第二十四話「疑問」
ガタガタガタガタ、馬車が鳴く。
パカラッパカラと、馬が行く。
逃げろ逃げろと、駆けて行く。
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ‼︎
「うわああああああああああああああっ‼︎」
「きゃああああああああああああああっ‼︎」
「“ヤミダマ”‼︎“ヤミダマ”‼︎“ヤミダマ”‼︎」
ワタシは以前、馬車移動での一日のスケジュールについて説明した際に、例外的な日もあると申し上げました。
「逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げ…」
「あなた‼︎気絶しちゃダメ‼︎起きて‼︎」
「ハッ⁈ダメだ、気絶しちゃダメだ気絶しちゃダメだ気絶しちゃダメだ気絶しちゃ」
「クッ…!キリガ、ナイ!」
例えば、
雨や風による天候の問題。
川や泉に立ち寄る為の寄り道、遠回り。
馬を休める為の休息日。
そして…
「あっ!ゴブリンさん!前に別れ道が!」
「クライ、ホウヘ、イケッ‼︎」
「暗い方、あなた右‼︎右よ‼︎」
「気絶しちゃダメだ気絶しちゃダメだ気絶しちゃダメ」
「あなた‼︎しっかりしなさい‼︎」
「ハッ⁈み…右‼︎右だジン‼︎」
ヒヒィンッ‼︎
魔物の襲撃。
ワタシ達を追い回していたのは、大量のハチの魔物。
この時すでに、三度目の襲撃を受けていました。
「“ヤミクモ”ッ‼︎」
闇玉を破裂させる形で発生させた“真っ暗”な煙、“闇雲”を魔物の前で炸裂させる。
奴らが怯み、ほんの一瞬、攻撃の手を緩めたその隙をつき、すかさず馬車ごと“認識阻害”、そして別れ道がただの一本道に見えるように“幻覚”をかけ、ダメ押しに、左側の道に向け闇玉を放ち、音と土煙を立てる。
あとは息を潜めて、通り過ぎるのを待ちました。
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ…
…
「…イッタ、デス」
「…はぁ〜、生きてる…」
「…」
白目を剥き気絶しているトニックさんをよそに、ワタシはフィズさんに聞かなければならない事がありました。
それは危機感半分、好奇心半分からくる疑問でした。
「…フィズ、サン」
「…はい」
「マリョク、ヒッコメル、デキナイ?」
「やっぱり、わかりますよね…」
「ワカル、マス」
ワタシが彼らを見つけた時、不思議に思った事があったのです。
まず一つ目。
彼女の魔力が森の中に、急に現れた事。
二つ目。
魔力があるのに、魔法を使わない事。
三つ目。
彼女の魔力が、とても魅力的に感じる事。
「…ちゃんと、お話しますね」
「オネガイ、スルマス」
「…その前に、夫を起こしても良いですか?」
「カマワナイ、デス」
四つ目。
彼女の魔力が、常に漏れ出ている事。
これら四つの疑問について、彼女はワタシに話をしてくれました。
…泡を吹いているトニックさんを起こしてから。




