表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Extended Universe   作者: ぽこ
最初の街 - ファスティアン -
15/64

出発と討伐-1


nullは乾燥棚をのぞき込むと、大きく息を零した。どうやら、もう乾燥素材が無いらしい。手持ちにはこれでもかというほどのアイテムあるが、中々に奥深い調合の世界から抜け出せずにいた。


ポーションの色が変わる瞬間に、タイミグ良く薬液を入れる作業。素材の組み合わせを考えながら調合鍋を混ぜている瞬間。調合中に目についた素材を入れたらどうなるのかとにやける瞬間。

どれもが楽しくて、たくさんのパターンで研究したいと、心を擽っていた。


しかし、もう材料は尽きてしまった。


尽きてしまったならどうするか。そう、外へ出て材料をとってこなければならない。冒険という名の外へ出なければいけないのである。

これはこれで楽しいのだが、まだ尽きない研究心に後ろ髪を引かれる思いで調合室を後にした。


さて、どうやってこの先を進むべきかと、購入した高価な地図を眺める。

じっくり眺めれば、思ったよりいいものだと首を傾げる。


確か説明では「近隣の街3つの詳しい場所と地形はもちろん目印になるようなものまで記載されている。」だったか。

しかし、目の前の地図には地面の種類まで乗っているように見える。西門から出てすぐは草原その先に小さな森。その森の少し奥の方に遺跡があるようだ。


ただ歩いているだけでは分からないような奥まった場所にある。森を抜ければ大きな橋で川を渡る。その先は土道になっていて、少し進めば、関所があるらしい。


レーネとバルトには適当なことを伝えたと思ったが、本当にあるらしいから困った。今は手持ちがほとんどない。関所の先には丘が広がっており、その先にセカンダリアがあるらしい。


道草を食わずに真っ直ぐ向かったとしても1日半はかかりそうな行程だ。


準備にもお金がかかるが、遺跡があるなら行ってみたい。遺跡がダンジョンだった場合はそれなりにアイテムも持っていきたい。さて、どうしたものかとインベントリと睨めっこしながら悩みこむ。


一部を売って、お金にするか。

遺跡がダンジョンならばお金が手に入らないものか。

関所ではお金以外でも受け付けてもらえるか。


地図を見る限り、目についた遺跡だけでなく、他にもたくさん気になる場所がる。すべての場所に行くにはあまりにも時間がかかりすぎて困った。


「決めた。作ったアイテムがいくらになるか気になるし、少しだけ売ってお金にしてからいこう」


大きく頷いて、ギルドの販売所へと顔を出した。既に顔見知りのようになっているおっちゃんににこりと笑めば、「おぅ、何か買ってくか?」と軽い言葉が飛んでくる。


「作ったもの売ることってできる?」


「んー、あぁ構わないが、品質によってかなり値段が変わるがいいか?」


「勿論、これとこれと、あとこれ。どうかな?」


nullがインベントリから取り出した、【ヘルスポーション】【ヘルスポーション改(継続型01)】【HPポーション】【HPポーション改(継続型01)】を一つずつ鑑定してもらうことにした。


「おお、いい出来じゃねぇか!これならーー」


と、販売所のおっちゃんは盤をはじく。見積もりとして出してもらったのは思っていたよりもいい値段がついて、そのまま売ることにした。


==

【ヘルスポーション】1@100

【ヘルスポーション改(継続型01)】1@120

【HPポーション】1@115

【HPポーション改(継続型01)】1@200

=535G

==


これで多少お財布が潤ったと、内心ホクホクでユーセスへ挨拶に行くことにした。この街で一番お世話になったといっていいだろう彼女は、相も変わらずギルドの受付に立っている。


「ユーセスさん、今日セカンダリアへ行きます。とてもお世話になりました」


にこりと笑顔で感謝を述べれば、彼女もまたにこりと返してくれた。


「なんだか寂しくなりますね。また顔を見せにいらしてくださいね」


「勿論です」と言ってギルドを出る。また来るとは言え、他の街へ行けば中々立ち寄ることはないだろうなと思いながらも、nullは西門を目指す。道中、この景色も一旦見納めかと思えばなんだかさみしく思えるから不思議だ。



西門を出て、広大な草原を奥へ奥へと歩いていく。

途中すれ違うプレイヤーの戦い方に初々しさすら感じられるのは、nullがこの狩場に慣れてしまったからだろうか。

鼻歌交じりにサクサク進めば、これまた見慣れた森が見えてきた。この場所でも散々採取したなぁ。と感慨深い思いで通り過ぎていく。


本音を言えば採取しながら進みたい。しかし、この後戦闘が控えている可能性が高いためMPを温存させておかなくてはならず、手で採取しながら進もうものなら、きっと朝までたってもこの森を抜けられないに違いない。ぐっと我慢である。



地図の通りに森の奥へとどんどん進んでいけば、採取でも来たことが無いような場所までたどり着く。このあたりの筈なんだが、と当たりを注視ししながらさらに奥へと進んでいけば、ここまでの道中とは違い少しだけ強そうなモンスターが現れ始めた。


そろそろ近いかな?とさらに歩みを進めれば、ひっそりとした遺跡が現れる。

石造りのそれは手彫りだろうか?壁はごつごつとしていて暗い。


nullは”サーチ”を何度も唱えながら薄暗闇を進んでいく。途中で火のついていない松明を見つけ、しめたとばかりに”ファイア”で明かりを灯す。

こういう時にライトの魔法を覚えていないことを悔やんでいたが、どうやら手段は用意されていたようだ。


松明の光を頼りに、”サーチ”魔法と共に進んでいけば、レベルの上がったスキルが活躍してくれる。入って中間程いったあたりだろうか、二股に分かれた道の正解を魔法が引き当てる。


