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16話

 最初に言っておきますと、わたしの出番はほとんどありませんでした。


「ああ? てめぇ急になに言ってやがる?」


 仲間のはずの男から突然恨みの言葉をぶつけられ、リーダーは困惑の表情を浮かべています。

 わたしにもなにが起こっているのか把握し切れていませんが、おおよそのことは想像がつきます。

 これは恐らく〝憑依〟状態と思われます。あるいはあれは〝降霊〟とも言うそうです。わたしってば博識。どや。

 それらはつまり、死んだ人間の魂が生きている人間の体を支配している状態のことを指すそうです。

 これは魔人と似ていますが、魔人とは似て非なるもの。宿っているのが悪魔ではなく人間の魂ですし、宿主も死者ではなく生きていますから。


「いいから捕まえてろって! てめぇ人質の意味わかってんのか?!」


 せっかく捕らえたブルーの拘束を解いてしまって、リーダーからすれば意味不明でしょう。(いきどお)るのも無理はありません。ですがもう遅い。

 この場はすでにブルーの特殊な能力によって掌握されてしまいました。


「このやろぉ!」


 ただ突っ込んでいって、ただ殴る。まさに子どもの喧嘩のような動きでありながら、その威力は桁違いでした。

 魂で強引に肉体を動かしていると言えばいいでしょうか。例えるならば人形(にくたい)を操って遊ぶ子ども(たましい)、といったところですかね。

 小さな人形ならば子どもの力でも腕をへし折るくらい、わけありませんよね? いまはそれに似た状況になっているのです。

 その証拠に──


「ぶがぁ?!」


 ただの駄々っ子パンチでしかないにも関わらず、大の人間を吹き飛ばして壁をぶち破るほどの威力がありました。そしてその衝撃に耐えられず、自分の手もボキボキに折れ曲がっています。

 ちなみに殴られたのは双子のAのほうです。これは一撃で伸びてしまっているでしょうね。

 次に睨みつけたのはB。先ほどの一撃の威力を目の当たりにしていますから、Bは睨まれただけで「ヒッ」と身がすくみ上がっています。


「おまえもだ!」

「ぶがぁ?!」


 双子だからか、全く同じ言葉を言いながらぶん殴られて吹き飛ばされて、同じように壁をぶち破って外に放り出されてしまいました。

 非常にスッキリする光景に、わたしも思わずにんまりと笑みが浮かびます。おっと、いけないいけない、淑女らしからぬ態度でしたね、気を付けなければ。

 残る相手はリーダーのみ。逃げられないようにそれとなく立ち位置を移動し、人型に空いた穴の前に立ち塞がっておきます。もう片方の穴はこちらの意図を読んでくれたのか、ブルーが塞いでくれました。ビビりながらですが。よく頑張りましたね。


「このやろー!!」

「ま、待て! ちょっとま──」


 静止を呼びかけるリーダーの言葉に微塵も耳を傾けず猪突猛進。すでにバキバキに折れ曲がった腕で無理やりにぶん殴りました。

 子どもはなかなか話を聞いてくれないものですよね。よくわかります。うんうん。

 すでに折れていて、自分の体ではないからかリーダーのことを上手く殴れずに力が分散してしまって、壁をぶち破るほどの威力はありませんでした。

 ですが、ちょうどいいですね。さすがに見ているだけではつまらなかったので、ここから先はわたしの出番を返していただきましょうか。


「そこまでです。それ以上やると死んでしまいますよ──」


 怒りに任せて追撃を加えようとしている男──いえ、子どもの腕を後ろから掴んで静止します。




「──あなたのようにね」

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