挑戦の行方 - 再挑戦 -1
あれから、現実時間にして約1日後、ゲーム時間にして約150時間後。nullは、再びこの場所に立っていた。
【最後の扉】:遺跡の支配者の間
デスペナルティの後、寧々はVortex Conflict(ヴォルコン)の打ち合わせが夜まで続き、体力と脳のキャパシティがオーバーしたことにより早めの就寝を強いられる。
健康的な時間に起きた寧々は日課である運動をある程度熟して、買い物を済ませ、漸くこの世界へ戻ってくることができた。
少し考える時間があけば、ここのボスの事を考えていた。
どうすればいいか、どう攻撃を当てれば効果的か。そもそも部屋ギミックがあったかも知れない。たくさん考え、たくさん後悔しながら、早く再挑戦したいと常に考えていた。
そうして、漸くこの扉を前にすることができたのだ。
実は、前回と全く同じ扉か、と言われると否と言わざるを得ない。この扉は、裏ボスである「オルガスの間」からつながっている扉ではなく、正面からこの遺跡を攻略した結果たどり着いた場所だったからである。
同じ遺跡内。なにか攻略の手がかりが道中に合った可能性も視野に入れて、隠し扉を通じての攻略ではなく、正規ルートの開拓を進めた結果であった。
途中、モンスターの寝床なる簡易モンスターハウスに足を踏み入れ、レイピアを振り回して戦い、なんとか倒しきって奥の道へと進めば、今度は急に現れた敵を、鞘から抜いたレイピアで一刀両断にしたりとしている間に、随分とレイピア用のスキルが増えた。
いや、寧ろレイピアでの戦闘も視野に入れて色々と試したという方が正しくもある。
つまり、スキルを増やすために回り道して、地道に剣技の腕を上げたわけである。とはいえ、出来ることなら、どれだけ時間がかかっても魔法スキルで「魔法使い」として倒したいというのが本音であった。
しかし、強敵相手に出し渋って、折角の女神武器を生かせない戦いもまた好ましくない。早く次の街へ行かなければ出遅れる可能性もある。葛藤の中で、結局道中で集められるだけ集めた結果である。
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1. 【抜刀神速・光の一閃】
- 効果:レイピアを瞬時に引き抜き、前方の敵に光属性の強力な一撃を放つ。
- MP消費:15 MP
- クールタイム:なし
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2. 【光速斬】
- 効果:前方に高速の光属性斬撃を放ち、敵にダメージを与える。また、敵の移動速度を低下させるデバフ効果を付与する。
- MP消費:12 MP
- クールタイム:4秒
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3. 【閃光の乱舞】
- 効果:レイピアを振り回して複数回の連続光属性ダメージを与え、敵の防御力を一時的に低下させる。
- MP消費:18 MP
- クールタイム:5秒
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4.【神聖・光の舞】
- 効果:強力な光の渦を周囲に展開し、範囲内の敵に光属性ダメージを与える。敵には「光の印」を付与し、次に受ける魔法ダメージが増加。
- MP消費:25 MP
- クールタイム:10秒
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5. 【光槍】
- 効果:レイピアに光属性の力を集め、一気に前方へ強力な光の槍を発射。命中した敵に高ダメージを与え、命中した敵はしばらく光属性ダメージが増加する。
- MP消費:30 MP
- クールタイム:15秒
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6. 【神威の収束】
- 効果:すべての攻撃が終わった後、レイピアを素早く鞘に収める。収めた後、次のスキルの威力が上がり、与えたダメージの一部がHPとして回復する。
- MP消費:なし
- クールタイム:なし
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nullは増えたスキルを確認し、「よし」と気合を入れて、再び扉に手をかけた。扉を抜け少しの通路の先、崩れた岩壁の奥にボスの間と呼ばれる空間が広がっていた。
「正規ルートだと、こうなってるんだね。実際は裏ボスルートが正しい道順だったけど、崩れた結果こっちの方が早くボス部屋にたどり着けるようになった、ってところかな?」
強敵であったオルガスを思い出せば、納得でもある。強敵のあとにさらに強いアトラクシオンと戦わなければならないのだから、出来ればオルガスを省略したいって話になるよな。と考えながら岩壁を潜れば、目の前にそれはいた。
「やぁやぁ、アトラクシオンさん久しぶりー♪」
にこやかに話しかけ、手を振ればアトラクシオンが動き出す。
「”サーチ”」
