第六十一話「イタズラばかり、冗談ばかり」
…とまぁ、そんなこんなで、ワタシは沢山の妖精さん達から、沢山のイタズラを仕掛けられながらも、それと同じだけの事を教わって、日々を過ごしていきました。
あっ、一応、彼女達の名誉の為に言っておきますが、ワタシは妖精さん達からイタズラを受ける事はあっても、嘘を言われた事はほとんどありませんでした。
言ったとしても、イタズラを仕掛ける為の軽い嘘であったり、すぐに冗談と分かるような話ばかりだったのです。
ワタシが冗談をうっかり信じそうになった時には、すぐに訂正もしてくれましたしねぇ。
どうやら妖精という生き物は、嘘をつくのが苦手な者が多いようで、基本的には、本当の事しか言わないようです。
ただまぁその分、誤魔化したり隠したりするのは得意なようでしたから、彼女達の言う事を全て鵜呑みにするのは、少々危険ですけどね。
いつもの“あの“妖精さんを知っていれば分かると思うのですが、彼女達、“知ってる事を言わない“のが異様に上手いんですよねぇ。
ワタシはそれに一体、何回のせられてしまった事か…。
礼拝堂の一件なんて、本当に長い期間、気が付きませんでしたから、多分、気を逸らしたりするのも上手いんでしょうねぇ。
まぁ、そもそも言わなきゃいけないと思っていない、というか、気にも留めていない事すらありますから、彼女達も騙すつもりは無いのかもしれませんが…。
あぁ、すいません。
これ以上はただの愚痴になってしまいますから、別の話をしましょうか。
季節は移り変わり、二度目の夏。
その日ワタシは、書斎で魔術書“中級編“を読みながら、ペンを走らせていました。
その頃には、ワタシが元々持っていた魔術書は読み終わっていたので、それより少し難しい本に手を出し始めていたのです。
頭を捻らせながら、時々メモ用紙に要点を書き、自分にとって分かりやすいように、まとめる。
息をつき、なんとなく窓の外に顔を向けてみれば、いつもと同じように、複数の妖精さん達が遊びに来ていました。
薄緑色の羽毛のような髪をたなびかせている風の妖精さん。
ドレスのように花弁を纏っている花の妖精さん。
昆虫のような複腕と、目を持っている虫の妖精さん。
思えば、ワタシはそれまでに沢山の妖精さん達と出会いました。
先程述べた、風の妖精さん、花の妖精さん、虫の妖精さんを始め、月の妖精さん、大地の妖精さん、水の妖精さん、火の妖精さん、木の妖精さん、光の妖精さん、闇の妖精さん、など。
天候の妖精さんや、季節の妖精さん、なんて方もいらっしゃいましたねぇ。
あぁ、今日も沢山遊びに来ているなぁ。
などと考えていた時に、いつもの“あの“妖精さんが目に入ります。
風の妖精さんのように噂が好きで、花の妖精さんのように花弁を纏っている、“あの“妖精さん。
しかし風の妖精さんのような髪は無く、花の妖精さんほど花弁を纏っていない、“あの“妖精さん。
そういえば、虫の妖精さんのような複腕も無ければ、他の妖精さん達のような特徴も持ち合わせていない。
ワタシは、ふと思いました。
“あの“妖精さんは、一体、何の妖精さんなのだろう、と。




