに表情が明るくなった。

さらに一番遠い位置にいたレーネが、バルドの目の前を通してnullに指をさす。

バルドは鬱陶しそうにそれを払いながら「人を指で刺すな」と小言を言えば、レーネは椅子から降りてnullの後ろに回ってまた指さす。


「ここにいるじゃない、もう決定でしょ!」


「…モグモグ」


既に四分の一ほどしか残っていないパフェを、ちびちびと食べながらその言葉をスルーする。


「ねえ!なってよ。私たちの広告塔に。」


「モグモグ…ゴックン。

良いけど、私がどれだけ強くなれるかはわからないし、期待に応えられるほど強くもない。

ソロで魔法使いしていてそんなにすぐ上位に組み込めるかなんて、思ってもない。

…それでも私に賭ける?

私も馬鹿じゃないし、タダで引き受けるつもりはないけど、それほどを私に賭けられる?」


じっとレーネを見つめれば、ぐっと眉間に力が入る。俯きそうになる顔をぐっと堪えていることは見ればすぐに分かった。

流石に今決める必要はないとnullも思う。広告塔になりえる人物を探す時間はまだまだあるのだから。早計過ぎるとも思う。それを言葉にしようと口を開いたときに、エトに遮られた。


「パートナー提携しよう。

僕らは君に、君の求める者を造る。

君は僕たちの鍛冶人生が豊かになるよう支援してほしい。

僕はナルの可能性に信じたい。」


「しゃあねえなー。こいつらがここまで押すんだ。俺も乗った。」


にやりと笑うバルトに、自信が回復したレーネ、そして、真っ直ぐにこちらを見つめるエト。思っていた以上の結果に、戸惑いはあるが、決心するしかないだろう。

そもそも吹っ掛けたのはこちらである。彼らがどんな鍛冶職人になるのか分からないし、彼らが裏切らないとも言い切れない現状で、この提案を引き受けるのはこちらにとってもある程度のリスクを伴う。それを飲んだ上で、エトへ手を伸ばす。


「よろしく」


そう言えば、意味をくみ取ってくれたのだろう、三人が強くnullの手を包む。


暖かい。ゲーム世界だというのに、重く熱いものを背負ってしまったようだ。良きパトロンになれるよう、もっと精進しなければならないなとゲーム開始日に強く思いなおすこととなった。


「「「よろしく(ね)(な)!!!」」」

おまけ

チーム名:「トライアンヴィル(Tri-Anvil)」


〇レーネ

 茶色い短髪の元気な女の子。元気でボーイッシュ。

 チームのムードメーカー。

 カッコイイ武具を作りたい。強い武具を作りたい。

 小物を作るのが得意。

 戦闘では中近距離の槍使い。


〇エト

 小柄で紺色の髪。頭がいいが、興味を持っていること以外には基本無頓着。

 頭が良いため必然的にチームの頭脳的役割を担っている。

 基本静かだけど、好きなことになると圧がすごいことがある。

 魔法に関係する防具やアクセサリーが好き。

 戦闘では遠距離の魔法使い。


〇バルト

 黒い短髪で大柄、筋肉質な男性。

 チームのリーダー的存在。

 大雑把な性格だが、兄貴的な性格で、全員を引っ張っていく力を持っている。

 鍛冶の腕は一流になる予定!!と言い張る。

 戦闘では、近距離のアックス使い。


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