VORTEX ARENA - Chain Reaction
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NE:NEと相田が決着をつける数分前――。
ビルの上階層では、SHUGOたちがC.Cの待つエリアへの突入を目前にしていた。
「―――作戦は以上だ。いけるか?」
SHUGOの問いに、全員が小さく頷く。
それを確認したSHUGOは「よし」と小さく呟き、敵のいる方へと視線を向けた。
ちょうど入ってきたNE:NEからの無線にも、開始の時を告げれば、SHUGOは大きく息を吸いこみ、心の中で静かにカウントを始める。
「それじゃあ、手筈通りに行こう。誰が倒れても、作戦の遂行が最優先だ」
再び全員が頷く。SHUGOは小さく目を細め、そして力強く告げた。
「GO!」
合図とともに、ハジメとSORAが敵陣へ向けてグレネード、煙幕、スパークを次々と投げ込む。初動で敵を怯ませるための、容赦ない一斉攻撃だった。
C.Cの面々も、まさか初手から挨拶なしの全面攻撃が来るとは思っていなかった。しかし、煙幕に視界を奪われつつも、C.Cは即座に反応し、ダメージを最小限に抑えようと身を捌いた。
「おいこら!卑怯じゃねえか!!」
思わず怒声を上げたのは龍鬼。その声に反応したユーリクが、堂々と言い返す。
「卑怯なわけあるか!それなら、高所を取ってたそっちのほうがよっぽど卑怯だろ!」
SHUGOはそのやり取りに思わず苦笑するが、口を挟むことはなかった。真剣に敵だけを見つめる。
「高所は戦略だろうが!」
「なら、これも作戦のうちだよね~♪」
SORAが笑いながら投げ込んだのは、大型の爆弾だった。グレネードとは比べものにならないほどの威力を持つその一撃。もし本当に使われれば、この場は跡形もなく吹き飛ぶだろう。
C.Cの面々は「ありえない」と頭では理解していても、相手はあのZERO:NE。常識では測れない存在であることに思い至り、ほんの一瞬、判断が鈍った。
「やめろ! バカか!!」
想定外の危険物を目の前に、C.Cは慌てて対応に動く。その一瞬の隙を、ユーリクが見逃さず横から撃ち込んだ。
初動、煙幕が上がると同時に飛び込んでいたユーリクは、口論しながらも自らの役割である揺動と攻撃を確実に果たしていた。
すでにSORAが視線を引きつけていた以上、ユーリクは高火力で一枚抜いておきたいところだ。しかし敵も手練れ、急所をギリギリで避け、サポーターがすぐに回復へと回る。
「やっぱこれ、起動させちゃおっかな〜?」
SORAのにっこり笑顔に、C.Cの注目が一斉に集まる。
一人が慌ててインベントリから水を取り出し、爆弾へかけて起動を阻止する。その瞬間、待っていたSHUGOが飛び出し、爆弾処理に集中していた呉羽を狙撃し、弾が彼を直撃した。
「ぐっ……そぉ!!!」
「バカっ!!」
大ダメージを受けた呉羽は、間一髪のところで時雨に首根っこをつかまれ、後方へと投げ飛ばされる。そして、残った時雨がSHUGOに反撃するが、彼のシールドが弾を防いだ。
そこへ逆サイドから姿を現したハジメが、時雨の頭部を正確に撃ち抜くと、彼の身体は淡い光となって消えていった。
「うっそだよ〜ん♪」
SORAの明るい声とともに、1人撃破され、C.Cの空気が一変する。
「で、やられたの、一人だけだと思った?」
