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第三十九話「攻防」

()ける、()ける、(かわ)す、見切る。

受ける、流す、()らす、()なす。

走る、しゃがむ、跳ぶ、(ひるがえ)す。

刺す、切る、打つ、蹴る。


ワタシが魔樹の攻撃を全て(あし)らい逃げ回れば、魔樹はそれを追い根を振るう。

ワタシが攻撃を加えれば魔樹はそれを根で防ぎ、魔樹が攻撃を加えればワタシはそれを受け流す。


隙を狙いあう一進一退の攻防戦。


ワタシと魔樹は互いが互いの狙いの為に、長期戦を強いられました。



ワタシの狙いは“魔樹の余裕を削ぐ事”。

相手の苛立ちを募らせて判断力を奪うやり方は、ワタシの常套手段でしたからね。


対する魔樹の狙いはおそらく“ワタシの体力を削ぐ事”。

ジワジワと甚振り殺す為に、わざと決定的な攻撃は加えず体力が尽きるのを待っている。そのように感じました。



ワタシの体力が先か、魔樹の苛立ちが募るのが先か。


その戦闘はいわば、我慢比べのようなものでした。



ワタシが“闇玉“を放てば魔樹はそれを薙ぎ払い、魔樹が死角から根を突き刺させば、ワタシは身を翻しつつそれを切りつける。


ワタシが魔樹に近づけば魔樹は近づけまいと根で壁を作り、魔樹がその根で叩き潰そうとすれば、ワタシは植物を模した闇魔法“黒荊棘(くろいばら)“でそれを縛り付ける。


ワタシがそのまま根を引き千切ろうとすれば魔樹は逆に“黒荊棘“を引き千切り魔法を四散させ、魔樹がその複数の根でワタシを絡めとろうとすればワタシは跳躍し回避する。



ずっとそのような事を繰り返しました。



いくらかの時間が経った頃です。


いつまで経ってもくたびれる気配の無いワタシに魔樹は痺れを切らしたのでしょう。


それまでよりも遥かに早い速度で攻撃を仕掛けてくるようになりました。


苛立ちを感じる威力と共に。


正面から根を振り下ろし攻撃すると見せかけ死角から突き刺し騙し討ち。それに気を取られてる内に足に根を絡ませ固定し複数の根で殴りつける。絡ませた根を足ごと持ち上げ地面に叩きつける。叩きつけた後に上へと投げ一際太い根を振り下ろし潰す。


猛攻に次ぐ猛攻。


甚振り殺して楽しむのは諦めたのでしょう。

全力を持って潰しにかかっているのは明らかでした。


ワタシはなんとかその全ての攻撃を耐えきり、機会を待ちます。


まだ、もう少し、あと少し。


耐えきり生き残ったのが相当気に食わなかったようで、魔樹の攻撃は更に激化。


根のみならず本体すらも振り回し、枝で、葉で、幹で潰そうと躍起になり、ついには自身を支える最低限の根を残し、ほぼ全ての根を地上へと露出させました。



ワタシはこの時を待っていたのです。



ワタシはすかさず闇魔法“夜水面(よるみなも)“を発動し、広場の大地を真っ黒に染め上げました。


これで広場はワタシの物。


根を引っ込める事など許しません。


もちろん、闇を広げただけなら逃げられます。


ですから。


続いて“黒荊棘“を発動。

全ての根と本体を縛り上げます。


根を縛り上げ攻撃手段を奪ったならば、やる事は一つしかありません。



ワタシは左手の魔術を切り、右手のナイフは仕舞い、両手を魔樹本体へ向け、ありったけの魔力を込めて、もう一度“黒荊棘“を発動。


魔樹の周りに現れる大量の“黒荊棘“。

それらは一塊となりながら、魔樹へと纏わりついていきました。


身じろぎをし、枝を、葉を、幹を揺らし鳴らす魔樹。


幹から引き剥がそうにも根は縛られて動かす事が出来きず、根の“黒荊棘“を引き千切ろうにも、先程よりも強靭でびくともしません。



ビキッ



幹から嫌な音が鳴り焦りを感じたのでしょう。

魔樹は自身を支えていたであろう根を広場の外へ出し、ワタシに向かって根を伸ばしてきました。


が、時既に遅し。



「オレロ…!」



バキャバキャバキャバキャバキャバギバギバギバギバキッッッ‼︎‼︎‼︎


ズズゥン…


樹木の悲鳴のような音が広場に鳴り響き、


ワタシは魔樹をへし折ったのです。


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