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Extended Universe   作者: ぽこ
Vortex Conflict

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VORTEX ARENA - VALGARD - yama-san -2

毎週、月曜日と金曜日に更新中!


「そんなことより…今ので来たぞ。」


リーダーの言葉に、俺も目を向ける。

そこには、見覚えのある面々がゆっくりとこちらへ近づいてきていた。


先頭にはタンクの男。そして、その隣には本来スナイパーライフルを担いでいるはずの女性。その後ろには、サポーターの女性が一人。


どうやら、あちらにも何かあったらしい。人数が足りていないように見えるが、潜伏中なのか、それとも、すでに退場しているのか。もし潜んでいるとすれば、できれば高みの見物をしているC.C.の元へ向かってくれていればありがたいのだが。


「やっぱり、まだ生き残ってたね。ゼロワン」


「こんにちはー♪」


にこやかに手を振るNE:NE。その両手には、それぞれ色違いの銃が握られていた。

見た目こそ可愛らしい彼女だが、持っている武器の珍しさと、その扱いがどれ程のものなのかと、つい眉をひそめてしまう。


リーダーは一歩前に出て、面倒くさそうに後ろ手で頭をかいた。


「やっと来たか、ゼロワン。」


「そりゃ、あんな轟音聞いたら、どこにいたって位置ぐらい分かりますって」


爽やかに微笑むSHUGO。その微笑みの奥に常に冷静さが宿っている。だからこそ戦いにくい相手だ。

その隣で、NE:NEはきょろきょろと辺りを見回していた。戦況を探っているのだろう。ふと、首を傾げる仕草が目に入る。


「あれ? イリデセンスはどうしたんですか?」


「さっき倒した。こいつがな。」


リーダーが俺を指さすと、NE:NEは何故か妙に納得したように頷いた。解せないが、まあ…実際に爆破したのは俺だ。否定はできない。


「あ〜、なるほど。山さんか〜」


彼女は苦笑しながら言う。それに対して、俺は一歩前に出て軽く肩をすくめた。


「んー? まあ、作戦勝ちってだけですよ?」


にこりと笑って返すと、NE:NEは煮え切らない表情をしながら、話題を切り替えた。


「で、なんでそこにC.Cがいるんですかね〜? 龍鬼(りゅうき)さん?」


見上げれば、建物の上階層。そこからC.Cが陣取っている様子がうかがえる。そして彼、龍鬼は堂々とこちらに身を乗り出して手を振り、大声で会話を始める。


なんとも緊張感のない絵図らに思わず苦笑が零れた。


「おう、NE:NE! 待ってたぞ〜〜!! ……にしても、なんでお前が最前線なんだ?」


「すみませーん! 色々トラブルがあって、私、今日前衛アタッカーなんです!」


「はぁ?」


誰のものか分からないが、場にいた誰もがそう思ったその声が、妙にはっきり聞こえた。しかし気にも留めずにNE:NEは続ける。


「実は〜、仲間に裏切られちゃいまして〜。三人になっちゃいましたー! なので、ちょっとそこから降りてきてもらえませんか〜?」


「そうかー! 大変だったなー! じゃあ今回は、ウチが勝たせてもらうことになるな!!」


龍鬼の楽しげな声が響き渡る。その能天気さに、こっちが心配になる。

そしてそれに返したのは、ウチのユーリクだった。

彼は血の気が多いのが玉に瑕……いや、猪突猛進すぎるところも難点か。実力だけは折り紙付きだが…。


「何言ってんだ!! 優勝は俺たち、ヴァルガルドに決まってんだろーが!!」


張り合うユーリクの叫びに、思わずため息が出そうになる。

どう見てもこちらはギリギリ。あちらは高所を取り、優位を譲らない。まともにやり合える状況じゃない。


