5話
なぜあの子たちが人探しなら青いねーちゃんだと揃って口にしたのか。そこが気になるところですね。顔が広いとか、情報屋を営んでいるとかでしょうか。
いまならお金もあるので、多少は報酬を支払うこともできますが、なるべく出費は押さえたいところです。
「わたしのことをずっと見ていましたよね。呉服屋から」
「き、気づいていたんですか?! ご、ごべんなさいぃ!」
自らの着物が乱れるのも厭わずにもの凄い勢いで腰を折って謝ってきました。
随分と謝り癖のある少女のようです。嫌いなタイプですね。
「その件は別に良いんです。聞きたいのは人探しができるのかできないのか、です」
事は一刻を争います、あまり悠長にはしていられません。かと言って急いては事を仕損じますから、冷静に。
わたしの問いに、青い着物の少女──ちょっと長くて言いづらいので以降は〝青い少女〟としましょう──は悩むというか、言い淀むように考えてから口を開きます。
「お、恐らくできると思います。人探しくらいなら」
「僥倖というやつですかね。それはよかった」
探し物は人海戦術に限りますが、わたしにおいてはその手は危険極まりない。
ですが一人で、知らない土地で、顔も名前もわからない人を探すなんて無理難題もいいところ。
たった一人でも手伝ってくれる人がいるだけで心強いです。
「それで、わたしは旅人なのでこの地に疎いのですが、どのようにして人探しをされるので?」
それはあの男の子たちも知っているようなことのはず。
「えっと……まずは誰を探しているのかを教えてもらってもい、いいですか……?」
自信なさげに、そして申し訳なさそうに言ってくる青い少女。
それもそうですね、それを知らなければ探しようがありませんでした。冷静にとか言っておきながら、内心ではわたしも焦っているようです。
「このわんちゃんの飼い主です。さっきの子たちと同年代くらいの男の子だとか。坊主頭だそうです」
先程聞いた特徴を伝えると、「……わ、わかりました。ちょっと待ってください……」と中空を見つめ始めました。前髪で隠れていて目は見えませんが。
そして青い少女は言ったのです──
「……どうやら何者かに攫われてしまったそうです」
──まるで今さっき、誰かに聞いてきたかのように。