==

【右の道】:モンスターの寝床

【左の道】:行き止まり(隠し扉あり)

==


迷わず左の道へ進んだ。どこに隠し扉があるか、見落とさないように細かく”サーチ”を使って進めば、行き止まりのほんの手前でそれが反応した。


==

【隠し扉】:丸い石を半回転で解除

==


なんともわかりやすい仕掛けである。誰が見ても、これと分かる目立つ壁の石。ぐるりと右へ回転させて半分の位置で止めれば、その石は壁の奥へと吸い込まれるように凹んだ。

そういう仕掛けか、と驚いていれば、ゴゴゴゴと低い音で石壁が割れるように、先へ続く道を示した。


閉じ込められてしまうかもしれないというちょっとした恐怖を感じつつ、その先へと足を踏み入れれば、電気のついた明るい空間へとでた。


ここはなんだろう?と思い部屋を見回しながら”サーチ”魔法に頼る。


==

【裏ボスの間】:遺跡の裏の支配者の間

==


え?

うらぼす?


しかし何も見当たらないし、留守かもしれない。

うん。そうに決まっている。


くるりと向きを変え、来た道を戻ろうとすれば、ドンドンと地響きが聞こえてくる。


ドンッ!と大きな音がしたかと思えば突風が吹き荒れる。背後には大ジャンプを決めて、今着地したと言わんばかりの石像。ゴーレム?いや、どちらかと言えば、モアイ像に近しいモンスターである。


いや、モアイ像だ。

どうみても。


「てか、あぶな…”エア・ダッシュ”」


呑気に見上げていれば、モンスターは身体ごと倒れながら攻撃をしてくる。ぎりぎりのところで何とか避けたnullは一度体制を立て直しつつ、敵と距離をとる。


「”クイック・チャージ”、” ウィンド・リフレッシュ”、”グラビティ・ボム”」


移動速度とクールタイムを上げて、MPの継続回復を行っておく。道中サーチを多用していたせいもあり、MPが心もとなかったからだ。そして、相手の移動速度を下げてから攻撃態勢に入る。


「”ウィンド・ブレード”、”ファイアーランス”」


どうやらあの石のモンスターには魔法が効いてくれるようだ。これで物理しか聞かないとかだった場合、現在のnullには戦う手段がない。とはいえ、中々に厳しい戦いになりそうだ。


「”サーチ”」


==

【オルガルス(Olgarus)】

 タイプ: 地属性 / 巨大モンスター

 HP: 4530 / 5000

 弱点: 火属性(+20%ダメージ)

 状態異常耐性: 石化(耐性あり)

==


「弱点、火!!」


ありがたい!!


止まればどこからともなく岩が向かってくる。岩を操る特性があるらしく、右から左からと様々な方向から絶え間なく岩が襲い掛かってくるのを、クイック・チャージやエア・ダッシュを活用してどうにか避け続ける。


「”シャドウ・マント”」


黒いマントを被るかのようなエフェクトの後、岩の攻撃が止まった。相手が見失っているのだろう。その内にインベントリからポーションを取り出す。


【MPポーション改(魔力強化型01)】の瓶をパキリと割れば、MPが回復する。今のうちにと、スキルを唱える。シャドウ・マントで姿を隠せるのは10秒だけだ。素早く距離をとりスキルを発動させる。


「”グラビティ・ボム”、”ファイアーランス”、”ファイア ”」


10秒が経過し、姿を現したと同時に、スキルを唱えきる。ドドドと攻撃が命中した音が響きなる。ボゥと石の身体が燃えると、それを嫌うかの様に身体を地面にたたきつけている。その隙に、nullは再度スキルを唱える。


「”アイス・リフレッシュ”、”マナ・フレア”」


風のMPチャージのクールタイムが明けるまでは氷のMPチャージを使い、出来る限りMP回復に努めなくてはいけない。そして、全属性の乗ったマナ・フレアで攻撃を行い、またすぐ敵の攻撃を回避する。


どのくらいそうしていたか、全然減りきる様子のないHPバーを目にして、舌打ちがこぼれる。何か打開策はないかと当たりを観察するも、敵の攻撃が止まらない限り考えることも難しい。


「”ストーンシールド”」


石壁を展開して、部屋に目を配る。何かないか、と頭の中でぐるぐると考えていれば、それを見つけた。


「あれだっ!」


「”エア・ダッシュ”」


豪華な扉の近くに据えてある明りの灯っていない大きな松明。それはあのモンスターと同等のサイズで、ピンと閃いた。


「”ファイア”…、”ウィンド”!!」


松明に火をともし、風魔法を操りオルガルスの頭上へと運ぶとそのまま落下させる。ボウっと燃え広がるその火は、先ほどとは比べ物にならない程燃え上がる。


狙い通り、オルガルスの動きを停止させた。その隙に、また距離をとる。

インベントリから【MPポーション(改速度up型01)】を取り出すと、パキリと折ってMPを補充する。


そうしている間に起き上がったオルガスは、岩を飛ばす攻撃を止め、短い腕を地面にドンと下すと、こちらを見つめてくる。

嫌な予感を察知して、「”シャドウ・マント”」を発動させれば、その瞬間奴の目が発光した。


ピカッと強い発光の後、静まった空間には、何も変化がない。

なんだ?と思いつつ、こちらを見失っているオルガスへと、攻撃を仕掛ける。


「”ファイアーランス”」


ボウっと燃えるオルガスのHPは漸く半分を切る。


==

【オルガルス(Olgarus)】

 HP: 2033 / 5000

==


次回更新25日です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