プロローグ
私はパレット・ユル・アセノスフェアー
聖法皇国アセノスフェアーの第三皇女にして、姫巫女の地位にあり神殿で皇国の安寧を祈る女神官の立場にあった。
第一皇女は原初の光の神に仕え、第二皇女は深淵の闇の神に仕え、第三皇女の私は二大柱の神々以外の神に仕える巫女で、まぁ所謂、神聖法力が姉皇女に比べると足りないから、国一番の原初の光の神、聖神セイに仕える役割は第一皇女のオーラ姉様に。国二番の神深淵の闇の神ザインに仕える役割は第二皇女のエラント姉様が拝命していた。
産まれた時から海の神の神殿で過ごし、皇宮で過ごした事はない、第三皇女(私)は他の神々を統括する神殿に仕えている。
姉姫方とは違い、私は皇宮で過ごした事が無いために満足な皇女教育も受けていない。皇女とは名ばかりのようなものだ。
でも、私はそんなに取り柄も無いし、神々に仕える仕事は好きなので、構わないのだけど。
薄桃色の髪に紫色の目は皇族にある平凡な色合いだし、姉姫方に比べたら背も低いし、年齢も18歳には見えない、所謂童顔である。
皇女なのに姉姫方とは違い結婚の申込みすら無い、、まぁ、女神官だから婚姻しなくても一生仕事には困らないけど、、。
そんな私だからか、あまり合わない父皇から久しぶりに呼び出しがあったかと思えば、人身御供の様な内容であった。
◇◇◇
「聖なる原初の光と深淵なる闇を統べる、聖皇カールスバーグ陛下、姫巫女パレットがご挨拶申し上げます。」
姫巫女の制服である金色の刺繍入りの神官服の裾を持ち最上級の挨拶をする。
大皇宮の中の一際きらびやかな玉座に腰かける人物こそが、30ヶ国の諸外国を纏める聖法皇国アセノスフェアーの第11代聖皇カールスバーグ・イル・アセノスフェアーである。
「パレット、よく来た。そなたに折り入って頼みがある。」
私の挨拶を早々に仕草で辞めさせると、小声で話し始める。
「刻の神の神託がおり、このアセノスフェアー皇国が、近い将来に崩壊し、無くなる予言がくだった。私達は創世の神よりこの地の開拓と守護を任せられたアセノスフェアー皇家である。何としても皇国を未来に繋げなくてはならない。」
偉大なる聖皇様は粛々と爆弾な御発言をされたように思う。
創世物語の聖神セイ・コームが創ったアセノスフェアー大陸、その一番清き場所に大陸と同じ名前の国を初代の大姫巫女オーラと建国したとされるのが、我が皇国である。
初代の大姫巫女は生涯をセイ神に仕え、セイ神を皇国の皇神と定めた。それにより皇国を統治するのはセイ神の力を継いだ聖皇が、皇国の守護を担うのは大姫巫女オーラの力を継いだ姫巫女が着任するという慣習がある。
創世物語から続く生ける歴史の我が国が、早易々と崩壊し無くなるはずはない。
しかし、刻の神の神託とは刻の大神官であるカリル・ライトに神託があったに違いない。
良く見ると、聖皇陛下の傍にカリル大神官が控えているではないか。
「カリル大神官。御言葉ですが我が皇国が易々と無くなるとは思えませんが、、。」
私は思わず父皇の言葉に応えず、カリル大神官に物申す。
薄紫色の髪を纏め、白銀色の目を持つ大神官はおもむろに一つの水晶を掲げた。
水晶は古い記憶を留められる優れた記憶装置で、様々な記録媒体として重宝されている。
その水晶には信じられない未来が記録されていた。
恐らく、カリル大神官が刻の神から神託を受けるのにあたり、わざわざ記録したのであろう。
内容は姫巫女の一人が創世の力の遺跡を発掘し、その力を用いて聖法皇国アセノスフェアーの神々の力を暴走させる。と言う未来であった。
聖法皇国アセノスフェアーの皇都は天空に浮かんでおり強固な結界により護られている。
その結界はそうそう破れるものではない。
聖女である姫巫女の力を丸々使って創られる結界だからだ。
しかし、神託内容は姫巫女の一人がとある。
姫巫女はオーラ姉様、エラント姉様、私だけだから、この中の誰かがアセノスフェアー皇国を崩壊に導くと言うのだ。そんな事ありうるのだろうか。皇国が崩壊する力を引き出すなど、私には難しい。
父皇も解っていて、姉皇女では無く私呼んだのだと察せられた。
刻の神の神託は絶対だ。
となると、未来は変えられない可能性が強い。
私は急速に考えが巡り理解する。
震え始めた腕をもう片方の腕で掴み、どうにか落ちつこうとしたが、きっと失敗しているだろう。
「聖皇陛下、私は何をしたら良いのでしょうか?」
意を決して発言したが、この発言を私は後々後悔する事になる。