さらにSORAが挑発を重ねると、龍鬼の表情が凍る。いつの間にか、潜伏していた我狼のステータス表示が消えていることに気づいたのだ。
「……チッ! いつの間に……!」
「余裕ぶっこいてっから、そうなんだよ!!」
ざまあみろ、と言わんばかりにユーリクが叫ぶと、即座に彼へと複数の弾丸が飛んでくる。
「黙れ、小僧が!!」
その銃声を好機と見たSHUGOは、スキルを使用して反対側から敵陣へと突撃。
それを確認したSORAは、すかさずSHUGOにステルス スキルを使用し、敵に気づかれぬまま至近距離まで接近させた。
続いてハジメがグレネードを投擲。
爆発により敵は散開し、空いた隙間からユーリクが正確に弾を撃ち込む。
目立つユーリクに敵の攻撃が集中するが、彼は構わず引き金を引き続けた。
その身体には何発もの弾が命中するも、その半分以上はハジメのシールドスキルによって無効化され、受けたダメージもハナの回復により瞬く間に回復していく。
その間に、SHUGOが側面から回り込み、高火力の爆裂弾を叩き込み敵のHPを大きく削る。
隊列を崩されたC.Cは、次第に連携が取れなくなり、個々の戦闘へと引きずり込まれていく。
どれほど手練れのチームであろうと、遠距離特化C.Cが正面突破は分が悪い。隊列を乱して個人戦に持ち込めば、即席チームにも十分勝ち目はある。
だが、そう簡単にいかないからこそ、彼らは手練れと呼ばれている。
「お前ら、しっかりしやがれ!! いつものフォーメーションはどおおおしたあああ!!!」
龍鬼の怒号が響き渡る。
その声にハッとしたC.Cの面々は、煙幕やスキルを駆使して距離を取りながら、連携可能なポジションへと素早く移動を開始した。
連携の再構築に成功した仲間たちを確認し、龍鬼は満足げに頷くと、目の前のSHUGOを鋭く睨んだ。
「そう簡単にはいかねぇぞ?」
「……これは、困ったな」
苦笑を浮かべるSHUGOだったが、内心は困ったどころの話ではなかった。
奇襲からの一斉攻撃で敵を混乱させ、数を削って優勢を取る。それが彼のシンプルかつ強い、最適な作戦だった。
だが、龍鬼の一喝によりC.Cは瞬く間に隊列を立て直し、狙っていた混乱状態は一気に霧散した。
ここまで来ては、次の手を打たねばならない。
SHUGOは右手を挙げ、仲間へ合図を送る。
当然、龍鬼もそれを見逃さず、鋭い視線でゼロワンの動きを観察する。
そして動いたのはSORAだった。彼女は手持ちから新たなアイテムを取り出し、それをユーリクへと投げ渡す。ユーリクは軽やかにそれをキャッチすると、すぐさま頭上高く掲げてスイッチを起動する。
「おらぁ! 止めたきゃ、全力で奪いに来いよぉ!!」
「リモコン……?」
「龍鬼さん、俺たちがノープランでここに来たと思いますか?」
戸惑うC.Cに向けて言葉を投げたのは、ニヤリと口角を上げたSHUGOだった。
嫌な予感が脳裏をよぎった龍鬼は、即座にユーリクへスコープを合わせると、尋常ではない速さでリモコンめがけて引き金を引く。
――バシュン!
しかし、それはハジメのサポートスキルのシールドによりあっさりと防がれた。ユーリクは守られたことを確認すると、にやりと笑う。
「届かねぇっすよ、そんな位置からじゃ」
「てめぇ、小僧ォォォ!!!」
怒りに血走った眼で睨みつける龍鬼。その刹那、別方向から複数の鈍い銃声が鳴り響く。
――バシュン! バシュン! バシュン!
