表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱魔王の鬼畜世界放浪記  作者: からころから
8/18

七話 強くなるためには

 「まずは索敵か…《反響探知サーチ・エコロケーション》」


 いつまでもいじけてはいられない。


 我とカエルや盗賊ボスの間にある隔絶した差とはズバリレベルであろう。


 その壁の乗り越え方、簡単である レベリングだ。

 どうやら近くにゴブリンの集落があるようだ。


 前の世界なら堂々と正面突破していただろうがあのジャイアントフロッグでさえあれほどなのだ(盗賊は論外)……


 ジャイアントフロッグは個としての強さだが、ゴブリンは群だ。

 一体一体は弱いだろうが、集団で襲われると危ないだろう。


 よって、隠密魔法を使い偵察するとしよう。

風精霊の加護プロビデンスオブウィンディーネ


高位の魔法は効果は優れているが魔力消費が多すぎる。


 そもそも敵から発見される確率を下げる《潜伏(ハイド)》や音を消す《無音(サイレンス)》などの魔力消費が低い魔法を習得していなかった。

 それは仕方ない事で、彼は生まれた頃から強者の部類に入り、習得する必要が無かったのだ。


 「こんな事になるなら取っておけばよかった……」


 そんな後悔が胸をよぎるが今ある物を有効的に使うしか無い。


 とりあえず…いざ行かん!ゴブリン村!


 慎重にゴブリン村まで足を進める。


 前の世界にもゴブリンが職業暗殺者を持つ事で進化できるゴブリンアサシンがいた。


 そいつは終盤のゴブリン村にいたが前の知識がここで通用すると思っては行けない。

 魔法抵抗力が高く探知をすり抜ける個体がいるかもしれない…

 (やっぱり帰ろうかな。)


 そうこうしているうちに誰とも会う事なく集落に到着する。


 見たところ比較的強いホブゴブリンやゴブリンソーラサーはいないようだ。


 集落の中には狩班の男ゴブリン以外にも子供や女や年寄りがいた。

 体が細い男ゴブリンもいてそいつは女たちの手伝いをしていた。


 コレにはバエルも面食らう。


 普通は病気や肉付きの悪いゴブリンは口減しのために殺されるのが常識だ。


 これは人間などの貧民街で良く見かけた事がある。

 もう少し観察してみよう。


 たった今狩班が帰ってきた。

 ゴブリンよりも大きい鹿を背負っている。


 狩班の武装はどれも短剣を持った前衛ゴブリンが2体、弓兵ゴブリンが1体の3人班で行動している。


 集落には最低2体の簡素な槍を持ったゴブリンが見張りをしていて、物見やぐらから弓兵のような装いのゴブリンが辺りを警戒している。


 集落にいるゴブリンは全員が角笛を持っており、非常事態になればすぐに駆けつけられる。


 となると狩班のゴブリンは勝てない、集落なんかはもってのほかであるとしたら狙うは…





 「ここまでおいでー!」


 「待ってよーバルー」


 2人の子ゴブリンは年相応の元気を爆発させ、仲良く追っかけっこをしている。


 やがて疲れたからか、その場に仰向けに寝転がる。

そのまましばらく空を眺めていた。


 「ねえバル」


 「何だカーラ?」


バルと呼ばれた方は腰に小さな木剣を携えた少し吊り目で活気に満ち溢れた子だった。


 逆にカーラと呼ばれた子どもは可愛らしい帽子をかぶってるタレ目のおっとりとした子だ。


 2人は性格は違えど兄弟のように仲が良く、周りのゴブリンからも仲がいいと評判だった。


 「あいつまだ来ねーのかよー」


「仕方ないよ、今日は狩班の順番が回ってきて捕まえた動物の解体を手伝っているんだって言ってたもん。

 それにバルの家も狩班だったでしょ?

 手伝わないと怒られるんじゃ無い?」


「うるせー!親みてーなこというなよ。

 大体子供が遊んで何がわりーんだ!」


 2人の会話に割り込むように土を踏み締める音に交じって荒い息づかいが聞こえてくる。


 2人は勢いよく振りかえる。


 「もー!こんな所にいた。村中走り回ったんだからね!」


 「わりいわりい」


 「悪いじゃ無いわよ!ママごとセット持ってくるの大変だったんだからね⁉︎」


 よく見ると手には小さなテーブルとお皿が握られている。


 「え〜、今日は英雄ごっこしたい気分だったのに〜」


 「バル?昨日ニーナと明日はママごとするって言っていたよ?」


 ニーナはバルやカーラと同い年のゴブリンで、太陽のような笑顔が特徴の女の子である。


 「うるせー!聞こえませーん」


バルはまだ駄々をこねている。


 「あんた…手伝いサボったでしょう。」


 「うぐっ!」

 痛いところを突かれたとバルは顔を引き攣らせる。

 「言っちゃおっかな〜、ママごとをするって言うならバルはうちのを手伝わせてたってあんたの親に言っとくけど〜」


 ニーナはいたずらっ子の笑みを顔に貼り付け、バルににじり寄る。


 「分かったよ…やるよ!やればいいんだろ!」


 「さっすがバル〜分かってんじゃん」


 カーラはニーナが徐々にバルの扱いが上手くなっている事に苦笑いする。


 「それで、今日は何をするんだい?」


 「ふっふっふ〜、今日は妻に言った時間より  

早く帰って来たパパゴブリンが家の中から知らない男ゴブリンと自分の妻ゴブリンの声が聞こえて来て、それを友に話して妻ゴブリンと男ゴブリンを懲らしめるって話よ!」


 「何だ!そのどろどろした話!」

 

 ニーナはバルのツッコミを軽く流して話を進める。


 「妻ゴブリンは私、バルはパパゴブリンね!カーラはチャラい男ゴブリン。」


 「ええっ?嫌だよそんな役!」


 カーラは不名誉な役に異議を申し立てたが気の弱いカーラが同い年の女の子の中で1番気の強いニーナに勝とうなんて無理な話であった。


 そしてカーラは不名誉な役を背負ったまま一日中ママごとに付き合わされる羽目となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