「小僧! よ〜〜く考えてみろ。お前の弾、俺まで届くのか〜? 悔しかったら一発でも当ててみろや!」


両手を広げ、大きな的のようにこちらを挑発する龍鬼。

ユーリクは怒りに任せて連射するが、近距離仕様の彼の銃では届くはずもない。


「がははっ!! そんなんじゃ当たらねぇぞ!」


高らかに笑う龍鬼に、ユーリクは地団駄を踏みながら吠える。まさに、負け犬だ。

その様子を見ていたNE:NEが、さりげなく武器を変えるのが視界の端に映った。龍鬼は、完全にユーリクに気を取られている。


NE:NEは手際よくスナイパーライフルを構えると、カシャリと狙いを定め――パシュン。

乾いた小さな発砲音が鳴った瞬間、龍鬼の右手がびくりと揺れた。


「うおおっ!? おいバカッ! NE:NE!! 痛てぇじゃねえか!!」


「当たりましたー♪」


呑気な声で武器を元に戻すNE:NEは、再び双銃を両手に握りながら、こちらへと視線を向けてきた。

ユーリクが「よっしゃあ! よくやった!!」と喜ぶ声もそこそこに、彼女が近づいてくるのが見えたので、俺はユーリクの頭を小突いて黙らせた。


「相田さん、ちょっとこれ……厳しくないです?」


にこりと笑いながら、NE:NEはC.Cが陣取る建物を指さす。

困ったような口調だが、視線は鋭い。リーダーは少しも動じず、静かに答える。


「致し方ない。……だが、戦略はこいつに任せている。どうにかするだろう」


そう言い切ったリーダーに、俺はただ苦笑するしかなかった。あまりにも酷い丸投げだ。

超遠距離攻撃を最も得意とするC.C高所を取られた状況で、目の前には、たとえ三人とはいえ一筋縄ではいかないゼロワン。


先ほどのイリデセンスも厄介だったが、それ以上に彼らのトリッキーさは、常識的な計算を裏切る何かを持っている。そんな相手とやり合いながら、あのC.Cをどうにかしろというのは……無理難題にもほどがある。


「さすがに、俺でも難しいかな……」


苦笑いとともに漏らすと、NE:NEが一歩前に出た。にこりと柔らかく笑みを浮かべる。


「だそうですよー? 時に、私に妙案があるのですが……聞くだけでも、聞いていただけません?」


聞くか、聞かぬか。逡巡した俺をよそに、リーダーがこちらをちらりと見て、そして大きく頷いた。


「いいだろう。聞くだけならな」


「ありがとうございます! 本当に助かります! もう、めちゃくちゃ困ってたんです!」


NE:NEは勢いよく話し出す。


「案というのはですね。ウチのリーダーとサポーターをお貸ししますので、あそこのC.Cを打ち取ってきてほしいんですよ!」


「……で、君は?」


「私は、ここで残った方のお相手をします。いかがです?」


またしても、にこりと笑ってみせる彼女。その背後では、SHUGOとSORAがぎょっとした表情でNE:NEを見ていた。いや、見ているだけではない。口論が始まる。


「おい、待て待て待て待て! お前、何言ってんだ!?」


「そうだよ、ねねちー!? さすがに無茶じゃない!?」


「大丈夫、大丈夫。私、信じてるから! 二人と彼らでなら、C.Cを倒せるって!」


「そこじゃない! お前が一人で戦うってことだろ!? 勝率下げるような真似するな! 先にC.Cの方へ向かえばいいだけだろう!それなら彼らだって損にはならない」


「ほんっと、ばっかだなーウチのリーダーは。」


NE:NEはため息混じりに首を振ると、指を軽く立てて説明を始めた。


「C.Cが素直にそれを許すわけないでしょ。それに、エンタメ的に面白くないし?」


「は?」


「視聴者が喜ぶのはね、現状圧倒的強者のC.Cに、敵同士だったゼロワンとヴァルガルドが手を組んで挑む姿。そして地上ではゼロワンvsヴァルガルドの激突が展開される。……つまり、両方見せるにはこの形しかないんだよ」


