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17話

 殴られたリーダーの意識はかろうじて残っているようでしたが、顔面がお餅のように膨れ上がっていてまともに喋ることもままならず、こんな顔面になるくらいならいっそのこと意識を失っていたほうが楽だったことでしょう。日頃の行いが悪いからそんな目に遭うんです。反省してください。


「止めないでよ!」

「もう充分でしょう」


 男はリーダーに殴りかかろうとしていて、わたしは後ろから腕を掴んで引き留めているのですが、非力で細くて軽くて可愛いわたしの体なんて、いまにも軽々と投げ飛ばされてしまいそうです。

 なので、圧縮魔法を応用して腕を固定するという、ちょっとだけズルをさせてもらっています。個人的なルールで一般人に魔法の使用は禁じているのですが、これはギリギリセーフということで。


「コイツらはおれのことをいじめたんだ!! おれだけじゃない、おれだけじゃ──!」

「これ以上彼らに手を挙げるのは、さすがに見過ごせません」


 もう一撃加えようものなら恐らく本当に死んでしまうでしょう。

 死んでいる人間を見ることは職業柄避けられませんが、人間が死ぬところはできれば見たくありません。

 彼らは魔人でもなければ魔教徒でもない、ただの悪党。ようは人間です。まだ救いようがある。


「……ねーちゃんはコイツらの味方?」


 おっと、こちらに敵意が向いてしまいましたか。さて、どうしたものでしょう。


「いいえ、それはハッキリと否定させていただきます。わたしは葬儀屋ですが、余計な仕事は好ましくないのです」

「……えっ」


 ブルーが小さく驚きの声を上げていたような気がしないでもないですが、それは一旦無視するとして。


「殺してしまったらそこで終わってしまうんですよ? 仕返しをしたいなら生かしておかないと。でしょう?」

「…………そう、かも」


 男の体に憑依した子どもは不完全燃焼ながらも、渋々といった様子で体の力が抜けていきます。物騒かつ適当な言い訳ですが、この場が収まるなら良しとしましょう。

 完全に体の力が抜けて敵意も霧散し、小鹿のように足を震わせながらも頑張って壁の穴の前に立ち塞がっているブルーに向き直りました。


「葵ねーちゃん……ありがとな」

「いっ、いえ……別に……すみません」


 またブルーはわけもわからないままに謝っています。

 と思った瞬間、まさに糸が切れた人形の如く男がぶっ倒れてしまいました。息はあるので死んではいないようです。

 一時はどうなるかと思いましたが、どうにか人死は出さずに済んだようですね。怪我人は大量ですが。

 ……いえ、人死はとっくに出ていましたか。もっと早く駆けつけることができていれば……なんて、わたしらしくもないことを思わずにはいられません。

 わたしの視線は、部屋の物陰へ。


「……やはり、死んでいたんですね」


 そこでは小さな命が、儚くも無惨に、散り去っていました。

 わんちゃんの飼い主である誘拐された男の子は、野蛮な男たちの手によってすでに息を引き取っていたのでした。

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