7話
「それで、大丈夫なのですか? ぼーっとしていたようですが」
急に口を半開きのまま無反応になられるとこちらが不安になってしまいます。わたしの中でも〝変な人〟に認定しておきましょう。あの男の子たちの気持ちが少しだけわかった気がしました。
「だ、大丈夫です……どうしてもこうなっちゃって……」
「こうなっちゃって?」
「いえ! こ、こちらの話ですから!」
全力で両手をぶんぶん振りまくって否定してから、太陽が沈んでいく方角を指差しました。つまり西です。
「げ、現場はあっちらしいです」
「……ならば向かいましょう。すぐにでも」
言動の端々に気になるところはありますが、それを問い詰めるのは移動しながらにしましょう。そのほうが時間を有効に使えます。
「──っとと、この格好なのを失念していました。危ない危ない」
つい癖で走り出そうとしてしまいましたが、いまのわたしは動きやすくてお気に入りの白い旅装束ではなく、レンタルした真っ白い着物でした。
ちょこちょこと歩幅を小さく早歩き。周りから見たら変な絵面になっていそうですね。これ。
どこかの国に生息しているらしいペンギンという生き物に似ているかもしれません。
それはさておき。
「そろそろ教えてもらってもいいですか? あなたが何者なのか」
影のように後ろをついてくる青い少女に聞いてみます。
わたしはしれっと「旅人なので~〜~」と簡単に自己紹介しているのですが、まだ青い少女が何者なのかは聞いていません。
「で、でも……いつも言っても信じてもらえないので……」
青い少女の声と表情は、暗いものでした。その闇の奥には苦労と苦痛が滲んで見えたような気がします。
言う前から諦めてどうするのですか。
「それは言ってみないとわかりませんよ。わたしは旅人ですから、あなたの評判なんて知りませんし、だからこそ話しやすいとは思いませんか?」
例え信じがたいようなことを言われたとしても、それを馬鹿にするような失礼なことをいきなり言ったりはしません。誓って。
「それに、用事が済んだらわたしはすぐ旅に出ます。つまりわたしとあなたはいまだけの付き合いで、この先もう出会うことはないんです。ですから安心していいですよ」
あとで冷静になって考えてみれば、ここで彼女のことを無理に聞こうとしなくても別に良かったのではと思いますが、聞いてしまったものは仕方がありません。
青い少女は鉛のように重い口をゆっくりと開いて言いました。
「わ、私は……霊視ができるんです。名前は……僭越ながら、恐縮ながら、申し訳ないんですが──ブルーと名乗らせてもらっています」
いきなり情報量が多いのですが……霊視とは幽霊やら魂やらを見たりすることができる能力のことで、色の名を語るのは最初にも言った通り葬儀屋の証。
ということはつまり──まさかの同業者でした。