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18話

 わんちゃんの飼い主である誘拐された男の子は、野蛮な男たちの手によってすでに息を引き取っていました。全身に打撲の跡が見受けられるので、死因は暴行による殴殺でしょう。

 かわいそうに。ただひたすらに、そんな感情が湧き上がってきます。まだまだ無限の可能性を秘めていた将来がこんな狭くて埃っぽいところで潰えてしまうだなんて。

 わたしは気持ちを切り替えて、助太刀しに来てくれたブルーに向き直ります。


「ブルー、お疲れさまでした」

「はっ、はひ! すみません、なにもできなくて……」


 またこの子はペコペコと当たり前のように頭を下げて謝って……この一連の事件が落ち着いたのはブルーの功績が大きいというのに、それをまるでわかっていないようですね。


「あなたがいなければ、被害はもっと拡大していました」


 わたしだけでも充分でしたが、ブルーの功績でもあることを棚に上げてしまうほど恩知らずではありません。土地勘だってわたしよりありますし、そのおかげでより早くここを見つけ出すことができた。そして悪党を成敗することができたのだから、ブルーが誇ったところで誰も文句なんて言いませんし、わたしが言わせません。


「そ、そうなんでしょうか……」

「そうです。だから自信を持ってください」


 こんな簡単な一言で自信を持てるほど人間は単純ではないでしょう。おまけに相手は自分のことを卑下しているらしいブルーですから、余計に無駄かもしれませんが、気休め程度にはなるはず。事実ですし。

 さて、それではブルーには色々と聞いてみたいことがあるのですが、まだ一件落着とはいきませんので、話を進めましょう。


「そんなブルーに頼みがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「へっ? た、頼み、ですか……?」


 肩をビクンと跳ねさせて、怯えたように恐る恐る聞いてくるブルー。安心させようとしてわたしはにっこりと微笑んだのですが、逆効果だったようで、さらに小さくなってしまいました。このまま怖がらせ続けたらいつか消えて無くなってしまうんじゃないでしょうか。


「無茶なことを頼んだりはしませんよ。安心してください」

「ひぃ……!」


 この子、わたしに恐怖心を抱き過ぎではないですか? 気のせいですか? ちょっと強引に手伝わせ過ぎましたかね、もしかして。

 まぁそれは後で謝罪を入れるとしましょう。いまはそれよりもやらなければならないことが目の前にたくさん転がっています。


「ブルーは葬儀屋として、普通に務めを果たしてくれればそれで大丈夫です。それならばできるでしょう?」

「……そ、それなら、なんとか、どうにか……やれる、かな……多分」


 どんどん尻すぼみに小さくなっていく声。最初にちゃんと声が出てるんだからどうしてそれを維持できないのか──は、どうでもいいですね。


「ならば頼みます。わたしはちょっと、やることができたのでここは任せました」


 青いねーちゃんとしてではなく、葬儀屋のブルーとして、お願いしました。

 わたしはそうですね……旅人として、旅人らしく、好きにさせてもらいましょうか。

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