一瞬のうちに、一人のHPが削り切られ、淡い光を放ちながら消えていった。
「ハジメ!!」
驚愕と困惑の入り混じった声で叫んだのはユーリクだった。
彼にシールドを張っていたハジメは、最後方に位置していたはず。だが、それをあっさりと抜かれてしまった。
「甘いでしょ。俺らを何だと思ってんのかな」
静かな怒りを湛えた声と共に現れたのは騎馬。
冷静な判断のもと、最奥にいたハジメを正確に狙い撃ちしたC.Cのスナイパーであり、アタッカーの一人だ。
彼の一撃により、戦場の流れはC.Cへと傾き始める。
「即席チームだからって油断してたわけじゃねぇが……二人も持っていかれるとはな。恐れ入るよ。だが、ここまでだ」
そう言って、龍鬼は鋭い眼光をSHUGOに向ける。
覚悟を促すその視線に、SHUGOも一歩も引かず、むしろ笑みを浮かべて返した。
「別に褒めてもらわなくて結構ですよ、龍鬼さん。俺らと一緒に沈んでください。決勝は下にいるエースに任せてるんで」
ギラリと光るSHUGOの瞳に、龍鬼の表情がわずかに引きつる。だが、それでも余裕を崩さない龍鬼の態度に、SHUGOは小さな違和感を覚えた。
この場の均衡に変化はない……それなのに、何かがおかしい。そう思った瞬間、SORAの声が響く。
「しゅーくん! 下に一人、向かってる人がいる!!」
おそらく、探知スキルを使ったのだろう。SORAがその異変の正体をいち早く察知した。
「バレたか……さすが、SORAちゃん」
ニヤリと笑う龍鬼の顔には、大きな余裕が浮かんでいた。
SHUGOたちはC.Cに突撃する前、ビルの二階に複数の爆弾を設置し、それらをリモートで起爆できるようにしてから、この場所へと向かっていた。
爆発には猶予があり、起動から10分後に自動で起動する仕様となっている。
解除するには、リモコンで停止させるか、爆弾を水で濡らして湿気らせるか、設置場所から取り除くしかない。だが、配線を切らなければ取り外しはできず、多くのプレイヤーはその対策として、インベントリに水を常備している。
それだけ、警戒すべき規模の爆発ということでもある。
「……今からじゃ、間に合わないな?」
挑発するように問いかける龍鬼に、SHUGOは頷きながら静かに尋ねる。
「気づかなかったな。それで――誰を向かわせたんです?」
「さあな?」
涼しげに返す龍鬼に、SHUGOは肩をすくめつつも、淡々と言い放つ。
「まぁ、いいですよ。どのみち、一人は確定で持っていけるってことですから」
その言葉に、龍鬼の表情が曇った。ちょうどその瞬間、ビルの下階から轟音が響き渡る。
――ドゴオオオオン!!
爆音と共にビル全体が大きく揺れ、天井や壁から砂や破片がぱらぱらと降ってくる。軋む鉄骨の音、地響き、踏ん張る足音……全員が咄嗟にバランスを取った。
「お前ら、何をしたッ!!」
顔を歪めて怒声を上げたのは騎馬だった。その怒鳴り声に対して、SORAが楽しげな声で返す。
「そりゃ~、解除されてもいいように、ちゃんと仕掛けも用意しておくのが、セオリーでしょ~?」
その言葉に視線が集まる中、ユーリクが手にしていたリモコンを無造作に放り投げた。
「別にもういらねぇから、やるよ」
そう言ってにやりと笑うユーリクも、C.Cに挑発的な視線を向ける。
「てめぇら……おちょくってんのか!!」
怒りを露わにする騎馬に、SORAが悪戯っぽく返す。
「え~? そんなことしてませんよぉ? 騎馬さーん、私たち超マジメなんですからぁ♪ 真面目だから、こういうのも手段の一つなんですよね。てことで、はいパーース、ユーリクくーん」
そう言ってSORAが投げたのは、またしても――新たな爆弾だった。
「お前、いくつ持ってんだよ!!!!!」
高額な爆弾を軽々とユーリクへ投げたSORAに、ユーリクは目を丸くして首を傾げる。明らかに、彼の知らない作戦が、今ここで始まろうとしていた。
「……これは?」
「ん~、見ての通り?」
「お前、まさか――!」
その通りと言わんばかりに、SORAはVサインを掲げると一目散にユーリクから距離を取る。その後を追うように、SHUGOも素早く階段を駆け下りていく。
広場に残されたのは、ユーリクとハナの二人。そして彼の手元には、爆発物。
ユーリクは苦い表情で、それと階段とを交互に見た。
(捨てれば、C.Cが解放されて下にいるリーダーたちが危険に晒される。けど――起動すれば俺も吹っ飛ぶ。くそっ……!!)
「ハナ!!逃げろ!!」
ユーリクは叫びながら、爆弾を手にそのままC.Cの陣へ突っ込んだ。
突然の特攻に、C.Cは慌てて銃撃を開始する。銃声がユーリクを襲い、それでも止まらぬ足取りに、彼らの顔が引きつった。
そのとき、爆弾が起動した。
シューーッ……という音とともに、爆弾から白煙が噴き出し、視界が一気に真っ白に染まっていく。
「なっ……煙幕!?」
状況が掴めず戸惑うC.Cに向けて、次の瞬間、グレネードが煙の中を裂いて飛来する。
「ユーリク、下がって!!」
ハナの声に、咄嗟に反応して飛び退いたユーリク。その直後、目の前で爆風が炸裂する。
――ドカーーーーン!!!
