VORTEX ARENA – Purge -3
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今回は短めのため投稿しちゃいます!
SHUGOは走りながら銃を構え、怒りと戸惑いを押し殺し、冷静に敵――SABLE HORNを見据えていた。
スキルのクールタイムはちょうど明けた。すぐさま発動し、目の前の敵を葬るべく、引き金を引く。
初動の数発が、黒角の一人の頭部を正確に撃ち抜き、続く弾がもう一人の肩口をかすめる。
不意を突かれた敵は動揺し、大きく後退して陣形を整えようとするが、それを許すつもりはなかった。
SHUGOは思い切り突っ込み、さらに連射を浴びせる。
引き金を引き、素早くリロードし、また撃ち込む――この何気ない一連の動作こそが、彼の最大の強みだ。誰よりも素早く、正確に。だからこそ、ミニガン相手にも特攻ができた。
そして今――仲間を裏切りに導いたこのチームに、情けなど不要だ。エンタメは終わった。あとは粛清ショーを披露するだけ。
心では冷静にそう分析していたが、その胸中は真っ黒だった。
「…弱い? …見せ場が欲しい?」
――ふざけるな。
言ってやりたかった。
どれだけHAYNEに救われたか。どれだけ彼の明るさと腕に助けられたか――本当は叫びたかった。
だがそれは、NE:NEの引き金によって封じられた。
あれはHAYNEを止めるためであり、仲間を守るためであり――SHUGO自身に「冷静になれ」と突きつける行動でもあった。
そのおかげで、なんとか気持ちを立て直せた。
悔しさも怒りも、今は心の奥へしまっておく。あとでしっかり説教してやろう。前向きに、そう思えるようになった。
NE:NEは、いつだって冷静で、堂々としていて、判断を間違わない。
(寧々……ありがとうな)
銃を構え直し、展開したシールド先で倒れる敵を見て、いつの間にか背後から援護射撃を始めたKAGEの姿を視界の端に捉える。
小さくため息をついて、内心で自嘲した。
(俺は、何をやってるんだ……情けないリーダーだな)
突っ走ってしまったことを理解して、けれど、それでも前へ進む。
結局のところ――ZERO:NEの仲間たちは、みんな前のめりなのだ。
~~
SABLE HORNの最後の一人がKAGEによって倒され、空気がわずかに緩む。
誰もが一息つこうとした、その瞬間。不意に、思いがけない言葉が場を切り裂いた。
「まあ、HAYNEの言動も、分かるよ。俺たちって、こういう“ドラマ”も売りの一つだろ?」
クツクツと喉を鳴らしながら笑うKAGEの様子は、異様だった。
悲しみも怒りもない。むしろこの混乱すら、楽しんでいるかのように見えた。
眉間に皺を寄せたSHUGOが一歩前に出ようとしたとき、SORAの不安げな声がかかる。
「カゲくん……?」
だがKAGEはSORAに目もくれず、ある方向を見据える。
その視線の先――ビルの屋上。そこにいるのは、NE:NEだ。
「なあ!! NE:NE!! さすがのお前でも、これは厳しいだろう!?」
突然の呼びかけに、SHUGOは目を見開いた。嫌な予感が、背中を這い上がる。
「お前……NE:NEに何をした!」
低く、怒りを噛み殺したような声で問い詰めるSHUGOに、KAGEは楽しげに口角を吊り上げた。
「――刺客を送ったよ」
ニヤリと口角を上げるKAGEを見て、SORAが悲鳴に近い驚愕の声を上げた。しかしSHUGOはKAGEを鋭く睨みつけたまま、視線を逸らさない。
「いくらなんでも、HAYNEの一件の直後に、多対一はキツいだろ? なあ!」
見上げるように言い放つKAGE。だが返ってきたのは、冷静で挑発的な声だった。
「――刺客が二人? 舐めすぎなんじゃない?」
KAGEが見上げていたビルではなく、その隣のビルの上層階。そこに立っていたのは、スナイパーライフルを持ったNE:NEだった。
その姿に気づいたKAGEは、目を見開き、言葉を失う。
「……なんで、そこに……?」
唖然とした表情を見下ろしながら、NE:NEはにっこりと笑って銃を構える。
「やっぱ反省会って、大事だよね~!
ばっちり昨日の試合のプレイメモリーに映ってたよ?
わざとじゃないなら……もうちょっと上手く隠してくれないと困るんだけど?」
「昨日……ああ、そうか。曖昧になったと思ってたが……あのあとも一人で見返してたのか。」
「一人じゃないよ。――リーダーと、ね。」
その言葉にようやく、KAGEの視線がSHUGOに向けられる。
「……で、お前は、何でこんなことをした?」
銃を向け不機嫌そうに問うSHUGOに、KAGEは観念したように小さくつぶやく。
「NE:NEに……勝ちたかった。
――でも、さすがに“うちの参謀”には敵わなかったな。」
クスリと笑い、KAGEは両腕を広げてNE:NEのいる方へ向き直る。
「ほら、やれよ、NE:NE!!」
「カゲくんさ、それちょっと甘いよね。
裏切者には――粛清、でしょ? ねぇ、ねねちー♪」
言うが早いか、KAGEの背後にいたSORAがすっと銃を構え、一瞬のうちにその頭を撃ち抜いた。
「はい、ちゅー♪」
NE:NE:『KAGE、その終わり方……ダサすぎ。』
NE:NEがくすりと笑みを零した直後、KAGEはばたりと地面に倒れこむ。
俯せのまま地面にキスをするように沈んだ彼は、悔しげに目を細めながら、歩み寄ってきたSORAを見上げた。
可愛らしい笑顔でピースを見せる彼女に、KAGEは苦笑を返す。
「KAGE。お前も後で、説教だ。」
「……了解、リーダー。」
そう言い残し、KAGEの体は光となって消えていった。その場に残ったのは、彼のドロップアイテムたちだけだった。
静まり返る戦場に、NE:NEが器用にビルをぴょんぴょんと飛び降りてくる。地面に降り立つと、迷いなくKAGEのアイテムを拾い上げ、そして本来の目的だった物資へと指をさす。
「――はい、ここからは私が前に出るから、後衛はいなくなるよー!
物資取ったらすぐ移動! ほら、急いで!」
その言葉に、SHUGOとSORAは互いに顔を見合わせ、そして、ふっと笑みを浮かべた。
「「了解、参謀!」」
次回:VORTEX ARENA - Side:SPARKHOUND - taku – 1




