12話
男性二人の挟み撃ちは、まさに言葉通りの挟み撃ちでした。小さな折り畳みナイフを素早く取り出し、二人の腕をハサミのように交差して左右から振り抜いたのです。
「──手慣れていますね。随分と」
「ほう……?」
こりゃ驚いた、とでも言いたげな吐息が座ったままの男性からこぼれます。
相手の武器がナイフで助かりました。そうでなかったらわたしのほうから先に手を伸ばし、相手の拳を受け止めることで防ぐ、という方法が取れなかったからです。
遺憾ではありますが、ナイフ使いを相手にするのは得意中の得意。魔教徒を相手に散々戦ってきました。
魔教徒とはなんぞやという説明は、ここでは割愛させてもらいます。今はそれどころではありませんから。
「抵抗する、ということでよろしいんですね。あなた方の答えは」
「…………」
余裕な態度を崩さない男性を睨みつけながら、最後のチャンスとして今一度問いました。
言葉としての返事はありませんでしたが、両手を上げて肩を竦め、首を小さく左右に振る。聞く耳を持たないという、これはこれで立派な返事が返ってきました。
どうやら彼らは抵抗する、ということで決まりのようです。
「そうですか。──では、後悔しても知りませんよ?」
「お気遣い痛み入るね。その余裕、いつまで持つかな?」
「そっちこそ」
お互いに小さく口角を上げ、戦いの火蓋が切って落とされました。
まずは挨拶代わりに素早くしゃがんでナイフをやり過ごし、足払いを左右の男性に。これは飛び退いて軽々と躱されてしまいました。
というか着物の裾をめくるという動作を挟んだので間に合いませんでした。
「おいおい、本当に戦うのか? その格好で? 俺たちも舐められたもんだな」
木箱に座っている男性は動く気が無いようなので実質二対一。その後の一対一という流れになるでしょうか。
確かに着物は動きづらいですが、裾に関しては少し前を開けば脚の可動域がぐっと広がるのでなんとかなるでしょう。わたしの白くて眩しい美脚が敵の目をくらませる効果も期待できますし。どや。
「ヒュゥ♪ 眼福だねぇ。もっとよく見せてくれよ」
「わたしの生足は高くつきますよ。変態」
「その価値はありそうだ」
その気にさせてしまいましたかね。やっぱりわたしってば罪な女。どや。




