14話
「「アレやるぞ」」
双子のハモる声に挟まれて、わたしは警戒を強めます。もちろんリーダーにも意識を割きつつ、どちらが先でも、同時でも、対応できるように集中。
同じ動きで双子の懐から取り出される折り畳みナイフ。カチャカチャと硬質な音を立ててあっという間に組み上がります。器用なものです。
「ナイフを増やせばわたしに届くとでも?」
両手にナイフで合わせて四本。視界にキラキラとチラつきます。
あまり喋らない双子の代わりにリーダーが口を開きました。
「上玉を傷物にするのはもったいねぇが、届くかもしれねぇぜ? それに俺らは殺しちまってもしばらくはお嬢さんの身体で愉しめるからよ」
「……はぁ。最悪で最低の気分です」
人前で堂々とため息をついたのはいつぶりでしょう。それほどにリーダーが吐いた言葉はわたしの神経を逆撫でしました。
リーダーの下卑た視線がわたしの体を上から下まで舐め回します。
「オメェらどの穴がいい? 褒美として先にくれてやるよ」
「前」
「後ろ」
「じゃあ俺は上だな。ほーら、頑張んな」
気分が悪くなるやりとりを目の前でされて、心の底から吐き気を覚えました。
こんな奴らはさっさと処理してしまいましょう。わたしの心の安寧のためにも。
なんなら、多少の魔法ならば解禁を許可しましょう。悪魔と無関係ならば使わないのがわたしのやりかたでしたが、わたしだって堪忍袋の緒が切れることもあるのです。
もちろん、殺しはしません。安心してください。
「命運尽きましたね。あなたたち」
「はっ。言ってな」
鼻で笑い飛ばすリーダーの言葉を皮切りに、双子が同時に動きました。
ナイフを投げてきたのです。息を合わせて。
対角線上にいる双子のナイフが交差し、交換されました。それを何度も何度も繰り返します。
「「嘘だろ……!」」
「本当ですよ? ご覧の通りじゃないですか」
わたしの身体にナイフが一本も刺さっていないことを両手を広げてアピールします。どや。
そう、投げたナイフが交換されているということは、わたしには当たっていないということ。相手が誰であれ、驚きの声と表情は興奮しますね。
「転職してみてはいかがです? 向いてますよ。大道芸人」
「はっ、そんなんになれたら苦労してねぇよ」
「まぁそれもそうですね。失敬」
なにをやっても上手くいかなかったからこうして落ちぶれて犯罪に手を染めているんですものね。
わたしは指をクイクイとして挑発してやります。
「ではどうぞ。続きを」
わたしが負けるわけがありませんので。




