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 アイナが驚きの声をあげた。それはリアクション芸人顔負けの声色でアイナはと言うとかじっていた食パンをポロっと皿の上に落として目をカッと見開いていた。


「どうしたの?」


 アイナは注視していたスマホの画面を水戸の紋所よろしく僕にかざしてくれた。


 そこには佳奈とのメッセージ履歴が表示されていて、単語の区切りごとに絵文字がふんだんにあしらわれていた。相変わらず色使いが多すぎる画面に僕が目をぱちくりさせながらメッセージを追っていると、突如として特異点が現れた。


 それは装飾の全くない淡白な最新メッセージで、


熱出ちゃったからきょうは学校を休むってユキトに伝えてほしいです。お願い。


 と、書かれていた。


 絵文字大明神の佳奈が文章に絵文字を入れられないということはすなわち、よっぽど熱が出ててつらい状況なのかもしれない。佳奈の家には在宅の母親がいるから不安はないけど、佳奈の体調がかなり心配ではあった。


「まじか」

「兄貴もだけど佳奈姉ぇが風邪引くなんて超珍しいね」

「そうだね。佳奈が風邪引いたのだってだいぶ昔に僕の看病をしてくれたときだし」


 僕がふと過去を踏まえて佳奈が風邪を引いて学校を休むことになっていた原因について気づくと、


「それ、兄貴の風邪が移ってるんじゃないの?」


 と、アイナは言った。


 体調はほぼほぼ万全な状態だったけれど、的確な指摘に滝汗が止まらなかった。


「ごもっともでございます」

「そりゃあ、あんなことしてたんだから移ってない方が不思議だけど。もしかして、いままでも?」


 疑いの目が向けられて僕の全身があわだっだ。実際に、昨日みたいな直接キスをしたりだとかそういうのはなかったけど、よくよく思い返せば佳奈との距離がかなり近かったような気がしなくもない。あのときはそういうのが当たり前だと思っていたけど、幼馴染と言うよりかは恋人同士の距離感だったと言われても否定できなかった。


「いやぁ、ああいうのは昨日が初めてです」

「ふーん」


 アイナは僕のことをジトッと見ると、


「とにかく、お見舞いには行ってあげなよ?」


 と、言った。


「もちろん行くよ。アイナはどうする?」

「そんなに複数で行ってもうるさくなるだけだと思うしお大事にって伝えておいてほしい。それと」

「それと?」

「あんまり羽目を外しすぎないようにね」


 心底僕と佳奈のことを心配している様子で柔らかく言うと、アイナは再び僕に合わせてゆっくりとパンをそしゃくし始めた。


「はい。気をつけます」


 そうして僕たちは朝ごはんを食べ終えると、それぞれ学校へと向かった。

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