GAME START
光の扉を潜り抜けると、そこは草原だった。 青々とした草木とそれを彩る花々。大きな空は雲一つない気持ちのいい快晴。奥には生い茂る木々。
あれは森だろうか。さらに遠くには小さく見えるいくつかの山。思わず深呼吸したくなるような大自然の中にぽつりと一人立っている。
今しがた通ってきた西洋の扉は、苔の生えた古びた石塔のものに変わっている。リリースが開始されたとは思えないほどのどかな草原を不思議に思いながらも、nullは足を踏み出した。
ふらふらとまだ慣れない身体を動かして森のほうへと進んでいく。山から流れてきているだろう川が森の先へと続いていたためだ。おそらくあの先に街があるのではないかと、胸を躍らせながら足を進めていく。
ザ・ファンタジーの世界だというのに、モンスター一匹出てこない。 実に平和な草原である。歩いて、走って、ジャンプして、と身体を動かしている内にだんだんと新しいこの身体に慣れてきたようだ。 最初の、いつ転んでも可笑しくないほどふらふらとした足取りが、しっかりしたものになっていく。
そうして漸く気が付いた。この草原と森はゲーム初心者がこの世界に慣れるように敵の配置を行っていないのだろう。所謂、身体を動かすチュートリアルといったところだろうか。
木々の根に転ばないように気を付けて進むと、漸く森の端が見えてきた。木々が途切れている向こうには、舗装された道と大きな砦のようなものが見えてくる。
森を抜ければ、舗装された道に点々と立て看板が設置されていることに気が付いた。近づいてみればその存在に納得する。
「ゲームだと違和感ないけど、こう…実物を目の前にするとちょっと違和感かもね。」
書いてある文字は「まずは、”ステータス”と唱えてみよう!」愛らしいポップな文字で楽し気な表記がまた雰囲気ぶち壊しである。
「ステータス」
nullが唱えれば、目の前に現れたのは、数分前まで操作していた画面によく似たステータス画面。半透明な構成にもかかわらず、内容は読み取れる。おそらくこのアバターの仕様なのだろう。ステータス画面の構成も既存のゲームと然程変わりのないものの為特に困ることもなさそうだ。
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プレイヤー名:null / G:1,000
職業:なし / 種族:人間
【魔法使い】 Lv:1 / SP:0
EXP:├────────┤
HP:100 / MP:100
STR:15 / ATK:15
VIT :15 / DEF:18
INT :32 / RES:28
DEX:22 / AGI:18
LUK:25
[装備]
駆け出し魔法使いのローブ
駆け出し魔法使いのグローブ
駆け出し魔法使いのブーツ
駆け出し魔法使いの帽子
駆け出し魔法使いの杖
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ステータスを見て思い出したのは、腰ベルトについているこの杖。ステータス画面で文字を触れば詳細が見ることができるらしい。
「INT+1」と「DEX +1」のスキルポイント付与効果と、魔力操作が行いやすくなるという効果があるらしい。魔法を使う際の補助の役割だろうか。なんであれ、初期装備だ。早いところもう少しまともな武器を手に入れたいが、今はどんなことができるのかを確認すべきだろうと、[スキル]に触れた。
現れたのは現在保有していると思われる5つのスキル。どれもLv.1と記載があるので成長見込みのあるスキルなのだろう。とはいえ、ほとんどがよくゲームでみるスキル名称だ。
「ファイア」や「ウォーター」、「ウィンド」と属性の下級攻撃魔法や「魔力操作」といった、おそらく魔法を使用する際に必要となるスキルだろう。これも特に問題なく扱えそうだ。ただ一つを除いて、であるが。
「これは何のスキルなんだろう?」
眉を顰めながらも、初めて見るスキル名をタップすると、その詳細が現れる。記載されている内容と暫くにらめっこを続けるが、何となく難しそうなスキルだ。
【アカデミー】:魔法訓練所、魔法操作育成所。使用すると特殊フィールドに移動し、専門的な訓練を行うことができる。非戦闘エリアでの使用可
つまり、魔法戦闘のチュートリアルを行う場所、ということだろうか。なんにせよ戦闘中に使えるスキルではなさそうなので、「後に回すことにしよう」と画面を閉じて、次の立て看板へと向かう。
二つ目には「スキルを確認しよう!ステータス画面を閉じるときにはもう一度”ステータス”と唱えてね!」と、またもや愛らしいポップな看板である。既に一通り確認し画面も閉じている為三つ目の看板を目指して足を進める。
三つ目には「スキル名を唱えて技を発動させよう!」とこれまでと同じ書体の看板である。これまでのゲームは、画面の向こう側から操作することができたが、ここではスキル名を唱えると発動できると、公式のPV動画で散々確認した。一部では長々とした詠唱が必要になるスキルもあるようで、覚えていられるのかと頭を悩ませたが、それもどうやら杞憂だったらしい。
この世界では、取得したスキルを確認、もしくは認識することで記憶されるようだ。先ほど確認したスキルの技名だけでなく、消費MPや詳細まで思い出すことができる。やはり戦闘中にスキル名を忘れて唱えることができない。というような不祥事を防ぐためだろうか。それとも、これも”覚えた”はずのスキルを忘れるというのは”覚えた”に該当しなくなるという世界観からだろうか。
この世界観に応じたものなのかシステム的なものなのかと、悶々と考えながらも、記憶力がいいとは言い切れない自身にはこの仕様がとてもありがたいものに思えた。
その後も立て看板の内容を確認しながらゆっくりと目の前の街へと足を進めていく。
一通りの看板を確認しただろうか。最後の看板は街の門の目の前に位置していた為、読み終えるとすぐに街へと視線を向ける。門には番人はいないらしい。こちらにはモンスターの姿が見えなかった為、配置していないのかもしれない。
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[スキル]
・魔力操作
・ファイア Lv.1 MP5
・ウォーターLv.1 MP5
・ウィンド Lv.1 MP5
・アカデミー
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〇チュートリアル看板
【まずは、”ステータス”と唱えてみよう!】
【スキルを確認しよう!ステータス画面を閉じるときにはもう一度”ステータス”と唱えてね!】
【スキル名を唱えて技を発動させよう!】
【装備方法を学ぼう!まずは装備を解除してみよう!ステータス画面の「装備」を開いて装備名をタップすると「解除」が選べるよ♪】
【装備方法を学ぼう!「装備」を開いて装備名をタップすると「装備する」が選べるよ♪】
【装備方法を学ぼう!装備品によっては、必要なSTR値が決まっているから、スキルポイントを使ってSTR値を上げてみよう♪】
【装備方法を学ぼう!装備できるのはあなたの職業に合うものだけ!使いたい武器や装備があるときは自分で作ることもできるよ♪】
【スキルの取得方法を学ぼう!スキルは街の魔導書店で購入できるよ♪】
【スキルの取得方法を学ぼう!スキルのレベルを上げると新しいスキルが手に入ることもあるよ♪】
【スキルの取得方法を学ぼう!スキルはあなたの言動によって入手できるものもあるから、色んな事に挑戦してみよう♪】
【レベルを上げて強くなろう!モンスターやクエストを行うと経験値が手に入るから頑張ってね♪】
【戦う前に!街で回復アイテムを買いそろえておこうね♪】
【その他にもたくさんの機能があるよ!「オプション」と唱えて初期機能を調べてみてね♪】