第五十八話「大地の妖精“ノーム”」
『あっ!“ミッさん”と“メェさん”と“ネムッさん”じゃない!久々ー!』
『おー!やっぱりおったか“花弁の”!』
『ざっと半世紀ぶり、といったところかの』
『元気そうで何よりじゃわい』
「おしりあい、ですか」
『そ!もうずーっと前からのね!』
『古馴染み、というやつじゃな』
「なるほど」
『…で、お前さんが噂のゴブリンで間違い無いな?』
「えぇ、はい、あってます」
『ふーむなるほど…ちょっと良いかの?』
「はい?」
…と、いう会話があったのがお昼前の事。
『『『ふーむ』』』
「…あの」
『やはり会話からも邪気は感じられんなぁ』
『敵意も無く性格は穏やか、知性もある』
『じゃが特徴を聞くに、その辺の魔物より魔物しとるのぉ』
「あの」
『『『変わった奴じゃのー』』』
「…すいません」
『ん?おーすまんすまん。時間を取らせたの』
『お前さんがあんまり珍しいんで、ちと熱が入り過ぎた』
『まぁ噂には聞いとったが、害が無さそうで安心したわい』
「そうですか…」
彼らが来てから、お昼を過ぎるまでの間。
ワタシは彼らから質問責めにあっていました。
どうやら彼らは暇潰しと称して、ワタシが本当に安全な存在であるかどうかを確認しに来たようでした。
その為、ワタシは彼らからアレやコレやと質問され、その度に答えていたわけなのですが、話している内に、ワタシ自身にも興味が湧いたようで、質問の量は増えいってしまったようです。
ワタシも気になる事があったので、いくつか聞いてみようと思ったのですが…圧倒されてしまい、ほとんど質問できませんでした。
聞けた事といえば、
彼らが大地の妖精“ノーム”である事と、
いつもの妖精さんが彼らから“花弁の”と呼ばれている事と、
彼らがそれぞれの“ミッさん”“メェさん”“ネムッさん”と呼ばれている事、くらいでしたかねぇ。
他の妖精さん達に比べ、何かと答えてくれそうだったので、色々と聞いてみたかったんですが…まるで隙が見つからなかったんですよねぇ。
あぁ因みに、髭を三つ編みにしているのが“ミッさん”で、眼鏡をかけているのが“メェさん”、少しよれた星柄の帽子を被っているのが“ネムッさん”だそうです。
『のぅ、“花弁の”よ』
『んー?なぁにぃ?終わったぁ?』
『いやな、こやつと話をしとって、ちと思ったんじゃが…もしやこやつ、妖精の事、何も知らんのでは無いか?』
『えー?自己紹介くらいはしてるわよぉ?』
『いや、もっと根本的な事じゃ』
『あー…そういえば言ってないわぁ』
『何も知らん奴をここに連れて来たのか…』
『別に説明するような事も無いでしょ?アーシらはアーシらだしぃ、ここはここじゃない?』
『そうもいかんじゃろうて。こやつは知りたがりと聞いとるし、教えてやっても良かろうに』
『えー?んーそうねー…じゃあミッさん達が教えてあげて♡』
『お前さんという奴は…はぁ、まぁ良い。のぉ、“堕ちた同胞”よ』
「…ワタシのこと、ですよね?」
『そうじゃ、“堕ちた同胞”よ。お前さん、妖精がどのような存在なのか、興味はあるかの?』
「どんな、そんざいか、ですか?」
『そうじゃ』
「…やっぱり、まもの、とは、ちがう、ですか?」
『…お前さん、それはあんまり言わん方がええぞ』
『ワシらにとってそれは、酷い侮蔑じゃ』
「え」
『…やっぱりキチンと教えとかんといかんなぁ』
『こんな場所におるんじゃ、この機会にしっかりと聞いていくと良い』
「…おねがい、します」
『ふむ、ではまず何から話そうかの』
『まぁまず“精霊”について、からじゃろなぁ』
こうしてワタシは、彼らノームによる“妖精”にまつわる授業を受ける事になりました。




