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第二十話「思い合い」

自身に“身体強化”の魔法をかけ、女性を捕まえていた盗賊に近づき、片手で首を、折る。



バキッ‼︎

「ぁ゛…⁈」

「⁈」



一人目。


女性を奪い取り、“認識阻害”の魔法を解く。



「ひっ⁈」

「なんだ急に…っ⁈こいつ今どっか」



首を折った盗賊を投げつける。



「らぁあっ⁈」


「おいなんでこんなとこにゴブリンがいんだっ‼︎」


「知るかっ‼︎殺せぇ‼︎」



近づいてきた盗賊の攻撃を避け、胸にナイフを突き立てる。



「がはっ⁈」二人目。



「死ねオラァッ‼︎」

「待てそいつ…ホブゴブリンじゃねぇかっ‼︎逃げろ‼︎」



ナイフを引き抜き、馬車から降りてきた二人の盗賊の頭に投げつける。

一本。

二本。



「え゛っ」三人目。

「あ゛っ」四人目。



目の端に、先程まで男性を下敷きにしていた盗賊が森の中へ逃げて行くのが見えたので、女性を手放し、跳躍。


盗賊の前に降り立つ。



「っ⁈⁈」

 


咄嗟に殴りかかってきましたがこれも避け、腹と手足をナイフで切り裂く。



「あ゛あ゛あ゛あ゛っ⁈」五人目。



最後の一人が、首を折った盗賊の下から這い出していたので、“闇玉”で勢いよく吹っ飛ばす。



「ゲボァッ⁈」六人目。



殲滅を、終了しました。



戦闘が終わり、他に仲間が居ないかを確認した後、ワタシは自己嫌悪に陥いりました。


盗賊といえ、人間。


他の人間の敵になるとは言っても、彼らもまた人間です。


ワタシが人間を殺してしまったという事実に違いはありません。


比較的まだ割り切りやすいとは言いましたが、不本意である事に変わりは無いのです。



しかし、落ち込んでる暇はありませんでした。


血塗れになって倒れていた男性。


彼は殆ど動けない様子ではありましたが、まだ息をしているようでした。


急げばまだ間に合う可能性があったのです。


それに、どうせ姿も見られてしまっていましたからね。


出来るだけの処置をしてからその場を離れようと思ったのです。



元の場所に戻ると、先程の女性が目に付きました。


ズリズリと這いずり、男性の方へ向かっているように見えましたが、あまり前には進めていなかったと思います。


腰が抜けて立つ事が出来ないようで、力も入らず、手が後ろで拘束されていましたから、余計に前に進まなかったのでしょうね。


しかしそれでも彼女に諦める気配は無く、とても必死な様子で、見ていてなんとも言えない気持ちになってしまいました。



ワタシが男性の元へ行くのに、途中で女性を拾ったとしても時間はかかりません。


ついでに拾っていく事にしました。


こちらに気が付いた女性は怯えた目をしていましたが、無視して抱え込み、手の拘束も断ち切り、ついでに“回復”の魔法をかけ、男性の方へ向き直りました。



「…っ‼︎」



非常に驚いた顔をする女性。


すると突然、彼女はワタシにガシリとしがみつき、なんと話しかけてきたのです。



「か…“回復魔法”‼︎“回復魔法”が使えるのねっ⁈お願い‼︎私の…私の夫を助けてっ‼︎な…何でもするからっ‼︎私に出来る事なら何でもっ‼︎だから…だからどうか…夫を助けて…お願い…お願いします…」



彼女は気が動転していたのでしょう。


通常、モンスターに言葉が通じないという事を失念していたようで、ワタシにそう捲し立てた後も、お願いしますと言い続けていました。



命乞い以外で、人間に何かを願われたのは初めてでしたから、少しだけ動揺しましたが、元よりそのつもりでしたので、取り敢えず男性の元へ向かいました。



男性の元に着き、“回復”の魔法をしっかりとかける為に膝つくと、今度は男性がか細い声で話しかけてきました。



「…妻だけは…どうか…妻だけは…見逃…して…下さい…お願いします…妻…だけは…どう…か」



そこまで言った後、男性は気絶してしまいました。



互いが互いを思いやり、

自分はいいからと庇い合う。

相手の為にと、思い合う。


思い起こされるのは、暖かな記憶。



あぁ…だから人間とは、関わりたくなかったのに。



ワタシはもう、彼らの事が好きになってしまいました。



男性の体に手を当て、全力で魔法をかけます。


傷を治す為に“回復”を、

これ以上弱らぬように“身体強化”を、

ゆっくりと眠れるように“眠り”の魔法を。



傷は塞がり、顔色も多少良くなり、安らかな寝息を立て始めました。


しかし、それはあくまでも応急処置。


それまでに失った体力が戻ってきたわけではないので、早急に適切な治療を施す必要がありました。


それが望めないならばせめて安静にし、しっかりと食事を取り、ぐっすりと眠らなければなりません。


出来れば毎日、“回復”の魔法をかけた方が良いようにも思いました。



「…」



ワタシは、女性の方を見ます。



「っ!…あ…あの…あり…ありがとう…ござ」


「ナンデモ?」


「へ?」



ワタシは、聞き逃していませんでした。



「ナンデモ、スル?」


「あ…は…はい…な…何でも…します…」



彼女が、何でもする(・・・・・)と言ったのを。



「ジャア…モジ、オシエル…クダサイ」


「…へ?」


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