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13話

「…………」


 よくよく観察してみれば、わたしにナイフで切り掛かってきた二人の男性は双子のようでした。髪型は違いますが顔のパーツが瓜二つです。一糸乱れぬ連携にも納得。戦闘中でなければ「通りで」と手を打ちたいくらいです。

 ただいま絶賛戦闘中なので、相手の腹を打つことで代わりとしましょう。

 奇麗に左右対称に構える男性二人。鏡が間に挟まれているかのようです。これは芸術点ですね。


「どうした? 来ないのか? さっきの威勢はどこにいったんだ? んん?」


 一向に攻めないわたしに安い挑発を仕掛けてくる男性。ここでは動かない彼をリーダー、双子を適当にAとBとでもしておきましょう。

 いまのところリーダーは余裕を見せているので脅威はありませんが、ナイフを持っている双子を相手に迂闊に動くのは危険なのです。

 魔教徒はナイフで武装した一般人の集団みたいなものなので適当に攻めても全滅など容易ですが、目の前の彼らは少なくとも一般人ではありません。それなりな熟練度があることは先程の一撃で推し量れました。

 ゆえに、先手必勝はここでは封印しておいて、後手必殺の構えでいこう、という作戦。


「そちらこそ、か弱い乙女を前によだれを垂らしていながら襲い掛かってこないなんて、腰抜けですか? もしかして」

「言うねぇ……気の(つえ)ぇ女は嫌いじゃない。むしろ好きだ」

「わたしは嫌いです。気の強い女も、あなたのような下品な男性も」

「だったらますますお嬢ちゃんはここにいちゃいけねぇ。そういう連中がたんまりいるぜ」

「言われなくても出ていきますよ。事が済んだら、ですが」


 この街にわたしの求めるモノはないようなので長居は無用。

 それにここにいるのが全部でたったの5人というのも腑に落ちません。夏場に現れる黒光りする虫のように、悪も群れるもの、というのが経験則です。


「「──っ」」


 今度も寸分違わぬタイミングで双子が同時に動き出しました。初撃の挟み撃ちはほとんど正面からでしたが、今度は正真正銘、左右からの挟み撃ち。

 草食動物のように左右に目がついていたならばこの動きも目で追えたのでしょうが、そういうわけにもいきません。人間ですので。


「ならば」


 同時に対処することが難しいのなら、片方が来る前に片方を潰せばいい。簡単なこと。

 同じ理屈で水上だって走れます。もちろん冗談ですけど。

 踏み込みやすさを理由に左側(A)の薙ぎ払うナイフを下から跳ね上げるようにいなして、腹部に掌底を打ち込みます。


「ぐっ……?!」


 Aが呻きます。

 しかし軽い。いや、硬い。

 掌底は内蔵にダメージを通す攻撃ですが、こうも表面が硬いと効果も薄くなってしまいます。手応え的に防弾チョッキのようなものを中に着込んでいるようです。

 警備は不用心なくせに、準備は用心深いこと。


「──っ!」


 そんな一瞬にも満たない逡巡(しゅんじゅん)のうちにBが背後から襲い掛かってきました。

 取った! とでも言いたげな荒い呼吸と共に。


「甘すぎますよ」

「なっ──?!」


 そんなに息を荒げていては、位置もタイミングもバレバレです。


「惜しかったですね。残念」

「この女……!」

「後ろに目でもついてんのか……?!」


 なかなか喋らなかった双子の言葉を引き出せたことにちょっぴり優越感を覚えながら、指をクイクイと。


「──さあ、もう一度どうぞ。絶世の美少女からのお誘いですよ」


 どや。

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