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Extended Universe   作者: ぽこ
Vortex Conflict

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55/85

VORTEX ARENA – Purge -3

毎週、月曜日と金曜日に更新中!

今回は短めのため投稿しちゃいます!


SHUGOは走りながら銃を構え、怒りと戸惑いを押し殺し、冷静に敵――SABLE HORN(黒角)を見据えていた。

スキルのクールタイムはちょうど明けた。すぐさま発動し、目の前の敵を葬るべく、引き金を引く。


初動の数発が、黒角の一人の頭部を正確に撃ち抜き、続く弾がもう一人の肩口をかすめる。

不意を突かれた敵は動揺し、大きく後退して陣形を整えようとするが、それを許すつもりはなかった。

SHUGOは思い切り突っ込み、さらに連射を浴びせる。


引き金を引き、素早くリロードし、また撃ち込む――この何気ない一連の動作こそが、彼の最大の強みだ。誰よりも素早く、正確に。だからこそ、ミニガン相手にも特攻ができた。


そして今――仲間を裏切りに導いたこのチームに、情けなど不要だ。エンタメは終わった。あとは粛清ショーを披露するだけ。

心では冷静にそう分析していたが、その胸中は真っ黒だった。


「…弱い? …見せ場が欲しい?」

――ふざけるな。


言ってやりたかった。

どれだけHAYNEに救われたか。どれだけ彼の明るさと腕に助けられたか――本当は叫びたかった。


だがそれは、NE:NEの引き金によって封じられた。

あれはHAYNEを止めるためであり、仲間を守るためであり――SHUGO自身に「冷静になれ」と突きつける行動でもあった。

そのおかげで、なんとか気持ちを立て直せた。

悔しさも怒りも、今は心の奥へしまっておく。あとでしっかり説教してやろう。前向きに、そう思えるようになった。


NE:NEは、いつだって冷静で、堂々としていて、判断を間違わない。


(寧々……ありがとうな)


銃を構え直し、展開したシールド先で倒れる敵を見て、いつの間にか背後から援護射撃を始めたKAGEの姿を視界の端に捉える。

小さくため息をついて、内心で自嘲した。


(俺は、何をやってるんだ……情けないリーダーだな)


突っ走ってしまったことを理解して、けれど、それでも前へ進む。

結局のところ――ZERO:NEの仲間たちは、みんな前のめりなのだ。


~~


SABLE HORN(黒角)の最後の一人がKAGEによって倒され、空気がわずかに緩む。

誰もが一息つこうとした、その瞬間。不意に、思いがけない言葉が場を切り裂いた。


「まあ、HAYNEの言動も、分かるよ。俺たちって、こういう“ドラマ”も売りの一つだろ?」


クツクツと喉を鳴らしながら笑うKAGEの様子は、異様だった。

悲しみも怒りもない。むしろこの混乱すら、楽しんでいるかのように見えた。


眉間に皺を寄せたSHUGOが一歩前に出ようとしたとき、SORAの不安げな声がかかる。


「カゲくん……?」


だがKAGEはSORAに目もくれず、ある方向を見据える。

その視線の先――ビルの屋上。そこにいるのは、NE:NEだ。


「なあ!! NE:NE!! さすがのお前でも、これは厳しいだろう!?」


突然の呼びかけに、SHUGOは目を見開いた。嫌な予感が、背中を這い上がる。


「お前……NE:NEに何をした!」


低く、怒りを噛み殺したような声で問い詰めるSHUGOに、KAGEは楽しげに口角を吊り上げた。


「――刺客を送ったよ」


ニヤリと口角を上げるKAGEを見て、SORAが悲鳴に近い驚愕の声を上げた。しかしSHUGOはKAGEを鋭く睨みつけたまま、視線を逸らさない。


「いくらなんでも、HAYNEの一件の直後に、多対一はキツいだろ? なあ!」


見上げるように言い放つKAGE。だが返ってきたのは、冷静で挑発的な声だった。


「――刺客が二人? 舐めすぎなんじゃない?」


KAGEが見上げていたビルではなく、その隣のビルの上層階。そこに立っていたのは、スナイパーライフルを持ったNE:NEだった。

その姿に気づいたKAGEは、目を見開き、言葉を失う。


「……なんで、そこに……?」


唖然とした表情を見下ろしながら、NE:NEはにっこりと笑って銃を構える。


「やっぱ反省会って、大事だよね~!

 ばっちり昨日の試合のプレイメモリーに映ってたよ?

 わざとじゃないなら……もうちょっと上手く隠してくれないと困るんだけど?」


「昨日……ああ、そうか。曖昧になったと思ってたが……あのあとも一人で見返してたのか。」


「一人じゃないよ。――リーダーと、ね。」


その言葉にようやく、KAGEの視線がSHUGOに向けられる。


「……で、お前は、何でこんなことをした?」


銃を向け不機嫌そうに問うSHUGOに、KAGEは観念したように小さくつぶやく。


「NE:NEに……勝ちたかった。

 ――でも、さすがに“うちの参謀”には敵わなかったな。」


クスリと笑い、KAGEは両腕を広げてNE:NEのいる方へ向き直る。


「ほら、やれよ、NE:NE!!」


「カゲくんさ、それちょっと甘いよね。

 裏切者には――粛清、でしょ? ねぇ、ねねちー♪」


言うが早いか、KAGEの背後にいたSORAがすっと銃を構え、一瞬のうちにその頭を撃ち抜いた。


「はい、ちゅー♪」


NE:NE:『KAGE、その終わり方……ダサすぎ。』


NE:NEがくすりと笑みを零した直後、KAGEはばたりと地面に倒れこむ。

俯せのまま地面にキスをするように沈んだ彼は、悔しげに目を細めながら、歩み寄ってきたSORAを見上げた。

可愛らしい笑顔でピースを見せる彼女に、KAGEは苦笑を返す。


「KAGE。お前も後で、説教だ。」


「……了解、リーダー。」


そう言い残し、KAGEの体は光となって消えていった。その場に残ったのは、彼のドロップアイテムたちだけだった。


静まり返る戦場に、NE:NEが器用にビルをぴょんぴょんと飛び降りてくる。地面に降り立つと、迷いなくKAGEのアイテムを拾い上げ、そして本来の目的だった物資へと指をさす。


「――はい、ここからは私が前に出るから、後衛はいなくなるよー!

 物資取ったらすぐ移動! ほら、急いで!」


その言葉に、SHUGOとSORAは互いに顔を見合わせ、そして、ふっと笑みを浮かべた。


「「了解、参謀!」」


次回:VORTEX ARENA - Side:SPARKHOUND - taku – 1

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