轟音と衝撃。だが、直撃を免れたユーリクは無傷で踏みとどまり、思わず周囲を確認する。
すると、自身の周囲には防御シールドが展開されており、さらに回復まで丁寧に施されている所を見るに、仲間にはめられたのだと知る。
(……はめられた!?)
「おまえら……!」
怒りを抑えきれず、拳を震わせながら抗議しようと振り返ったその瞬間。
――パンッ!
乾いた銃声。視線を向けた先、ハナの頭が弾け飛び、彼女は仰向けに倒れた。
「……ハナ!!」
弾道の先を見れば、スナイパーライフルを構えた騎馬が、血まみれの姿でニヤリと笑っていた。
「……言ったろ?甘ぇってよ!!」
その顔には怒りと、同時に狩りを愉しむ獣のような狂気が宿っていた。
その表情を見た瞬間、ユーリクの中で何かが弾け、即座に反撃に出ようと一歩を踏み込む。だが、それを止めたのはSHUGOの怒声だった。
「待て、ユーリク!!挑発に乗るな!!!」
「……ッく!!」
歯噛みしながらも、なんとかその場に踏みとどまる。
怒りに震える拳を握りしめ、騎馬へ向ける眼光だけは、獣のように鋭く光っていた。
「おい!!!作戦は!!」
怒声を上げるユーリクに、SHUGOは即座に応える。
「ある。だから、今は冷静になれ。 言ったろ?お前が作戦の鍵だって」
「……分かってる。だが、こいつらを倒したら、次は、必ずお前をやる!!」
「……ああ。敵を片付けてからなら、いつでも相手になってやるよ」
苦笑しながらも、その熱に満ちた宣言に、SHUGOは畏怖と敬意を覚えが、今この瞬間もひとり下で戦い続ける仲間を思い出し、小さく首を振る。
(やるべきことは、こっちだ)
残る敵は二人。C.Cの龍鬼と騎馬。対するこちらは三人。数の上では有利だ。
正面から一人ずつ潰していけば勝てる。だが、油断は禁物だ。
相手はC.C。いくら即席チームが健闘していても、簡単に倒せる連中じゃない。
(仮に一人でも残れば、タイマンに持ち込める……。その可能性を捨てないためにも、まずは――)
狙うは騎馬。
ユーリクのヘイトを最も集めており、かつ前衛火力職。彼を先に倒せば、残るスナイパー龍鬼は距離を詰めれば制圧できる。
狙撃の脅威はあれど、1vs1に持ち込めれば勝率は高い。
「SORA、プランT!! 二人とも、俺に続け!!」
SHUGOの号令と共に、SORAが笑顔でアイテムを取り出し、グレネードを投擲する。
炸裂音と共に爆煙が巻き上がるが、C.Cの二人が即座に反応した。だが、煙に包まれる中、互いの動きが見えず、一瞬だけ連携が崩れた。
(今だ――!)
騎馬と龍鬼が分断された瞬間、SHUGOは前線へ突撃する。
その姿を見た騎馬が、ギリギリの判断で援護に走ろうとするが、敵はタンク職のSHUGO。中途半端な攻撃では止められない。
そして龍鬼もまた、即座にスコープを覗き込み、冷静に判断を下す。
(……狙うならSORAだな。連携されるのが一番厄介だ)
「……悪く思うなよ、SORAちゃん」
――バシュン!!
放たれた弾丸がSORAの肩をかすめる。その瞬間、SORAの身体が仰け反った。
一方で、SHUGOは目の前の騎馬へと全力で駆けると、使える技すべてを駆使して特攻をしかける。
続いてやってきたユーリクもまた騎馬へと攻撃を行う。
騎馬は二人と対峙しながら、視界の端で龍鬼の行動を確認した騎馬は、口角を大きく吊り上げる。
自分の役目は、逃げではない。
目の前の二人にダメージを与え、出来れば二人をもっていく。己がどうなろうとも、道連れにできる人数が多いほど、リーダーが有利になる。
今大会で最も楽し気に、目の前の二人に対して高火力の弾を乱射する騎馬。
(近距離にエイムなんざいらねぇ……必要なのは火力と、弾数だ!!)
「らああああああああッ!!」
――バババババババッ!!