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【アトラクシオン】
HP: 8000 / 8000
弱点: 光属性(+15%ダメージ)
状態異常耐性: 石化(完全耐性)、魔法(高耐性)
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ぐらりと動き出すアトラクシオンは、巨大な岩でできた体である。周囲は常に神秘的な光が漂っており、顔は無表情というか、目を瞑っているからそう感じさせるのかもしれない。開眼すると非常に面倒なので、そのまま瞑っていてほしいところではある。
「さて、再戦と行きますか」
nullが杖を構えれば、それに答えるかのようにグオォォォっと野太い声をだした。それと同時に周囲に「魔力の渦」が発生し、遺跡内の地形や構造に変化が起こる。地面や壁から大きな岩が突き出て、それが非常に邪魔をする。
アトラクシオンが地面を大きく叩けば、地響きとともに衝撃波が襲ってくる。それを”エア・ダッシュ”で避けつつ、”グラビティ・ボム”でアトラクシオンの動きを鈍らせる。
鈍い動きに苛立つアトラクシオンは、今度はグラビティ・ボムで作り出した範囲外から、岩を操りそれを投げてくる。これが非常に厄介だ。避けても、地面に当たり飛び散った石礫まで避け切ることができずに、HPが削られる。
小さく舌打ちをすると、nullはアトラクシオンへ”ウィンド・ブレード”と”ファイアーランス”を放つ。ガリガリと岩の身体を削るも大きなダメージはない。やはり光属性の攻撃魔法が無いことがかなりの痛手である。とはいえ、無い物強請りをしたところでどうしようもない。時間をかけて削るしかないのだ。この部屋にはボスに効きそうなギミックも見当たらない。つまり、真正面から倒すしかない。
「あー、もう本当に硬いよね。」
油断をすれば、範囲攻撃の光線が飛んでくる。それを避けながら、戦いをくみ上げていく。その瞬間がたまらなく楽しい。
「”ウィンド・リフレッシュ”、”クイック・チャージ”、”ヒール”」
まずは態勢を立て直し、攻撃に転じる”ウィンドカッター”、”マナ・フレア”でコツコツとHPを削っていく。幸い、長期戦には持って来いのポーションは前回かなり消費したが、まだ多少持ち合わせがある。
まだまだ余裕そうなアトラクシオンは、再度岩を飛ばしてくる。それを”ストーンシールド ”で弾き、”ウィンド”でアトラクシオンへと投げ返した。
ゴンっと大きな音を立ててアトラクシオンへ命中すると、多少まともなダメージが入ったことをnullは見逃さなかった。にやりとnullの口角が上がる。
「へぇ、いいのみーっけ!」
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【アトラクシオン】
HP: 7650 / 8000
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怒ったアトラクシオンは再び、地面へ大きく腕を振り下ろし衝撃波を飛ばしてくるが、これはもう”エア・ダッシュ”で対応できる。難なく躱して、クールタイムの明けた”ウィンド・ブレード”、”ファイアーランス ”を打ち込む。HPはまともに削れないが、ないよりはましだろう。
攻撃が当たらないことに苛立つアトラクシオンは、大きな闇の塊を投げてくる。前回はこれに当たって視界を遮られ、その間に槍で攻撃をされたのだ。だが、躱す手段さえあれば問題ない。
躱す手段…。
「あ!!ちょ、たんま!!」
先ほどの衝撃波を避けるために使った”エア・ダッシュ”のクールタイムはまだ明けていない。さてどうしようかと、”クイック・チャージ”を発動して全力で走ってみる。しかし、“回避魔法使い”とはいえ、極振りしているわけでも、AGIの高い補正アイテムがあるわけでもない。ポーションを飲む暇もなく、ただ走るだけでは流石に躱しきることはできず、視界が黒一色に染まる。
まずいと思い、それでも走り続ける。
もしかしたら、あの槍が外れてくれるかもしれない。掠りはすれど、命中は避けられるかもしれないと希望を抱いて。
只管場所も方向も分からないまま走り続けた。そしてふいに立ち止まる。
nullが察知したのは空気の切れる音。ビュンっと鋭い音が一方方向から聞こえてきた。攻撃が来る方向が分かれば、逃げる必要もなくなる。
「”アーマード・リフレクション”」
展開したシールドが敵の攻撃を弾き返す。リフレクションで反射された攻撃は恐らくアトラクシオンへと向かっている筈だ。飛んで行った方角を確認して距離をとるように走れば、途中で視界が開けた。
戻った視界で状況を確認すれば、思い描いた通りにことは済んだらしい。ほっと息を吐く。
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【アトラクシオン】
HP: 5380 / 8000
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