堂々とした態度と、その場を仕切る判断力に、場にいた全員が思わず沈黙する。

彼女の言葉はまさにゼロワンらしかった。その強さと、視聴者を惹きつける華のある振る舞い。冷静な判断と瞬発力。

俺はその恐ろしさを、いや、ゼロワンの本質を思い出していた。


何度も対峙した彼女。その中で、勝率はおそらく負け越している。負けた際の戦略を立てたのが彼女であり、最後に勝ち残るのも彼女だった。

圧倒的な戦闘センス、そして賢さと柔軟性。それがNE:NEの強さだ。


「流石、視聴者人気No.1のゼロワンは、考えることも言うことも違うなー!?」


挑発気味な龍鬼の声が響き、それが場の空気をぐっと締める。この空気を作り出したのは、間違いなく彼女だった。


「リーダー、どうします?」


俺がそっと尋ねると、大きなため息が返ってきた。


「致し方ない。こうなれば…乗るしかないだろう。俺とお前で、彼女の相手をする。」


「了解です。二対一でも厳しいとは思いますが、C.Cを放置するよりはマシですね。」


諦め混じりにそう応じ、俺は彼女の提案を受け入れることにした。そして、C.Cを少しでも早く仕留めてもらえるよう、そちらへ向かう仲間に状況を伝える。


「ユーリク、ハジメ、ハナ。

 知ってはいるだろうが、一応伝えておくよ。

 ゼロワンのSHUGOは、基本はタンカーだがアタッカーとしても優秀だから、前衛は彼とユーリクで行うように。

 SORAはサポーターだが、遠距離火力も持ってる。

 つまり、回復役はハジメとハナにかかってくる。

 ただし、回復だけは味方にしか掛けられない。

 ハジメ、お前はSORAといつでも交代できるよう、戦況を常に把握しておくように。

 もっとも、C.Cがそんな余裕をくれるとは思えないから、状況を自分たちで作るしかないぞ。」


口早に伝えながら、さらに付け加える。


「それから、C.Cは長距離攻撃に特化しているが、近距離も捨ててない。

 詰めれば有利になる、なんて甘くないぞ。

 無理に接近すれば、狙撃で別方向から一網打尽にされかねない。

 一番大事なのは、止まらないことだ。動き続けろ。」


一通り伝え終えた俺は、未だ言い合っているゼロワンに声をかけた。


「決まりましたよ。こちらはユーリク、ハジメ、ハナを出します。リーダーと俺でNE:NEさんのお相手をします。問題ありませんか?」


「構いませんよー! それじゃあ龍鬼さん、当然この提案――飲んでくれますよね?」


「ちっ、仕方ねぇな! お前らがビルに入るまでは撃たねぇでやるよ! ただし、俺らが勝ったら下の連中、撃たせてもらうからな!」


「ありがとうございます、龍鬼さん!」


にこりと微笑み、丁寧に頭を下げる彼女の表情は、どこか不自然に口角が上がっていた。まるで仕掛けた罠に相手がハマったことを楽しむ、悪戯好きな子供のように。

その笑みに、俺は背筋を伝う冷たい汗を感じた。


「さて。準備、完了っと。じゃあ、やりましょうか…お二人さんっ!」


仲間たちを見送った俺たちが視線を戻せば、双銃を構えた彼女が、不敵な笑みを浮かべていた。



――残り13人(3チーム)


【シード】ZERO:NE(ゼロワン)

①タンク  ・ SHUGO

②アタッカー・ NE:NE

③サポート ・ SORA


【シード】CRIMSONCRESTクリムゾン・クレスト

①アタッカー・龍鬼りゅうき

②サポート ・我狼がろう

③アタッカー・時雨しぐれ

④アタッカー・騎馬きば 

⑤スカウト ・呉羽くれは


【シード】VALGARDヴァルガルド

①タンク  ・相田

②アタッカー・山さん

③アタッカー・ユーリク

④サポート ・ハジメ

⑤スカウト ・ハナ



次回:Showtime

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