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8話

 青い少女がブルー──つまり同業者(そうぎや)であるということがわかった途端、嫌悪感にも似たような感情が湧いてきたのですが、それは胸の奥にしまい込んで、わたしはいつもと変わらぬ笑顔を張り付けたまま話を進めました。

 呼びかたは青い着物の少女から青い少女になりましたが、以降はさらに改めて〝ブルー〟としましょう。段々と短くなって良い感じです。


「なるほど霊視……ですか。では先程ぼーっとしていたのはその霊視を行っていた、と」

「は、はい……すみません」


 普通の人間に霊の姿を見ることはできませんし、声を聴くこともできません。それに関しては魔法使いであるわたしも例外ではないようです。

 霊の声が聞こえないのならば、霊と会話をしているブルーの声も聞こえず、ぼーっとしているように見えるのは納得がいきます。


「葬儀屋なのですか? ブルーということは」

「は、はぃ……ごめんなさい」

「いや別に責めてはいませんが」


 無駄に謝ってくるブルーを嗜めます。

 そんなことで簡単に謝らないでほしいですね。イライラしてくるので。

 ブルーは変わらずわたしの影のように後ろをついてきながら、


「……ほ、本当に驚かないんですね。あまりにも平然としてるからこっちが驚いちゃいました」


 意外そうな声を上げました。

 自分の鉄仮面には自信がありますからね。数年も塗り重ねてきた分厚さは伊達ではありません。舐めないでください。

 むしろ葬儀屋でありながらわたし(ホワイト)の話題にならないほうが意外です。

 もしかしてわたしはその界隈では有名ではなかったのでしょうか……? しょぼーん。

 それからしばらくして、ブルーの言っていた現場に到着したようです。後ろをついてきていたブルーの足が止まりました。


「もしかしてこの辺りなのですか? 現場は」

「は、はい……たぶん」


 ハッキリしない物言いに一瞬ピキッとなりつつも、自らを律します。


「ではもう一度お願いできますか? 霊視を」

「わ、わかりました……!」


 ブルーは小さく頷いてから、中空を見つめます。この辺に漂っている霊魂と交信をしているのでしょう。幽霊から目撃情報を募るなんて、確かに面白い。

 正直霊視(そんなこと)はしなくても現場の証拠を集めれば状況や目的地くらいは割り出せる自信があるのですが、判断材料は多いほうが良いということでお願いしました。

 わたしはわたしで現場検証といきましょう。


「っと、やっぱりありましたね。証拠」


 家屋と家屋の間に争ったような形跡がありました。地面の砂が散っていたり、引きずった跡がしっかりと残っています。それに左右の壁にも小さなへこみがあったりと、必死の抵抗も虚しくここから無理やりに攫われていったということなのでしょう。わかりやすいですね。

 わたしの簡単な調査を裏付けるかのように、ブルーもこの隙間を指差しました。


「お、お待たせしました……ここです。この先に連れていかれたそうです……!」

「ふむ。やはりそうですか」


 これで決まりかもしれませんね。わたしの推理力の高さが! どや。

 というのは一割冗談で──ブルーの霊視が紛れもない本物であることが、です。

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