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第四話「一人旅」

こうして一人旅は始った…のですが、実は問題がありました。


ワタシはこの時、ほとんど何も持っていなかったのです。


イノシシの魔物との戦闘の際に、手に持っていた筈の狩り用の刃物をどこかに落としてしまったようで、その時ワタシの手元にあったは体に(まと)ったボロ布だけでした。


宿無し、武器無し、食糧無し。


そんな訳でしたから、それからしばらくの生活というのは、本当に、本当に大変でした。



狩り自体には慣れていたとはいえ、一匹で行うのはイノシシの魔物の時を除けば初めてでしたし、何より武器が無いのでなんとかウサギを一匹捕まえるので精一杯でした。


自分が狩られる可能性だってありましたから、常に周囲を警戒していなくてはいけませんし、一箇所に留まるつもりは無かったのでまともに拠点も持てず、寝床の確保には苦労しましたねぇ。


荷物を持とうにも、カバンなんてそもそも存在さえも知りませんでしたから、手に持つか身に(まと)う他ありませんでした。


体に(まと)ったボロ布はあくまでもボロ布でしかないので、体を守ってなどくれません。


心を(むしば)む“悪い孤独”から、心晴れやかな“良い孤独”になったとはいえ、心に抱えた寂しさはいつまでも残り続けていました。



何もかも未経験、(ゆえ)に、失敗に次ぐ失敗。



獲物が狩れず腹を鳴らし、獲物にされて逃げ回り、せっかく拾ったキレイな石はすぐに落とし、木の上に作った寝床の寝心地は悪く、寒さに身を震わせて、あまりのさみしさに涙を流し、しまいには雨まで降ってくる始末…そんな日もありました。



先輩ゴブリン達が色々と作っていたのをよく観察していたので、寝床くらいならまともに作れるだろうと思っていたのですが…本当、見るのとやるのとでは随分(ずいぶん)と違いますよねぇ…。


しかし失敗は成功の元、失敗すれば学ぶもの、何度も何度も繰り返す内に、成功する回数は徐々に増えていきました。



一人旅を始め季節が一巡する頃にはすっかり手慣れて、ウサギくらいなら軽く捕まえられるようになりましたし、隠密行動も身につき、魔力も上がってきたので魔法の効果時間も伸び、より見つかり辛くなりました。


見つかったとしても、イノシシ程度なら武器無しでも充分に渡り合えるようになりましたし、隙をみて逃げるのも容易(たやす)くなりました。


寝床は探すのも作るのも上手くなり、それなりに眠れるようにもなりました。



さみしさにも慣れました。



あと荷物を持つのは諦めました。



そんなこんなで時は過ぎ、旅をして二度目の秋。

来たる冬に向けて、食いだめをしていたある日の事。



ワタシは、“人間”を見つけるのです。


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