百合師ペドロワ無宿旅~聖女イライザと悪役令嬢ポリアンナ
聖女イライザが金持ちで美形の王子から求婚されたと聞き、悪役令嬢ポリアンナはキレにキレまくった。
「あン畜生~ぅ、許せない、許せないわァ!」
早速ポリアンナは悪辣な奸計を考え出した。イライザを女しか愛せない体にしてしまおうと思いついたのである。
「くくく、そうなったら婚約破棄は間違いなし!」
そしてイライザの後釜に収まろうという計画なのである。
「んまァ、あたくしの魅力で王子を虜にするのは簡単ですけどね、ほほほ、ンほ~ほほほ」
百合師ペドロワは笑い続けるポリアンナに言った。
「依頼というのは聖女イライザを百合の世界へ導くことなのね」
「そう!」
ポリアンナは笑うのを止めて大きく頷いた。
「お願いよ、百合師ペドロワ。貴女の力で、聖女イライザをガールズ・ラブ・オンリーの肉体へ変えてちょうだい!」
ペドロワは首を横に振った。
「生憎だけど、その依頼はお断りよ」
「ど、どうして! どうしてなのよォ~!」
憤るポリアンナにペドロヴァは言った。
「既に聖女イライザから依頼を受けているわ。悪役令嬢ポリアンナを、ガールズ・ラブ・オンリーの肉体へ昇華させてほしい、とね」
「な、なんですって! それは本当なの!」
「そうなのよ、ポリアンナ」
どこからともなく現れた聖女イライザは言った。
「わたし、百合師ペドロワに依頼したの。悪役令嬢ポリアンナを、わたしと同じ愛の持ち主に変えてほしいって」
「なぜ、なぜなのよォ~!」
「それは……わたしが、あなたを愛しているからよ」
驚愕のあまり声を出せない悪役令嬢ポリアンナに、百合師ペドロワが近づく。
「早速だけど仕事を始めさせてもらうわ」
それから背後のイライザに言う。
「そこで見ている? それとも、目を瞑っている?」
イライザは怪しい光を瞳に宿して言った。
「ここで見ているわ、一部始終を!」
聖女イライザから請け負った仕事を完遂した百合師ペドロワは、真っ暗闇の道を歩いた。闇の中から、愛し合う聖女イライザと悪役令嬢ポリアンナの体臭が漂ってきたように感じられたが、気のせいだった。彼女は呟いた。
「今夜も宿無しか」