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第百七十五話「影の魔物」

ギルベルトさんに切り裂かれ、森の影へと消えいるように消滅していく魔物。


まさか襲われる直前まで存在に気がつかないとは思いませんでした。


“なりそこない”の出入り口付近では、空間が歪んでいる影響で辺りの気配を感じ取りにくくなる事があるにしても、真後ろまで接近された事など、今まではなかったのです。



「キミドリさん!怪我はないか!」


「え、えぇ、ギルベルトさん。ありがとうございます。どこも怪我はしておりません…あの魔物は一体…?」



ボソリと呟くワタシに、ファルケさんが答えました。



「あれは“シャドーマン”という魔物だよ。本来は廃墟やダンジョンに出てくるような魔物なんだけど…この辺りの森では初めて見た」


「シャドーマン…」


「強くはないけど、ちょっと厄介な敵でね。油断したよ」


「…ファルケさん。その魔物は、森の中にはよく出現するのですか?」


「いいや。あまり聞かないなぁ。ない事はないけど滅多に現れない。少なくともこの森では一度もなかったよ。…ギルドからの報告にもあがってなかった筈なんだけどな…」


「なるほど…なら、やはりおかしいですね」



シャドーマンに消えていくのを見た後すぐ、魔法で辺り一帯を“探知”。 


影の中に溶け込むような、異物感。


それが、ざっと十体。



「…この森には、先程の魔物が随分いるようです」



おそらく、全てシャドーマン。


広く探知したとはいえ、それだけの数が同じ範囲内にいるのは、普通とは思えませんでした。


そして、探知の範囲内にこれだけいるのであれば、範囲の外にもいると考えるのが自然な事。



「そんなに…あぁ、そうか。なるほどね。やたらと犠牲者が出る筈だよ」


「何か分かったのですか?ファルケさん」


「多分ね。…シャドーマンは影の中に紛れ込める上に、ほとんど音がしないんだ。だから存在になかなか気づけない。しかも今回の場合は…」


「ファルケ」


「分かってるよギル。…いる(・・)ね。コイツらを従えてる奴が」


「“ホーリー・バリア”」



チャロアさんが触媒を取り出しそう呟くと、ワタシ達を包み込むように、光輝くバリアが展開されました。


同時に、バリアに弾かれ姿を現す二体のシャドーマン。


刹那、それに近づく赤い色。



「ふっ!!!」



ラナンさんの槍が、目にも止まらぬ速さで二体のシャドーマンを貫く。


貫き、切り裂き、(くう)に混ぜられ、ほとんど悲鳴をあげる間もなく、消し去られるシャドーマン。


しかし。



「ん〜…さっきの、シャドーマンの悲鳴で、他のシャドーマンも、集まってきちゃってる、みたいね〜」


「そうだねチャロアちゃん。俺達を生きて帰す気はないだろうし、どんどん来るだろうね」


「ゲ〜?!あたしアイツら苦手なんだよなぁ!見えねぇと槍が刺さんないから面倒くさいし、いちいち相手してらんないって!」


「そうよねぇ、ラナンちゃん。わたしも、そう思うんだけど…ん〜…バリアの出力を上げて、弾き飛ばしながら、走っちゃいましょうかぁ?」


「なら、ワタシが皆さんに身体強化の魔術を施します。しばらくは走り続けられますよ」


「チャロアちゃんもキミドリさんも大胆な事言うねぇ。でも、俺もそれに賛成かな。ギルはどう思う?」


「ふむ…少し休憩を挟んでおきたかったんだが、仕方がない」



ギルベルトさんがそう言った後、ワタシ達に向け号令をかける。



「総員、戦闘体制!!!このまま最前線まで走り抜ける!!気を引き締めろ!!」


「了解!」

「りょうかい!!!」

「りょ〜か〜い」

「了解しました」



各々が言葉を返し、改めて戦闘体制に入る。



「行くぞ!!!」



ワタシは最前線へ向け、走り出しました。


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