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11話

 一人は撃沈しましたが、まだこの蔵の中には三人の男が残っています。潰したのは一番体が大きくて強そうな相手でしたが、人は見た目ではありません。わたし自身が良い証拠。

 油断せずに参りましょう。


「大人しくその子を解放するなら良し。抵抗するなら排除します」


 邪魔なので床に転がる大男を蹴ってどか──せなかったので踏み付けて、三人に集中します。

 足元で無様に転がっている大男と違い、この三人は多少なり腕に覚えがありそうですね。下手に攻めて来ずに様子を(うかが)っていることや油断のない構えから、そう感じました。


「お嬢さん、この辺じゃ見ない顔だけど観光か? だったら来る場所間違えてるぜ? 回れ右してどうぞ」


 奥で木箱に腰掛けたままの男性が静かに問いかけてきました。


「一人一人の人間の顔を覚えているとでも? あなたは」

「覚えてなくても、ここに長く暮らしてればそれくらいはわかる。そんないい着物着てこんな薄汚れたところに来る馬鹿なんざまずいないし、お嬢さんほど顔の良い女は他所(よそ)モンだってすぐわかる」


 この方が言うには、どうやらわたしほどの美貌の持ち主はこの街にはいないようです。どや。

 しれっとわたしのことを馬鹿にしているような気がしましたが、そこは意図的に聞かなかったことにしましょう。自分の都合の良いように物事を捉えられるのは心身の安定に一役買ってくれるのでおすすめです。


「それで、どちらにするんですか? 解放ですか? 抵抗ですか?」


 もちろん解放を選んでくれることを心から願っています。こうなるといつも戦ってばかりのような気がしますが、わたしだって戦いたくて戦っているわけではないのです。戦わざるを得ない状況なだけで。

 男性は静かに手を組んで「ふむ……」思案します。


「ここを嗅ぎつけるだけでも、おっかないお嬢さんだからな。解放してやりたいところだが(﹅﹅﹅﹅﹅)

「……ところだが?」


 ああ……この流れはやはり、いつものやつですかね。

 男はゆっくりと首を左右に振りました。


「こっちにも事情があってな。そういうわけにもいかないんだ」

「ですよね」


 やっぱりわたしの予想通りとなりましたか。この流れになるのはもはや運命と言っても過言ではないのかもしれません。

 わたしってば「ですよね」ってよく言っているような気がしてきました。


「あなたの言う通り、わたし結構強いですよ? こう見えても」


 女性として理想的な体系ですので力はありませんが、力の使いかたは熟知していますから後れを取らない自信があります。相手が男性であろうとも。


「──やれ」


 やはり静かな男性の合図とともに、今まで一言も喋らなかった二人の男性が挟み撃ちをするように襲い掛かってきたのでした。

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