猛烈な連射音。銃口から迸る火線が空気を裂き、怒号と爆音がその場を包み込む。
そして、次の瞬間、……静寂。
地に倒れているのは、騎馬。そして、SORAとユーリクだ。
「ッ……!」
SHUGOが前線に立ち、深く息を吐いた。スキルのエフェクトが微かに揺れている。
(……こっちは三人いた。けど、持ってかれたか)
そして、静かに最後の敵である、龍鬼へと指を向ける。
「……あと一人」
静かに言い放ったSHUGOの言葉に、スコープを覗いていた龍鬼が応じた。
「おいおい、マジかよ……。即席チームに、CRIMSON CRESTがやられる? 笑えねぇ冗談だな……」
血走った目の龍鬼からは、いつもの笑みが消えていた。その鋭い眼光がSHUGOを正確に捉える。
SHUGOもまた、騎馬の猛攻で全身に深い傷を負っていた。だが、展開していたタンクスキルにより、致命傷だけは避けたギリギリの状態だった。
互いに、呼吸を合わせて牽制し合う。一歩も引かず、にらみ合う静寂の中、SHUGOが動いた。
深く息を整え、横目でHPゲージを確認すると、全身を奮い立たせて走り出す。
(相手はスナイパー……なら、距離を詰めるしかない)
疲労で思考すら鈍る中、それでも頭をフル回転させて最善手を探す。
脳が焼けるような感覚の中で、SHUGOは「できること」だけを選び抜いた。
まず、正面にシールドを展開し、一直線に敵へと詰める。そして、龍鬼がこちらに狙いを定め、引き金を引こうとした瞬間、SHUGOは、進路を鋭く変えて視線を切った。
(スナイパーの照準なんて、読めてる)
彼は重装ではないタンク。仲間を守るため、機動力を優先したビルドのSHUGOは、俊敏さでスナイパーを上回る。ただし、その分ガード性能はスキル依存となる為、防御のタイミングを誤れば、一瞬で撃ち抜かれる。
それを知っていても、SHUGOは踏み込んだ。
龍鬼の照準から外れた瞬間、彼は大きく後退しようとした。だが、そこに再びSHUGOが飛び込む。そのまま銃撃せず、体当たりで龍鬼を押し飛ばした。
「……っ!」
龍鬼が本能でまずいと悟る。咄嗟にスナイパーライフルを手放し、腰のホルスターからピストルを抜き、至近距離から発砲する。
弾丸がSHUGOの肩口を貫き、彼の顔が苦悶に歪む。だが、怯まない。
彼の視線が、一瞬逸れて、すぐに戻ってくる。
自身から外された視線は、こちらへ戻ると同時にその瞳に宿る強い意志を感じた。
(……っ、ヤバい!)
直感で察知した龍鬼が、SHUGOを突き返す。だが、SHUGOの身体は微動だにせず、逆に体重を預けるように押し倒してくる。
(何かある――!?)
龍鬼は反射的に視線を背後に走らせた。そこにあったのは――、いつの間にか床に仕掛けられた黒い起爆装置。小さな赤いランプが、規則的に点滅している。
(まさか――地雷!?)
「おい! お前、自爆する気か!!?」
狼狽する龍鬼に、SHUGOが低くつぶやく。
「……SORAに感謝ですね」
それは、先ほどユーリクが囮となり、煙幕を張った直後、密かにSORAが戻ってきて設置していた作戦の切り札。
本来は、C.Cを倒した後にVALGARDと戦うために温存していた最後の一手だった。だが今、SHUGOはこの場面で使い道を変えた。
(これが、最も確実な勝利への道だ。)
視界の端で赤く点滅するその光を見た瞬間、もう後戻りはできなかった。
「お前……ふざけんなッ!!」
龍鬼が暴れる。だが、SHUGOは全身で彼を押さえ込み、倒れ込ませる。
そして、地雷が視界いっぱいに迫るその瞬間――SHUGOは小さく、誰にも届かぬほどの声でつぶやいた。
「……すまん、寧々……」
――残り4人(3チーム)
【シード】ZERO:NE
①タンク ・ SHUGO
②アタッカー・ NE:NE
【シード】CRIMSON CREST
①アタッカー・龍鬼
【シード】VALGARD
①タンク ・相田
次回:Not Mine to Win




