20話
コイツは口が軽いことはわかっていますから、聞けばなにかしら喋ってくれるかもしれません。あまり期待はできませんが、情報収集は時に非常に大切な要素となります。たった一つの情報が沢山の人間の命を救うことだってあるのですから。
あまりコイツと会話などしたくありませんが、それを思えば嫌なことでも取り組めそうです。頑張れわたし。
「まさか、今回の一件もあなたの仕業ですか?」
毒使いの魔教徒は目を細めて意味ありげに表情を歪めました。
「えぇ~? そのまさかだったらぁ、どぉ~する?」
「ん? 殺しますが?」
「サラッと怖いこと言わないで?! 実際何度も殺されかけてるし?!」
樹海でもそうでしたし、ついさっきもそうですが、殺そうと思った攻撃が避けられてしまって、こちらとしてはまことに遺憾です。ここまでわたしの攻撃を躱せる人間は世界広しと言えども何人もいません。
虹天集のトップである、あのレッドですらわたしの圧縮魔法を躱すことは困難なのではないでしょうか。それをやってのけたのだから、油断なりません。
「それで? 返答次第ではおっぱじめますが」
「だから怖いって! 言っとくけど今回の件はアタシじゃないよ!」
「信用できません」
「じゃあアタシだよって言ったら?」
「信用します」
「どうしろと?!」
そもそもコイツが魔教徒である時点で、100%悪であるとわたしの中で確定しています。どう足掻いても、その評価が覆ることはないでしょう。
死ぬか殺すかして初めて、わたしは安心することができるのです。
前回と同じようであればあまり期待はできませんが、引き出せそうな情報を引き出した後は、今度こそ殺してやります。これ以上の被害が出てしまう前に。
「どうするもこうするもありません。わたしに大人しく殺されなさい。楽になりますよ」
「葬儀屋の言葉とは思えないんですけどぉ~?! どっちかと言うと狂人! いや魔教徒! なんつて☆」
「ア?」
「……いや、すんません、なんでもないッス……」
その言葉、完全にわたしの逆鱗を引っぺがしましたよ。わたしが魔教徒? あまりにもおぞましてあと50回は転生できそうです。
さて、時間稼ぎはできました。煮え滾る腸のさらに奥では冷静な自分を保っています。
ブルーは隙を見てそそくさと男の子を抱えて退散してくれましたし、伸びている男たちは邪魔ですが……巻き込まれたりしないように気を付けておきますか。一応。
「なぜこんなところに? なにが目的です?」
男の子の誘拐がコイツの差し金でないのなら、なおさらここにいる理由がわかりません。たまたま、偶然、奇跡的に出くわしたとはとても思えないのです。絶対に裏があると見て、構えておくに越したことはないでしょう。
「上からの命令だよぉ? ほんっと現場のことって考えないよねぇ~上司ってさ~。ホワイトちゃんもそう思うっしょ?」
「あなたの愚痴など聞いていません」
「イヤン☆」
地面を抉る圧縮魔法で脅しても、ふざける態度を改めようとはしません。今後のことを考えると、やはりここで殺してしまったほうが良いでしょうね。魔教徒は根絶やしです。
──あ、ちなみにわたしは自由に仕事やらせてもらっていますよ。優秀ですから。どや。




