表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/196

第百九十話「厄災の種」

「…!?」



自身の姿を誤魔化す魔法を解いたワタシに、訝しげな顔を向け、何かに気づいたような表情をする彼。


ワタシは自身のフードに両手を入れ、口布を外し、フードを取る。


みるみる内に目を丸くしていくアルトさんを見つめ、ワタシは、口を開きました。



「…それでは改めまして、自己紹介をさせて頂きましょうか』


「え…は…?」


「ワタシの名はキミドリ。種族はゴブリンのウィザード。性別はオスメス両方。いわゆる両性。つまるところ…“英雄”のアナタとは対となる者。“厄災の種”です』


「厄…災…?」



世界を滅ぼす力を持つ可能性のある者。


厄災の種“ゴブリンの両性”。


高い魔力と知性、繁殖力を持ち、ゴブリンのボスとして君臨し、巨大な群れを率いて数多の村や町を滅ぼしてきた歴史を持つ、特殊個体の魔物。


それが、本来ワタシが成る筈だった存在です。



「キミドリ、さんが…厄災…?ゴブリン…?」


「生まれは他のゴブリンと同じく、深い森の中にあるゴブリンの村です。しかし、本能が薄く、理性と好奇心が強かったワタシは、村の在り方に馴染む事ができず、ボス候補として崇められる生活に辟易(へきえき)していました。だからワタシは、全てを捨てて一人で旅を始めました』


「な…そ、そんな話、嘘に決まって」

「嘘だと思うなら魔法を使ったらどうですか?…と、以前にも申し上げた事がありましたねぇ』



ワタシは彼に返事をしながら、また足を前に進め始める。



「全てを捨てて一人旅を始めたワタシは、旅の途中、人間に興味を惹かれ、魔術を知り、妖精と知り合い、いつしか人間の友人もでき、紆余曲折あって今に至ります』


「そんなの、信じられる、わけ」

「さて、アルトさん。ワタシの正体を知ったところで…先程の話の続きをしましょうか』


「こ…こっちに来るな!」



アルトさんの背後から、また光の手が伸びてくる。

しかし、彼が酷く動揺している為でしょうか。

光の手はワタシに当たらず、ワタシの傍をすり抜けていく。



「アルトさん。アナタは自分自身に“こうでなければならない、許されない”という呪いをかけてしまっているように見えます』


「来るなっ!来るなっ!!」


「その呪いはある意味、“不死身の呪い”より厄介で、苦しくて、辛くて、そして強力な呪いなのでしょうね』


「こっちに来るなああぁっ!!!」


「アナタの大事な人達が、アナタにそれを望んでいるとお思いですか』


「っ?!!」


「アルトさんの大事な人達は、アナタをアナタとして見てくれていたその人達は、本当に、アナタに呪い(それ)を望むような人達なのですか?』


「それ、は…」



言葉に詰まる彼のすぐ目の前で、ワタシは足を止める。



「…あぁ、そうか。ワタシは今、やっと分かりました。アルトさん、アナタは英雄を辞めたいの願いながら、英雄であり続ける(・・・・・・・・)という事に、逃げていたのですね』


「う…あ…」



後退りをして、逃げ出そうとするアルトさんの手を、掴む。



「大事な人々を失った悲しみから、目を逸らす為に』


「はな、離せっ!」


「アルトさん。逃げるのは悪い事ではありません。ですが、今のアナタのその逃げた先には、アナタを苦しめるものしか待っていません。それに…事実からは、いつまでも目を背け続けられるものではありませんよ』


「黙れっ!!!離せっ!!!」


「離しません。アナタの大事な人達の為にも』


「うるさいっ!!!聞きたくないっ!!!」


「アルトさん。アナタは逃げたり隠れたりする事が不得意でしたね。…だから、これから学んで下さい。いつかアナタが、大切な人達から目を逸らさず済むように』



ワタシの手を振り払おうと暴れるアルトさん。


ワタシは、そんな彼の手を離さぬように、しっかりと手に力を込めながら、ローブの中で準備していた一つの魔術を発動させました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