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15話

「──そこまでだぜ、お嬢さん」


 わたしがやる気に満ちている中で、リーダーが勝ち誇ったように言いました。

 この男は状況を理解できていないのでしょうか? 自分に勝ち目なんて無いということを。


「白旗ですか? いまさら」


 向こうが完全に戦意喪失してもこちらは止めるつもりはありません。情け容赦は悪党にとって甘味(かんみ)でしかない。それにこの連中はすでにいくつもの罪を犯している。背負った罪は償ってもらわねばなりません。


「後ろを見てもその自信が続くかな?」

「そうやって油断を誘おうとしても──」

「…………す、すみませぇん……」

「──この気の抜けるような謝罪は……」


 敵前でありながら、手で顔を覆って珍しく自分を少し責めました。

 すっかり忘れていました。ブルーを外に置いて放置したままだということを。そして外にいる見張りは適当に気絶させただけだということを。

 気絶って案外意識を失っている時間短いんですよね。その間に手足を縛るくらいの余裕はあるんですけど、今回はめんどくさくて省いてしまったのが(あだ)となりましたか。

 誰かと一緒に行動することも滅多にありませんし。うっかりでした。てへ。

 ブルーは外にいた見張りの男に後ろ手に拘束されて、申し訳なさそうに項垂れていました。どうして一撃で沈むような男に易々(やすやす)と捕まっているんですかあなたは。


「で?」

「……で、だと?」

「わたしが人質程度で引くとでも? ああ、初対面だからそんなことわかりませんよね。失礼しました」


 もちろん彼女が純粋な一般人であれば人質作戦はわたしにとって非常に有効な手段だったと言えるでしょう。

 ですが、彼女はブルーと言う名を持つ同業者。なんなら原色なので立場的にはわたしより上だったりします。

 だからこそ、わたしの余裕は崩れません。


「自分でなんとかしてください。それくらい出来るでしょう?」


 葬儀屋の原色を名乗る人間が、ただの悪党にやられる器なわけがありません。もしそうなら、レッドに直談判しにまた本部まで乗り込んで暴れてやります。


「わ、私には……なにも出来ませんよぅ……!」


 泣きそうな声で首を振るブルー。長い前髪が揺れて、表情まで泣きそうになっているのが見えました。

 原色の名を持つ者が情けない。自分で言っているではありませんか。

 ──私には(﹅﹅﹅)、と。


「ならばどうすればいいか、わからないとは言わせませんよ。あなたは(﹅﹅﹅﹅)ブルーでしょう(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)?」

「…………」


 わたしの言葉に沈黙し、返事はありませんでした。

 そう。それでいい。


「もういいか? 本当は上玉をあまり傷つけたくねぇんだ。高値で売れるからな。わかったらとっとと諦めて──」


 そこで、ブルーは拘束から解放(﹅﹅﹅﹅﹅﹅)されました。そして、拘束していた男が言うのです。




「よくもぼくをいじめたな」




 その目には、幼さを感じさせる復讐の色が宿っていました。

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