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第七十三話「妖精喰い」

ペタルを手放して右足を軽く後ろに引き、自身に身体強化の魔法をかける。


猛烈な勢いで突進してくる妖精喰いに対し、ワタシは渾身の回し蹴りを放つ。


確実に、その体の中心を捉えました。



が、しかし。



グニュンッ

「‼︎」



柔らかい物を思い切り蹴ったような感触。

手応えは、薄い。



スパアァァンッ‼︎

ズガガガガガガガガガガガガッ‼︎



ワタシが蹴り飛ばした妖精喰いは、飛ばされた勢いのままに辺りを跳ね回り、更に加速していきました。


折れる枝、削れる地面、剥がれる樹皮。


これ以上は目で追えなくなる。

ならば。



先程と同じように右足を軽く後ろに引き、集中。

なおも激しく辺りを跳ね回り、加速していく妖精喰いの動きを予測し、ワタシの前を横切る瞬間に、足を、蹴り、上げる!



グニュスパアァァァンッ‼︎



上空に打ち上げてしまえば、これ以上加速する事は無いだろう。


そのように考えつつ、ワタシはペタルに問いかけました。



「ペタル、“あれ”は何ですか」


『“妖精喰い”よ。アーシら妖精の天敵!メチャクチャしつこい上に、メチャクチャ鼻が効くの。妖精がいるって分かったら、いつまでもいつまでもずーっと追っかけてくるのよアイツ。鬱陶しいったらありゃしないわっ』


「妖精の天敵ですか」


『そう、天敵。アイツ、好き好んでアーシらの事、食べるのよ。アーシらからはアイツの事“見えづらい”から知らない内に近づかれちゃって、パクッといかれちゃうわけ。ほんっと最悪!』


「精神に作用する魔法を使う、と」


『それもあるけど、ちょっと違うわ』


「と、いうと?」


『アイツのあれはあーいう“体質”なのよ。妖精からは“見えづらい”、他の生き物からも“気付かれにくい”、“警戒もされにくい”。多分、探知の魔法にも引っ掛かりにくいんじゃないかしら?』


「なるほど、厄介ですね」



袖を捲り上げた後、改めて右手にナイフを構え、左手で魔術の用意をしておく。


遥か上空に蹴り飛ばされた妖精喰いは、フワフワとゆっくりと下降しながらワタシ達を見下ろしてきており、こちらの様子を伺っているように見えました。



『キミドリ、アイツの鼻、触っちゃダメよ。噛まれるのもダメ。魔力も生命力も精神も、持っていかれちゃうから』


「承知しました」



左手を妖精喰いに向け、攻撃用魔術を展開、放とうとした時、ワタシの左肩が掴まれているのに気が付きました。



「ペタル」


『何よ』


「顔色が悪いですよ」


『…仕方無いでしょ。アイツ、嫌いなんだもん』


「…逃げますか?」


『逃げ…たいけど、きっと追いかけてくるわ。それに逃げ切れても、多分、アイツここに戻ってくるし、いつかあの場所に辿り着いちゃうわ…』


「そうですか。…では、ここで仕留めていきましょうか」



諦めが悪く、鼻が効く。

妖精の匂いがする限りしつこく探し回り、いつかは辿り着く。


つまりそれは、あの場所にいる妖精達に危険が及んでしまうという事。


それだけは阻止しなくては。



ワタシは魔術を一度解除し、左手でフードを目深に被りました。



「ペタル、フードの中へ。その方が守りやすいので」


『…そうするわ』


「えぇ、どうぞ」


『あとアイツ、魔法も魔術も効きづらいから、もっと物理的な方が良いわよ』


「ご忠告、痛み入ります」



魔法、魔術は効きづらい。打撃の手応えも薄い。


と、なれば。


魔術の展開は取り止め、左手に予備のナイフを持つ。

斬撃主体の攻撃に切り替える。



「イィイ゛ア゛ア゛ァ」



様子を伺うのに飽きたのか、自分で隙を作る事にしたのか。

妖精喰いは唸り声をあげて魔力の球、“魔力球”を五つ生成し、こちらに向かって放ってきました。



「しっかり掴まっていて下さいね」



ズカァンッ!ズガァンッ!ズガァンッ!ズガァンッ!ズガァンッ!



放たれた魔力球の間を潜り抜け、妖精喰いに向かって横に回転をかけながら跳躍。


右手を大きく振りかぶり、左から右にナイフを()ぎました。


当然、妖精喰いはそれを避ける。


しかしそれは想定内。


左手のナイフを手放し魔法陣で固定。

体を思い切り捻り、固定したナイフを打ち付けるようにして、踵落としを食らわせてやりました。



ガンザクズドムドガァンッ‼︎



地面に叩きつけられる妖精喰い。

大きく跳ね返ろうにもナイフが邪魔をし、失敗。


ナイフが外れ、低い位置で跳ねるのを見逃さず、魔術で足場を作り、妖精喰いに向かって跳び、逆手に持ち替えた右手のナイフを、振り抜く。



スパァンッ!



地面に落ちると同時に、妖精喰いを叩き切りました。


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