4話
「もしかしてですけど」
実はひとつ黙っていたことがあります。害が無さそうだったので無視していたのですが、呉服屋でモデルをしているときからわたしに熱い視線を送り続けている人がいたのです。
街中を観光をしているときも、つかず離れず視線を送り続けていました。
(わたしの魅力が爆発して一瞬で熱烈なファンを生み出してしまいました。どや)
とか密かに思っていたのですが──
「──あそこの物陰に隠れている方ですか? 青いねーちゃんとは」
背後を見ずに親指で差し、男の子三人の表情を窺うと声を揃えて「「「あ!」」」と言いました。
「ほんとだ!」
「葵ねーちゃんだ!」
「相変わらずビビってる!」
面白そうに駆け出して、物陰に隠れている少女の手を取って無理やりに引っ張り出してきました。
名前の通り青い着物の少女は薄紫の髪を伸ばして目を隠していて、なにかに怯えるように縮こまっています。歳はわたしと同じか少し下くらいでしょうか。
「葵ねーちゃんこっち!」
「あの人が用あるって!」
「早く早く、トロいんだから!」
「ひゃぁ?! ちょ、ちょっと?!」
両腕を引かれ、背中を押されてわたしの前に引きずり出された青い着物の少女。人前に出ることに慣れていないのか、オドオドしていています。
「葵ねーちゃん変な奴だけど力になると思うんだ!」
「そうなのですか? ではせっかくの紹介です、頼りにさせてもらいましょう」
「あぅぅ……どうして見つかっちゃったんだろう……」
子どもに変な人認定されるなんて相当だと思いますが、変人と天才は紙一重ですから、役に立ってくれることを祈りましょう。
「ありがとうございます。あとはわたしにお任せください。君たちはもう行っていいですよ。しつこいようですが、いじめなんてしてはいけませんよ?」
「「「はーい!」」」
男の子たちは三人声を揃えて、元気に走り去っていきました。本当にわかっているんでしょうか……。
それはさておき、小さな背中を見送って。
「さて──」
青い着物の少女と対面します。ちっとも目を合わせようとしませんし、体の芯もこちらへ向いていません。いまにも逃げようとしている姿勢です。
「……じゃあ私も、お、お邪魔しましたぁ~……」
「待ってください、どこへ行こうというのですか? 逃がしませんよ」
ぬるりと自然に立ち去ろうとしている青い着物の少女の肩を掴んで、引き留めました。
「ひぃ~?! ごめんなさいごめんなさいぃ!!」
「わたしは旅をしている者なのですが──いや、どうして謝るんです? むしろ謝るのはこちらのほうかと思うのですが」
人探しに精通している人を聞いたら凄い勢いで無理やりに引っ張り出されてしまったわけですから、こちらからお願いしておいてなんですが、見ていてちょっとかわいそうでした。
青い着物の少女は両手をぶんぶんと全力で振って、
「い、いえっ! 謝るだなんてそんなっ!」
「そうですか。では謝罪は無しで」
しなくていい謝罪はしない主義なのでわたしは簡単に撤回します。冷めてると思うかもしれませんが──自分でもそう思います。どや。
話を戻させてもらいまして。
「単刀直入に。人探しのお手伝いをしてほしいんです。あの子たちが『青いねーちゃんなら力になれるかも』と伺って」
ちょっと不安ですが、まずはあの子たちを信じて話をするところから始めましょうか。