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第五十一話「門」

『こっち、こっちよ♪』



妖精さんに連れられて、奥へ、奥へと進むワタシ。


あちらこちらと連れられて、同じような場所を何度か通り、辺りの雰囲気が少し変わったと感じられた頃。



『ここよ』



ワタシは、目的地に辿り着いたようでした。



そこは、見晴らしの良い山の頂上。

木が二本立っているだけで、他には草しか見当たらない、夜空のよく見える場所でした。



「ココ…?」


『そ。じゃあ、少し待ちましょ♪』



明らかに、本があるような場所では無い。


いや、それ以前に、山頂に辿り着くまでに時間がかかっていなさ過ぎる。


小さい山というような景色では無い。


ずっと登っていたわけでも無いのに、辿り着く筈が無い。



疑問は次々と浮かびましたが、聞いたところで妖精さんが全てに答えてくれるとは限りませんでしたし、全て聞いていてはキリがありませんでしたからね。


ひとまずそれらの疑問は置いておき、とりあえずは大人しく妖精さんの言う通りにしておく事にしました。



二本の木に背を向けて、少し離れた場所の地面に腰を下ろし、空を見上げて、ただ、待つ。


そこに辿り着くまでの間にはあった筈のいくらかの雲は、いつの間にやらすっかり消えていて、そこから見える星々も、何故か少し違ってみえました。



ぼんやりと空を眺め、待つ事少し。


空が、白み始めました。



「?」



ワタシの感覚より、随分と早い夜明け。


この場所に来て自分の感覚までおかしくなってしまったのかと思い、辺りを確認する為に後ろを振り向きました。


目に映ったのは、先程とは様子の違う二本の木。


木がお互いに向けて一本ずつ枝を伸ばし、その二本の枝に絡まるように、蔓状(つるじょう)の植物が生えていたのです。


そして、そこから溢れ出す光。


まるで昼間のように明るい柔らかな光は、ワタシ達のいるこちら側を照らしていました。



『行きましょ』



声を失い、思わず立ち上がったワタシにそう言って、妖精さんはワタシの前に出ました。



『ほーら、はやくはやく♪』



急かす妖精さんの言葉に背中を押され、ワタシは一歩、また一歩と、恐る恐る前に進み出ました。


二本の木、いや、門から溢れる明るい光は、夜の闇に慣れたワタシの目にはとても眩しく感じられ、近くごとに目を(しか)めてしまい、上手く開けてられなくなりました。


そして門のすぐ近くまで来た時、光に紛れて薄らと何かの建物が見えたような気がしました。


あれが本当の目的地だろうとそう思い、入口に足を踏み入れる寸前、ワタシは躊躇したのです。



本当に入ってしまって良いのかと。



しかしそこまで来ておいて、やっぱり辞める、なんて事、ワタシの好奇心が許してくれません。


クスクスと笑い、一足先に中へと入っていく妖精さん。


それを見送った後、ワタシは意を決して足を前に出し、門を潜り、光の中へと入っていったのです。


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