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第百八十七話「捕えられる」

「がっ…!あ゛っ…!」



英雄の両手が、ギチギチとワタシの首を締め上げる。

その両手を伝い、流し込まれてくる邪気と魔力。

同時に流れ込んでくる、彼の感情、感覚。


寂しい、苦しい、辛い、寒い。

痛い、死にたい、生きていたくない。

助かりたい、救われたい。


寂しい。


大量に流れ込んでくるそれらと、それによって引き起こされる、吐き気、眩暈、頭痛、動悸、痙攣。


魔力酔いと、拒絶反応。



「キミドリさんはいいなぁ…!仲間が居て、友達が居て、帰る場所があって、家族同然の妖精まで居るっ…!ボクには無いのに…ボクには何も無いのにっ!!!」


ギュウゥゥッ…!

「っ…!」


「なんでボクは貴方じゃないんだろうなぁ…なんで貴方はボクじゃないんだろう…ボクと似た境遇だった事もあるって言ってたのに…ボクと同じだった事もあったくせにっ…!」



彼の口から溢れ出す、(ねた)み、(そね)み、僻み、憎悪。

彼の目から零れ落ちる、深い悲しみと絶望。



「師匠から離れろバカヤロウッ!!!」

「“ビースト・アクト”ッ!!!」



ラナンさんとギルベルトさんが英雄を左右から挟み込む形で、槍と大剣を突き刺す。


しかし。



カァンッ!!ドガッ!!ドスッ!!

「あ゛っ…!!」

「がはっ…!!!」



槍と大剣が英雄に到達する前に、ラナンさんは光の手に槍ごと弾き飛ばされ、ギルベルトさんは大剣を光の手に払い除けられた後に殴り飛ばされる。



シュンッ!!!バシッ!



英雄の頭へと放たれた弓矢は、光の手に止められてしまう。



クルッビュンッ!ザクッ!!

「う゛っ…!」



光の手は、矢尻をファルケさんの方へ向けて回転させ、指で弾くように矢を飛ばし、ファルケさんの肩に命中させる。



ギチギチギチギチ

「う…く…ぁ…」



ファルケさんの近くに居たはずのチャロアさんは、魔法を発動させようとした姿勢のまま光の手に拘束されており、ワタシ達の近くまで引き寄せられている。


邪気と魔力を流し込まれ、ワタシと同じく、魔力酔いと拒絶反応を起こし、そして、ドサリと地面に転がされました。



「…ねぇ、キミドリさん。ボクの何がいけなかったんだろうね?ボクは、何でここにいるんだろうね…?誰もボクと居てくれないのに…もう分からないや…分からないからさ…せめて貴方だけはずっとボクの物でいてね」


ギチ…



首を絞められ息が出来ず、ワタシの視界が霞み始める。


音が遠くなっていく。


もはや手足に力も入らない。


思考もままならなくなっていく。



「…」



ワタシの魔力が、何処かに流れ込み始める。



ゴォオオオッ!!!

「!」



ワタシの首と英雄の両手の間に突然、爆風が発生する。


爆風の影響で英雄はワタシの首から手を離し、吹き飛ばされ、ワタシと彼の間に距離が出来る。



「ゲホッ!!ガハッ…!ゴホ…!」

『何やってんのよこのバカッ!』

「…」



ワタシのフードの中から、ペタルが声をかけてくる。


ペタルがワタシから魔力を吸って、爆風を起こしてワタシと彼を引き剥がしてくれたようです。


ワタシと契約している為に、ワタシと同じく邪気が体に流れ込んできて、かなりの辛かったでしょうに…。


そんなペタルに向かい、口を開く英雄。



「…また君かぁ…また邪魔するんだね…」


『あら。アーシもアンタにそう思ってたところよ。ほんと、鬱陶しいったらないわね』


「邪魔だなぁ…本当に邪魔だなぁ…さっきからボクの周りでずっと風を吹かせてたのも君でしょ…?ずっとずっとずっと鬱陶しくてさぁ…やめてくれないかなぁ」


『イヤに決まってんでしょ?答えなんか分かりきってんだから聞かないでよめんどくさい』


「邪魔だなぁ…あぁ…本当に、邪魔だなぁっ…!」



彼かそう言うと同時に、彼は右手をワタシに向けて、人差し指を、曲げる。



『キャッ!?』


「ペタルッ…!」



ワタシのフードの中に居たペタルが、何かによって引き摺り出され、そして、



ガシッ

『イッ…?!』

「…」



英雄の右手に、捕らえられる。


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